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「パフォーマンスの改善」(第61回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第61回

プロセスオーナー。強い影響力を持った誰かが組織横断的なプロセス全体のパフォーマンスを監視しそれに対する改善処置が取れるように、多くの組織は、それぞれの核となるプロセスについてプロセスオーナーとしての個人を任命しています。プロセスオーナーは次の役割の一部又はその全てを果たします。

プロセスがどのくらい顧客要求事項と内部目標に合致しているか、そしてプロセスがどのくらい部分最適化されているかについて、プロセスパフォーマンスを監視し定期的に経営幹部に報告する。
プロセスのパフォーマンスに責任をもつ組織横断的なプロセスマネジネントチームを指揮する。そのチームは目標を設定し、プロセスプラン/予算を立て、目標に対してのプロセスパフォーマンスを監視し、プロセス改善の機会に見合う対策活動を行なう。
プロセスに貢献している機能(部門)間のインタフェース問題の解決に当たる「空白オンブズマン」としての役割を果たす。
プロセスの評価者と推進者としての役割を果たす。
プロセスを評価し、高度に入り組んだ組織では、プロセスを認定する。

プロセスオーナーがいなければ、「空白」は無視されてしまいがちです。各ラインマネージャーはプロセスの一部分である彼らの部門を運営管理しており、機能(部門)の最適化や部分最適化(第2章で説明)が容易に起きてしまいます。
製品やプロジェクトの組織横断的なパフォーマンスを総轄するマトリクスマネージャーのように、プロセスオーナーはプロセスのパフォーマンスを組織横断的に総轄します。しかしプロセスオーナーは、製品マネージャーやプロジェクトマネージャーと異なって、2次的な組織構造を代表する者ではありません。個人は縦(ライン)と横(製品又はプロジェクト)のマネージャーに対するコミットメントの間で継続的に悩むことはありません。効果的なプロセスマネジネントでは、指示命令系統は縦のまま残っており、機能(部門)マネージャーの権限はそのまま残っています。機能(部門)マネージャーが他のプロセスへの部門の貢献で評価され、機能(部門)の利害が優先され、プロセスオーナーがインタフェース問題の解決を確実にするような場合に横の要素が追加されます。プロセスオーナーと製品マネージャーやプロジェクトマネージャーとの間には、製品とプロジェクトは新しく生じて消えていきますが、プロセスは半永久的であるというもうひとつの違いがあります。この重要な役割ゆえに、プロセスオーナーの選択は極めて重要です。次の特性すべてが不可欠だとは言いませんが、プロセスオーナーは次のような者が望ましいといえます。

経営幹部である
プロセス全体の主要な価値を享受する立場の者(プロセスの成功時に最も多く利益を得て、失敗においては最も多くを失う者)
最も多くの要員を有するプロセスのマネージャー
プロセス全体の業務を理解している者
プロセスにおける環境がプロセスに及ぼす影響とプロセスがビジネスに及ぼす影響を総合的に見ることのできる者
自己のライン管理責任以外の決定や要員に影響を及ぼす能力を持つ者

通常、プロセスオーナーの責任権限はその地位と関係が深く、個人の資質とはあまり関係がありません。例えば、我々が電話会社の指導をしているとき、請求プロセスのプロセスオーナーに財務担当の副社長が任命されていました。彼がその地位を去ったとき、プロセスオーナーには彼の後継者がなりました。
最初我々は、有能なプロセスオーナーとプロセスに関係する部門マネージャーとの衝突の少なさに驚きました。良いプロセスオーナーは、部門マネージャーから何も取り上げることなしに価値を加えていくので、ラインマネージャーを脅かすようなことはしません。

プロセスマネジメントの定着化

プロセス改善プロジェクトを越えて、プロセスマネジネントを制度化していこうとする組織では、主要な各プロセスは次のようなものを持ちます。

ステップと機能を文書化したマップ。
組織レベル評価指標にリンクし、部門評価指標を動かす力となる顧客中心の一連の評価指標(第5、12章参照)。プロセスマネジネントの環境が定着すると、他部門又はプロセス全体の障害となっている部門は、その評価指標において良く評価されえない。
プロセスオーナー。
定期的に会合しプロセス改善を特定して実行する定常的なプロセスチーム。
コアプロセスに対し、期待する結果、目的、予算、及び非財務的な資源要求事項を含む年度事業計画。
プロセスパフォーマンスを進行形で監視する仕組み(プロセス管理図のような)。
プロセス問題を解決しプロセスに存在する機会を利用する手順(根本原因解析のような)と手段(プロセスチームのような)。