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中東との関係 | ISO情報テクノファ

ISO審査員及びISO内部監査員に経済産業省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。

■中東との関係

(総論)
我が国は原油輸入の約9割、天然ガス輸入の約2割を中東地域に依存しており、同地域はエネルギーの安定供給確保のために欠かせない地域である。中東諸国では、原油そのものだけでなく、より付加価値の高い石油製品を今後需要の急増が見込まれるアジアに販売することで収益を確保しようとする動きや、エネルギー産業に依存しない経済体制の構築に取り組む動きが顕著に見られる。産業多角化や貿易・投資環境改善への支援を通じ、同地域との経済関係の強化・市場の拡大と、同地域の安定確保を目指す。

(進捗状況)
サウジアラビア王国については、2017年3月に日サ両国首脳間で合意した「日・サウジ・ビジョン2030」のもと二国間協力を推進している。2017年の取組開始時には31から始まった協力プロジェクトの数は、2020年12月に実施した第5回「日・サウジ・ビジョン2030」閣僚会合の時点で80まで増加し、参画する省庁・機関の数も41から73に増加した。同ビジョンの下では、日サウジ間の伝統的な協力分野であるエネルギー協力に留まらず、広範な分野での協力が進展している。

2021年10月には、日本eスポーツ連合(JeSU)がサウジからの選手団を招いて『日本・サウジアラビアeスポーツマッチ』をサウジアラビアeスポーツ連盟と共催した。また、2022年1月には、日本貿易保険(NEXI)がPIF(サウジアラビア公共投資基金)との間で、同ビジョンの推進、サウジアラビアにおけるエネルギートランジション及び脱炭素化の促進及び本邦企業のサウジアラビアにおけるビジネス機会の拡大に係る協力覚書が締結された。2021年11月及び2022年3月、萩生田経済産業大臣は、アブドルアジーズ・エネルギー大臣との間でTV会談を実施し、日本とサウジの二国間関係を強化していくことを確認した。イラン・イスラム共和国については、米国の制裁下という困難な状況にあるが、2021年度においても、耐震・免震技術に関するワークショップや水・電力分野における各種セミナーなどの経済協力を実施してきた。

2022年3月には、JETROがイラン・ビジネスウェビナーを実施するなど、両国経済関係の更なる発展に向けた協力も進めている。アラブ首長国連邦(以下、UAE)については、2021年7月、梶山経済産業大臣がジャーベル・アブダビ国営石油会社(ADNOC)CEO兼産業・先端技術大臣との間でTV会談を行い、水素・アンモニア分野における両国間の協力及びアジアの多様かつ現実的なエネルギートランジションに向けた協力について意見交換した。会談後、両大臣立会いの下、INPEX、JERA、JOGMEC、ADNOC間の燃料アンモニアに関する共同調査契約の署名式が行われた。また、2022年2月には萩生田経済産業大臣がジャーベル大臣とTV会談を行い、国際原油市場の安定化に向けた働きかけを行うとともに、両国間のエネルギー協力やカーボンニュートラルの実現に向けた連携について議論した。さらに、エネルギー分野にとどまらず、先端技術やイノベーションの促進などの新たな分野においても二国間協力を深化させることの重要性を確認した。

2021年10月には、萩生田経済産業大臣はマズルーイ・エネルギー・インフラ大臣とTV会談を行い、日本への原油の安定供給に対する謝意を伝達するとともに、昨今の原油価格の上昇を受け、増産を含め十分な原油供給を通じた、国際原油市場の安定化に向けた働きかけを行った。2022年2月、第8回日本アブダビ経済協議会(ADJEC)がオンラインで開催され、細田経済産業副大臣よりビデオメッセージにて両国間の関係強化につき発言した。同協議会では、両国政府関係者等より新しいビジネス環境におけるビジネス機会の創出や、カーボンニュートラルに向けた取組について紹介がなされた。2021年10月、中東・アフリカ地域で初となるドバイ国際博覧会が開幕した。我が国は「Where ideas meet」(アイディアの出会い)をテーマに日本館を出展した。同12月のジャパンデーでは、若宮万博担当大臣よりビデオメッセージを上映、ドバイ万博成功への祝意と2025年大阪・関西万博に対するUAE参加表明への謝意を伝えた。2022年3月、ドバイ万博は半年間の会期を終えて閉幕した。若宮万博担当大臣は、ドバイに二度渡航し、万博会場の視察の他、ハムダーン・ドバイ首長国皇太子との会談及び各国への参加招請活動を実施。閉幕式ではUAEからBIE(国際博覧会事務局)を介し、次期開催国としてBIE旗を受け取った。

