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ISO19011に準拠した内部監査に関する質問50選(その15)

 

内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。

【質問15】
ISO19011に書かれている内部監査員の個人的な行動について、「観察力がある」、「知覚が鋭い」、「適応性がある」について教えてください。

【回答15】
内部監査員の個人的な行動が「観察力がある」、「知覚が鋭い」、「適応性がある」とは、JIS Q 19011:2019の箇条7.2.2 「個人の行動」のd)、e)、f)に書かれていることだと思います。

d) 「観察力がある」とは物理的な周囲の状況及び活動を積極的に観察することです。具体的には、監査の対象を目の前にして、そこでどんなことが行われており、結果として何がアウトプットされているかを事実として明確にすること、及び行っていることがアウトプットになる経過(プロセス)を明確にする力を言います。そのためには次のことが重要になります。
 ①自分の目で確かめる。内部監査員は被監査部署とは身近な関係ですので、対象部署の話題を社内でいろいろ聞いていることと思います。しかし、最終的な判断は自分自身の目で行います。
②活動(仕事)はルールに基づいて行われています。内部監査員はそのルールと現実を比較します。
③活動をした結果は記録として残っています。記録は必ずしも紙に書かれたものばかりではありません。PCの中に在ったり、現物であったりします。これらの記録を確認します。
④実施担当者に聞きます。活動を行っている人が一番その活動のことを知っています。

e) 「知覚が鋭い」とは、状況を認知し,理解できることを言います。具体的には、内部監査員が物事の発する情報に対して敏感であることを言います。物事が発する情報とは以下のようにいろいろなものがあります。

 ・音、熱、湿気 
 ・形、色、凹凸、表面、傷
 ・臭い、味
 ・変化

特に最後の「変化」は重要です。知覚が鋭いと、変色、劣化、変形、破損、情報違いなどの通常あってはならないことに気が付きます。
内部監査においては、この変化に注目することが大切です。

f) 内部監査員に「適応性がある」とは、いろいろな場面にうまく対応することを言います。「うまく」という曖昧な言葉を使いましたが、堅く言えば「目的に合った処理をする」ことを意味します。ここで言う「目的は」内部監査の目的を意味します。内部監査の目的は「会社で現実行われていることをルールと比較し、異なっているところを明確にする」ことにあります。このことを含め、内部監査の目的は「組織の改善にある」とよく言います。内部監査員に「適応性がある」と、監査で得た観察事項を改善のために使うようになります。
決して被監査部署の弱点を批判したり、担当者を責めるようなことはしてはなりません。

回答のまとめです。
内部監査員に「観察力がある」とは、被監査部署でどんなことが行われており、結果として何がアウトプットされているかの事実を明確にすることを言います。「知覚が鋭い」とは物事の発する情報に対して敏感であることを言います。また、「適応性がある」とは、監査で得たことを会社の改善につなげることを意味します。

「JIS Q 19011:2019の該当する部分」 (抜粋、赤字は筆者追加)
7.2.2 個人の行動
監査員は,箇条 4 に示す監査の原則に従って活動するために必要な特質を備えていることが望ましい。 監査員は,監査活動を実施している間,専門家としての行動を示すことが望ましい。望ましい専門家としての行動には,次の事項を含む。

a) 倫理的である。すなわち,公正である,信用できる,誠実である,正直である,そして分別がある。
b) 心が広い。すなわち,別の考え方又は視点を進んで考慮する。
c) 外交的である。すなわち,目的を達成するように人と上手に接する。
d) 観察力がある。すなわち,物理的な周囲の状況及び活動を積極的に観察する。
e) 知覚が鋭い。すなわち,状況を認知し,理解できる。
f) 適応性がある。すなわち,異なる状況に容易に合わせることができる。
g) 粘り強い。すなわち,根気があり,目的の達成に集中する。
h) 決断力がある。すなわち,論理的な理由付け及び分析に基づいて,時宜を得た結論に到達することが できる。
i) 自立的である。すなわち,他の人々と有効なやりとりをしながらも独立して活動し,役割を果たすことができる。
j) 不屈の精神をもって活動できる。すなわち,その活動が,ときには受け入れられず,意見の相違又は 対立を
もたらすことがあっても,責任をもち,倫理的に活動することができる。
k) 改善に対して前向きである。すなわち,進んで状況から学ぶ。
l) 文化に対して敏感である。すなわち,被監査者の文化を観察し,尊重する。
m) 協力的である。すなわち,監査チームメンバー及び被監査者の要員を含む他の人々とともに有効に活動する。

(次号へつづく)

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