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DX等成長分野の人材育成|ISO情報テクノファ

ISO審査員及びISO内部監査員に経産省の白書を参考にした製造業における有用な情報をお届けします。

■DX等成長分野の人材育成

(数理・データサイエンス・AI教育)
新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、世界の人々の生命や生活のみならず、経済、社会、国際政治経済秩序、さらには人々の行動・意識・価値観にまで広範で長期にわたる影響を及ぼしている。また、世界的なデジタル化の動きや国際政治経済の構図が変容する中において、デジタル技術を使いこなすための知識や技術を身に付け、新たな価値を生み出すことができる人材が我が国において求められている。文部科学省はこのような人材を育成するため、ものづくり分野において、デジタルトランスフォーメーション(DX)等成長分野を中心に、変化に対応でき、新たな価値を生み出す人材を量・質共に充実させる取組を積極的に進めていく必要がある。同時に、ものづくりへの関心・素養を高める小学校、中学校、高等学校における特色ある取組の一層の充実や、大学の工学関連学部、高等専門学校、専門高校、専修学校などの各学校段階における職業教育などの推進が必要である。また、伝統的な技法や最新技術などの活用による、文化財を活かした新たな社会的・経済的価値の創出や、文化や伝統技術を後世に継承する取組なども重要となっている。さらに、イノベーションの源泉としての学術研究や基礎研究の重要性も鑑みつつ、ものづくりに関する基盤技術の開発や研究開発基盤の整備も不可欠である。なお、これらの施策について、政策評価制度を通じて必要性・有効性・効率性等を客観的に評価・検証し、その結果を踏まえた見直しを行いつつ実施することとする。

Society 5.0 の実現に向けては、AI、ビッグデータ、IoT 等の革新的な技術を社会実装につなげるとともに、産業構造改革を促す人材を育成する必要性が高まっており、このような中「AI 戦略2019」(2019年6月、統合イノベーション戦略推進会議決定)が策定された。高等教育段階においては、全ての大学生及び高専生(1学年あたり約50 万人)が数理・データサイエンス・AI への関心を高め、適切に理解し活用できるリテラシーレベルの能力を身に着けること、また、その約半数(1学年あたり約25 万人)においては応用基礎レベルとして、数理・データサイエンス・AI を活用して課題を解決するための実践的な能力を身に着けることが「AI 戦略2019」の目標として掲げられており、文部科学省においては、必要な教育体制の強化を図っている。教育体制の強化に当たっては、130 校を超える大学等によるコンソーシアムを形成し、モデルカリキュラムの策定や教材等の開発を行い、それを全国の大学等へ展開する活動を行っている。また、大学等の数理・データサイエンス・AI 教育に関する正規課程教育のうち、一定の要件を満たした優れた教育プログラムを政府が認定する制度を2020 年度に創設しており、この制度を通じて多くの大学等が当該分野の教育に取り組むことを国が後押しするとともに、社会全体でその教育の重要性を認識する環境を醸成していく。さらに、数理・データサイエンス・AI 分野においては、当該分野を牽引するエキスパート層の人材育成も急務となっている。産業界と連携した実社会における先端課題解決型演習や国際競争力のある博士課程教育プログラムの構築等に取り組む大学院への支援を通じ、我が国の数理・データサイエンス・AI 分野を牽引する人材育成をより一層強力に推進する。

(文系・理系の枠を超えた人材育成)
DX が進展する社会においては、データサイエンス・コンピュータサイエンスの素養に対する需要が、自然科学分野だけでなく、経営学や公共政策学、教育学といった人文社会系分野においても高まっている。文系・理系の枠を超えたイノベーション人材を育成するための取組として、分野の枠を超え、人文社会系分野とデータサイエンス系分野の複数専攻、いわゆるダブルメジャーといった学位プログラムの創設など、デジタルの知見と専門分野の知見を併せ持つ修士や博士の育成に取り組むこととしている。

(マイスター・ハイスクール:次世代地域産業人材育成刷新事業)
職業系の専門高校は、我が国の産業振興を担う高等学校段階での職業人を育成し、これまで我が国の高度成長・工業化に大きく貢献してきた。その一方、高等学校教育の事実上の全入時代、高等教育進学の多様化といった、社会の構造変化に伴い、専門高校における進路も多様になってきている中、個別の専門高校では特色・魅力ある取組も見られる反面、社会的ミッションである我が国の産業振興に資する人材育成というマクロ政策の観点からはその役割が不明瞭になっており、産業政策・地方創生に向けて産業人材育成機関としての専門高校の在り方を抜本的に充実すべきという指摘も見られる。第4次産業革命の進展、DX、6次産業化等、産業構造や仕事内容は急速に変化しており、ポスト・コロナ社会においては、こうした変化が一層急激になることが予見される。このような中、産業人材育成を担う専門高校においては、成長産業化を図る産業界と絶えず連動した職業人材の育成が喫緊の社会的要請になっている。マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)は、この変化に連動した最先端の職業人材を育成するため、中核となって取組を行う専門高校を「マイスター・ハイスクール」に指定し、専門高校とその設置者、産業界、地方公共団体が一体となって地域の持続的な成長を牽引する人材育成に資するよう教育課程等の刷新を目指すものである。また、その成果モデルを全国に普及させ、全国各地域で地域特性を踏まえた取組を加速化しようとするもので、文部科学省において2021 年度より新たに実施している事業である。2021 年度においては、12 事業(マイスター・ハイスクール指定校13 校)を指定(委託期間は3年間)した。工業科、農業科、水産科、商業科、家庭科等実施学科は多岐にわたるが、それぞれ産業界等と連携し、DX 時代における最先端の職業人材の育成に向け、取組を進めているところである。

