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多様な主体の参画による知の共創 | ISO情報テクノファ

ISO審査員及びISO内部監査員に文部科学省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。

■市民参画など多様な主体の参画による知の共創と科学技術コミュニケーションの強化

(公的機関等の取組)
文部科学省は科学技術週間(令和3年4月12日から18日)に合わせて、大人から子供まで、広く科学技術への関心を深めるため「一家に1枚海~その多様な世界~」を全国の小中高校、科学館・博物館等へ配布するとともに、紙面上で紹介した海に関する様々な出来事や課題等を詳しく解説する特設ウェブサイトを設置、更に学びを深めることができる取組を行った。また、令和4度版として「一家に1枚ガラス~人類と歩んできた万能材料~」を制作、令和4年3月に公表した。農林水産省は、消費者等を対象に研究者等の専門家を派遣して行う、農林水産分野の先端技術の研究開発に関する出前授業や、消費者等を対象としたゲノム編集研究施設の見学会の実施、ウェブサイトを活用した情報発信等のアウトリーチ活動を行っている。また、所管する国立研究開発法人は、一般公開や市民講座等を実施し、国民との双方向のコミュニケーション等を意識した研究活動の紹介や成果の展示等の普及啓発に努めている。

宇宙航空研究開発機構は、青少年の人材育成の一環として「コズミックカレッジ」や連携授業やセミナー等の宇宙を素材とした様々な教育支援活動等を行っている。理化学研究所は、より多くの国民に対して最新の研究成果等の理解増進を図るため、冊子の作成や動画などをウェブサイト上で公開しているほか、オンラインイベントを開催している。また、本を通じて科学の面白さ、深さ、広さを紹介する取組として「科学道100冊」を全国の中学校・高校、公共図書館等に展開するなど、様々なアウトリーチ活動を行っている。物質・材料研究機構は、一般市民及び未来の科学者たる学生・若者に向けた普及・啓発活動として、「まてりある’s eye」と題した映像を動画サイトに公開し、研究紹介に積極的に取り組むなど、科学に対する理解と興味を広める活動に力を注いでいる。

海洋研究開発機構は、研究開発の理解増進を図るため、オンラインコンテンツを活用したアウトリーチ活動や、将来の海洋人材の裾野拡大を目指した若年層向けの「マリン・ディスカバリー・コース」を実施している。また、「GIGAスクール特別講座」における深海探査等を通じて、国民の海洋環境や深海生物への理解増進に努めた。産業技術総合研究所は、展示施設を常設し、バーチャルを含む各種イベントへの出展や実験教室・出前講座など、科学技術コミュニケーション事業を積極的に推進している。さらに、最新の研究成果を分かりやすく説明する動画やウェブコンテンツを作成・公開し、情報発信に努めている。そのほか、各大学や公的研究機関は、研究成果について広く国民に対して情報発信する取組等を行っている。

なお、総合科学技術・イノベーション会議は、1件当たり年間3,000万円以上の公的研究費の配分を受ける研究者等に対して、研究活動の内容や成果について国民との対話を行う活動を積極的に行うよう促している。国立国会図書館は、所蔵資料のデジタル化及び全文テキストデータ化に取り組むとともに、国民共有の知識・情報資源へのアクセス向上と利活用促進のため、全国の図書館、学術研究機関等が提供する資料、デジタルコンテンツ等を統合的に検索可能なデータベース(国立国会図書館サーチ)を提供している。

(コラム:日々身近に感じたい科学技術・イノベーションの世界)
―情報サイト「サイエンスポータル」―
大人になってから、科学の基本知識が変わっていることに驚かされることがある。例えば、かつては学校で「光合成をする生物が植物」と習い、常識のように思ってきた。ところが今は教科書に「植物は藻類から進化した」とあり、藻類は光合成をしても植物ではないという。また200億年とも150億年とも考えられていた宇宙の年齢は、約138億年としっかり求められた。前者は生物種の親戚関係を見直した結果であり、後者は人工衛星で宇宙の温度分布を詳しく調べられるようになった成果である。

日常生活ではスマートフォンの実力や、それによる社会生活の変化にイノベーションをひしひしと感じる。便利な技術は無数の科学者、技術者の地道な努力の結晶だ。さまざまな科学技術の展開を知るにつけ、専門家ならずとも「なぜ」「どうやって」と好奇心をかき立てられる。一方、令和2年以降、新型コロナウイルス感染症が世界に拡大し、さまざまな関連情報が飛び交ってきた。その真偽や解釈が課題となり、科学技術情報のあり方が改めて問われてきた。

予測が難しい未来に向け、人類が問題を解決し繁栄を築くには、科学技術を活用しつつ、あらゆる人々が生き生きと暮らし、努力と知恵を生かし合う必要がある。私たちが情報に身近に触れ、考えていくことが大切だろう。こうした情報源には書籍や新聞報道、放送番組、インターネットの情報などがある。信頼できる資料の一つとして、科学技術振興機構が運用する情報サイト「サイエンスポータル」が挙げられる。平成18年に開設された。

科学技術の報道や読み物、動画のほか、イベント情報やプレスリリースへのリンク集などがあり、同機構の活動に限らず幅広く採り上げている。科学技術・イノベーションの新たな知見や展開はまず、それ自体が興味深い。加えて、人類のあり方の鍵も握っている。それらを専門家任せにせず、私たち市民の感覚で見つめていくことは、成熟した未来社会を築くことにもつながるのではないか。

(科学館・科学博物館等の活動の充実)
科学技術振興機構は、科学技術・イノベーションと社会の関係の深化に向けて、多様な主体が双方向で対話・協働する「サイエンスアゴラ」や「サイエンスポータル」を通じた情報発信などの多層的な科学技術コミュニケーション活動を推進している。特に日本科学未来館においては、先端の科学技術と社会との関わりを来館者等と共に考える活動を展開しており、IoTやAI等の最先端技術も活用した展示やイベント等を通じて多層的な科学技術コミュニケーション活動を推進するとともに、全国各地域の科学館・学校等との連携を進めている。国立科学博物館は、自然史・科学技術史におけるナショナルセンターとして蓄積してきた研究成果や標本・資料などの知的・物的・人的資源を活かして、未就学児から成人まで幅広い世代に自然や科学の面白さを伝え、共に考える機会を提供する展示や利用者の特性に応じた学習支援活動を実施している。さらに研究者による研究活動や展示を解説する動画の公開、各SNSによるタイムリーな情報発信にも取り組んでいる。

(日本学術会議や学協会における取組)
日本学術会議は、学術の成果を国民に還元するための活動の一環として学術フォーラムを開催しており、令和3年度は、「新型コロナウイルスワクチンと感染メカニズム」、「我が国の学術政策と研究力に関する学術フォーラム」や「カーボンニュートラル実現に向けた学術の挑戦」等の広範囲なテーマについて計13回開催した。大学などの研究者を中心に自主的に組織された学協会は、研究組織を超えた人的交流や研究評価の場として重要な役割を果たしており、最新の研究成果を発信する研究集会などの開催や学会誌の刊行等を通じて、学術研究の発展に大きく寄与している。日本学術振興会は、学協会による国際会議やシンポジウムの開催及び国際情報発信力を強化する取組などに対して、科学研究費助成事業「研究成果公開促進費」による助成を行っている。

今回で令和4年版科学技術・イノベーション白書の紹介は終わりになります。

(おわり)Y.H

(出典)
文部科学省 令和4年版科学技術・イノベーション白書 
科学技術・イノベーション白書