イスラエル国については、2017年に日本とイスラエル双方の官民が連携し、両国間の経済関係をより強化するため設立したプラットフォーム「日・イスラエル・イノベーションネットワーク(JIIN)」を通じて、ビジネスマッチング等の支援が実施されている。2021年度は、2021年3月に開催した第3回JIIN総会において日本とイスラエルのイノベーション協力の今後の方向性の一つに位置付けた「イノベーション協力の地方、中堅中小企業への拡大」を実現すべく、12月に北海道、2月に近畿地方を対象としてJIINセミナーを開催した。
また、2020年9月にアブラハム合意を受けてイスラエルとUAEの国交が正常化したことを契機に両国間の経済協力が進展していることを踏まえ、日本を含めた3カ国によるイノベーション連携推進のきっかけとすべく、2022年1月にJIIN協力の下で「UAE-Japan-Israelイノベーション・ビジネスフォーラム」を3カ国政府(UAE経済省、イスラエル経済産業省、及び経済産業省)による共催イベントとして初めてオンラインで開催した。萩生田経済産業大臣からは、「世界のイノベーションハブを目指すUAE、イノベーション大国のイスラエル、優れたものづくりの技術や世界の市場につながるネットワークを持つ日本が連携すれば、世界をリードしていく技術・ソリューションを生み出すことが可能」と期待が示された。

トルコ共和国については、2022年3月、(一財)中東協力センター(JCCME)がトルコのエネルギー天然資源省と共催で、日本とトルコのエネルギー分野における協力の可能性やビジネス機会を探る目的でワークショップをオンラインで開催した。資源エネルギー庁、両国大使館からの挨拶の後、国際協力銀行(JBIC)と国際協力機構(JICA)がカーボンニュートラルやエネルギー・トランジッションへの支援策を説明、エネルギー天然資源省がトルコのエネルギー情勢や政策を紹介、日本企業より水素・アンモニアの生産やサプライチェーン構築、CCUSなどについて技術紹介を行った。カタール国については、2021年10月に、経済産業省の主催にてオンラインで実施したLNG産消会議について、アル・カアビー・エネルギー担当国務大臣が開会挨拶を行った。また、同会議において、我が国とカタールが、産消国双方の更なる連携の必要性を確認するための議論をリードした。

クウェート国については、2021年9月、江島経済産業副大臣とファーリス・クウェート石油大臣兼高等教育大臣(当時)は、TV会談を実施した。会談では、石油分野での協力の進展を歓迎するとともに、アジアのエネルギートランジションをはじめ、カーボンニュートラルの実現に向けても二国間で連携することを確認した。更に、2022年3月には萩生田経済産業大臣が、ファーリス副首相兼石油大臣兼内閣担当国務大臣とTV会談を実施し、国際原油市場の安定化に向けた協力を働きかけるとともに、クリーンエネルギー分野での協力強化を確認した。また、会談後、両大臣立会いの下、日本貿易保険(NEXI)とクウェート石油公社(KPC)間のエネルギー協力拡大や脱炭素化の促進等を目的とした協力覚書(MOC)の署名式が行われた。イラク共和国については、2021年9月に「持続可能なエネルギー、グリーン成長とイラク」をテーマとしたビジネスセミナーをJCCMEと共催でオンライン開催した。両政府から江島経済産業副大臣、ハイラッラー外務筆頭次官、鈴木在イラク大使から挨拶を行った他、イラク側は電力省、石油省、国家投資委員会が、日本側は資源エネルギー庁、日本貿易保険(NEXI)が登壇し、脱炭素に関する計画や、アジア地域のエネルギー・トランジッションに向けた取組、及びグリーン分野への支援策等について説明を行った。

(つづく)Y.H

(出典)経済産業省 通商白書2022
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/index.html