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「パフォーマンスの改善」(第68回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第68回

ステップ1:明確な戦略を確立する。組織体制は組織の戦略達成を促進すべきです。もし、組織に戦略がないなら、どんな体制でもいいでしょう。第7章は、製品とサービスの決定、顧客と市場の決定、競争力優位の特定、及び資源割り当ての優先順位の決定を含む組織の戦略的決定について概説しています。これらの決定により組織の方向が決められれば、経営者は、組織の進むべき道筋に沿って組織構造を設計することをスタートできるのです。

ステップ2:現在(Is)の組織システムを文書にし分析する。関係マップ(第4章参照)を使用して、現在の部門をつなぐインプットとアウトプットを表示します。どんな断絶(欠落、重複、不合理な繋がり)も、特に戦略達成に関係する組織能力に影響を及ぼすものは、明確にします。
例えば、我々は潜在的な競争力優位なものの1つとして、新製品の迅速な導入を特定した小さな電話会社の指導をしていました。その現状「Is」関係マップを展開したとき、製品を効率的に開発して導入することができる一連の関係(プロセス)が存在しないことが明確になりました。その上、組織図上にはまだ製品開発部があるのに、最近のコスト削減のあおりを受けてスタッフが全くいませんでした。これでは戦略を達成することはほとんど不可能でした。

ステップ3:現在(Is)のプロセスを文書にし分析する。プロセスマップと組織横断プロセスチーム (第5、10章参照)を活用して、戦略に最も大きい影響を与える基本プロセス、サポートプロセス、及びマネジメントプロセスの今の流れを記述します。フェーズ0は、「最重要」なプロセスを特定する手助けをします。現在の又は潜在的に競争力を削ぐ断然は、全て記録に残します。
例えば、我々は、特殊な顧客要求事項を満たすように製品をカスタム化するという競争優位性を、経営者がさらに増強しようと決めていた航空機会社を指導したことがあります。チームは顧客の意見が製品に組み込まれるプロセスをマップにしました。その結果、顧客が混乱し、納期が遅延し、及び利益が些少かマイナスになる著しい断絶が明らかになりました。

ステップ4:あるべき姿“Should”プロセスのフローと評価指標を開発する。プロセスマップ書式を使用して、ステップ3で分析された戦略上重要なプロセスに対してあるべき姿“Should”のフローを作ります。これらのあるべき姿“Should”フローからは、現在「Is」プロセスで特定された断絶(ディスコネクト)を取り除かなければなりません。そして、第12章で概説する形式に従って、一連のプロセス評価指標を決めてください。このステップでは、更に、あるべき姿“Should”のサブプロセス(細分化)とあるべき姿“Should”のサポート(スタッフ)プロセスも設計しなくてはならないかもしれません。

ステップ5:組織図を設計する。あるべき姿“Should”プロセスマップに基づいて、最も論理的に妥当な部門のグループ化と指示命令系統を決めます。目標は、プロセスの有効性と効率を最大にする組織境界を描くことにあります。プロセス、言い換えれば戦略に最も役立つ組織構造の選択基準には次のものがあります。

製品とサービスの質の最大化
顧客のニーズ(最大の柔軟性と最小のサイクルタイム)への対応の最大化
効率(最小限の手直しと最小限のコスト)の最大化

以上のような評価基準を満たすため、組織構造は、次のものを持つべきです。

プロセスの質に関する目標を達成するに必要な、最小限のインタフェース
内部顧客及び内部供給者との最大限の親密性
最適な管理の頻度(マネージャー一人あたりの直接的な報告数)
最小数の管理層
最大限の明快さ(あっても非常に少数の重複か曖昧な責任)

さらに、第2章で議論したように、組織は適応型システムである必要があります。不安定な市場、競合、法規制、及び技術が、これらの領域における変化について情報を集め、処理を促進し、変化への要請に対し迅速に且つ知的に対応し、組織そのものが変わってゆくことが必要以上に困難でない組織設計を求めています。我々は、上で説明された「活力ある組織(virtual organization)」を全ての組織が採用するべきであると言っている訳ではありませんが、その目的は受け入れられるべきだと思っています。最も良い組織体制とは、常に変化する環境の中でも繁栄できるものをいいます。
評価及びヒューマンパフォーマンス管理等を対象とする組織設計は、それだけに一冊の本が必要な議題です。しかし、我々の経験を次のような1連のガイドラインに凝縮します。
組織設計(狭義では、資源をどのようにグループ化し、誰が誰に報告するのかと定義される)は、あなたが思う程重要ではありません。もし、プロセスが知的に設計され、役割がよく定義され、役割を果たす要員と設備が装備されているとすると、組織体制はあまり重要ではありません。我々を誤解しないでください。組織設計それ自身が、プロセスに対しては著しい「断絶」であり得るし、或いは著しい「駆動力」でもあり得るのです。しかし、新しい組織設計がそのこと自体で断絶を取り除くと仮定するのは、ちょうど新築の家が我々の人生をよりスムーズにさせると仮定するようなものです。もし私の業務が関係しているプロセスへ最大の貢献をするように設計されているならば、もし私が自分の業務の何を、なぜ、どのようにするのか知っているならば、もし私がプロセスのどこに位置すべきなのかを(顧客と供給者が誰であるかも)明確にしているならば、もし私が重要なこと(私の評価指標/報酬)で動かされているならば、部門の名称とか、SallyとBobのどちらに報告するかなんて事には誰も気に掛けません。