(DX等成長分野を中心としたリカレント教育の推進)
本事業では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた、就業者・失業者・非正規雇用労働者等に対し、デジタル、グリーン、イノベーション喚起等の成長分野を中心に就職・転職支援につながるプログラムを提供し、キャリアアップ・キャリアチェンジを図るとともに、課題や事例を取りまとめ、その結果を全国に展開することにより、就職・転職支援のための大学等リカレント教育の推進を図ることとしている。本事業においては、大学等が労働局・ハローワーク、地方公共団体、企業、業界団体等産業界と連携して地域ニーズや産業界のニーズを踏まえた教育プログラムを開発・実施するとともに、労働局・ハローワークや地方公共団体と連携・協力しながら就職・転職支援を実施することとしている。
プログラムとしては、就職に必要なリテラシーレベルの他に、就業者のキャリアアップを目的としたリスキリングに向けた内容についても開発・実施を行う。本事業の実施により、国民のキャリアアップ・キャリアチェンジを図りながら、社会的ニーズの高い成長分野への労働移動を促すとともに大学等のリカレント教育実施について機運醸成を推進していく。本事業の教育プログラムは、以下Ⅰ~Ⅲのコース設定に基づき各大学等で実施する。

Ⅰ . DX 分野リテラシープログラムの開発・実施(大学・専門学校等)
 主に失業者・非正規雇用労働者を対象とする。就職・転職に必要な基礎的なDX分野の能力を育成し、労働局、地元企業等産業界と連携し就職・転職に繋げるとともに厚生労働省の職業訓練受講給付金との連携も図るプログラムとする。また、近隣地域・大学等へ、開発したプログラムの横展開も図る。
Ⅱ . DX 分野等リスキルプログラムの開発・実施(主に大学等)
 主に就業者を対象とする。地元企業、リスキりングに注力している企業と連携し、応用基礎なDX分野の能力を育成しリスキリングの推進、キャリアアップに繋げるプログラムとする。様々なタームに分けた柔軟な授業時間の設定、政府におけるデジタル人材育成の取組と連携しながら、社会に不足するデジタル人材を輩出する仕組みを構築していく。
Ⅲ . 重要分野のリカレントプログラムの開発・実施(大学・専門学校等)(グリーン、医療・介護、地方創生、女性活躍、起業、イノベーション喚起等)
 主に就業者・失業者・非正規雇用労働者を対象とするプログラムとする。各業界と連携し就職・転職に必要な基礎的・応用的な重要分野の能力を育成し、労働局と連携した就職・転職支援を行うとともに、厚生労働省の職業訓練受講給付金との連携も図る。また、近隣地域・大学等へ、開発したプログラムの横展開も図る。

(ソーシャルイノベーションDX-Ready 人材育成プログラム)
あらゆる企業・組織はDX、つまりデータとデジタル技術を活用した経営の推進を迫られているが、この状況下で圧倒的に不足しているのがDX に携わる人材である。山口大学大学院技術経営研究科は専門職大学院として積み重ねてきた社会人教育の経験を活かし、地域社会のDX 人材に対するニーズに応じた社会人の学び直しとして2021 年9月30 日から「DX-Ready人材育成プログラム」を開始した。この教育プログラムは文部科学省「令和2年度 就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業」に採択されており、山口労働局、ハローワーク、県内経済団体・企業の協力の下、求職者・転職希望者を対象に実施されている。「DX-Ready」とは企業・組織におけるDX 推進に向けて準備ができた状態にある、という意味である。講義・演習を通して、受講者がDX に関わる知識・スキル・考え方を習得し、企業・組織が求める人材となり、さらに社会にイノベーションをもたらす人材となることがこの教育プログラムの目的である。この教育プログラムはレベル1からレベル3までの3段階に分けて、本学教員と企業から招聘した実務家により実施されている。レベル1は2か月・120 時間の教育であり、受講者は企業経営、情報技術について学び、IT パスポート合格レベルの知識を身に付ける内容となっている。レベル2は1か月・60 時間の教育であり業務のRPA(Robotic Process Automation)化やAI を使ったデータ処理のやり方を講義と演習を通して体得する内容となっている。レベル3も1か月・60 時間の教育であり、製造業・非製造業の事例を用いた実践的な演習を行い、AI を活用した生産計画の立案や市場需要予測ができるレベルにまで能力を向上させる内容となっている。また、これらの教育と並行して、キャリアコンサルティング、企業経営者による講話、社会人基礎力向上教育、そして就職支援メンタリングなどを専門家の協力を得ながら実施し、受講者のキャリア形成を強力に支援していることも本教育プログラムの特色である。
受講者の居住地が中国・九州地区まで広範囲にわたることを踏まえ、また新型コロナウイルス感染症の予防に配慮し、講義と演習は主としてオンライン形式で行い、必要に応じて、十分な換気量と距離を確保した教室において対面形式で実施している。

(出典)経済産業省 2022年版ものづくり白書
 ・https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html

(つづく)Y.H