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ISO19011に準拠した内部監査に関する質問50選(その16)

 

内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。

【質問16】
ISO19011に書かれている内部監査員の個人的な行動について、「粘り強い」、「決断力がある」、「自立的である」について教えてください。

【回答16】
内部監査員の個人的な行動ついて、「粘り強い」とは、「決断力がある」とは、「自立的である」とは、に関して説明をします。
g) 「粘り強い」とは 、根気があり目的の達成まで努力を続けることを言います。内部監査員は最初から不適合に遭遇するということは滅多にありません。内部監査の事例を見ると、最初は「ちょっとおかしい!」と感じることから段々に調べていくことが多いのです。実際の活動を見たり、担当者に質問したりする中から少しずつルールに準じていないことが分かってきます。この着手のところから最後の結論を得るまでには、会社の手順書を複数読むことも出てきます。監査とは、地道で愚直な仕事で、多くの場合慣れない活動の内容を「粘り強く」見たり、聞いたりしながら実態を明らかにさせる活動です。

h) 「決断力がある」とは 、論理的な理由付け及び分析に基づいて,時宜を得た結論に到達することです。監査で決断を必要とする場面は、実はあまりないと思います。なぜならば、監査は客観的な事実の積み上げによって被監査部署の実態を明らかにして作業の繰り返しをすることですので、ルールと実態のギャップはお互い(監査員と被監査者)に自然と見えてくるからです。内部監査で決断する場面は、何をサンプリングするか、どんな質問をするか、不適合とするかしないか、などの場面です。中でも「不適合とするかしないか」で迷う場面は決断力が必要です。

j)「自立的である」とは、他の人々と有効なやりとりをしながらも独立して活動し,役割を
果たすことができることを言います。監査員は被監査者からの言動に惑わされてはいけません。自分の考えで監査を進めていくことが推奨されます。勿論、自分勝手に進めていいわけではなく、内部監査には決められた手順、ルールがありますので、それに沿って進めていきます。しかし、手順、ルールがるからと言って内部監査の進め方がすべて決まっているわけではありません。具体的な実施の場面では、細かな決定は監査員がしなければなりません。内部監査のいろいろな場面に応じて、監査員は適切にルールを適用する必要があります。f) 「適応性がある」において、すでに説明しましたが、この異なる状況に対応するときに、自分自身の考えを明確にして自分の思いを実現することを自立的であると言います。

回答のまとめです。
監査において「粘り強い」とは、慣れない活動の内容を地道で愚直に見たり、聞いたりしながら実態を明らかにさせることです。「決断力」が内部監査で必要になる場面は、何をサンプリングするか、どんな質問をするか、不適合とするかしないか、などの場面です。中でも「不適合とするかしないか」で迷う場面は決断力が必要です。自立的であるとは、いろいろ異なる状況に対応するときに自分自身の考えを明確にして自分の思いを実現することを言います。

「JIS Q 19011:2019の該当する部分」 (抜粋、赤字は筆者追加)
7.2.2 個人の行動
監査員は,箇条 4 に示す監査の原則に従って活動するために必要な特質を備えていることが望ましい。 監査員は,監査活動を実施している間,専門家としての行動を示すことが望ましい。望ましい専門家としての行動には,次の事項を含む。

a) 倫理的である。すなわち,公正である,信用できる,誠実である,正直である,そして分別がある。
b) 心が広い。すなわち,別の考え方又は視点を進んで考慮する。
c) 外交的である。すなわち,目的を達成するように人と上手に接する。
d) 観察力がある。すなわち,物理的な周囲の状況及び活動を積極的に観察する。
e) 知覚が鋭い。すなわち,状況を認知し,理解できる。
f) 適応性がある。すなわち,異なる状況に容易に合わせることができる。
g) 粘り強い。すなわち,根気があり,目的の達成に集中する。
h) 決断力がある。すなわち,論理的な理由付け及び分析に基づいて,時宜を得た結論に到達することが できる。
i) 自立的である。すなわち,他の人々と有効なやりとりをしながらも独立して活動し,役割を果たすことができる。
j) 不屈の精神をもって活動できる。すなわち,その活動が,ときには受け入れられず,意見の相違又は 対立をもたらすことが
あっても,責任をもち,倫理的に活動することができる。
k) 改善に対して前向きである。すなわち,進んで状況から学ぶ。
l) 文化に対して敏感である。すなわち,被監査者の文化を観察し,尊重する。
m) 協力的である。すなわち,監査チームメンバー及び被監査者の要員を含む他の人々とともに有効に活動する。

(次号へつづく)

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