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ISO19011に準拠した内部監査に関する質問50選(その35)

内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

C:監査の実施
 ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。
【質問35
監査においてはコミュニケーションが大切であると教わりましたが、詳しく教えてください。
【回答35
コミュニケーションは内部監査に限らず組織活動においては最も重要なものの一つです。
重要である理由は、人と人の相互理解が監査パフォーマンスの良し悪しを決めるからです。時として人間は感情で動くところがありますので、理屈では判断できない、説明できないことが時々起きたりします。
コミュニケーションは双方向の伝達である、と言われています。双方向にはAさん(話しかける人:発信者)とBさん(話をされる人:受信者)が居るとします。コミュニケーションには次の原則があります。

 (1) Aさん(話しかける人:発信者)が主導権を取る。
  -Bさんが聞く態勢にあるか確認してから話しかける。
 (2) AさんはBさんと同じプラットフォームに立つ。
  -話す内容がBさんと焦点が合っているか確認しながら話を進める。

ドラッカーは人の話には、「真実」と「要望」と「感情」が混在していると喝破しています。話をする状況に応じてこの「真実」と「要望」と「感情」の比率は変わってきます。
そして、この3つはお互いが絡み合っているので一度の会話ではそれらの絡み合い具合はなかなか理解できません。「感情」は、聞く人の感受性にも寄りますが、比較的識別できますが、「真実」と「要望」の2つはどちらかの後ろに隠れてその区分けが曖昧になっていることが多いようです。日頃コミュニケーションを取っている間柄ですとこの3つの識別がしやすくなります。

 < JIS Q 19011:2019の該当する部分> (下線は筆者が追加)
6.4.4 監査中のコミュニケーション
監査中,監査チーム内,並びに被監査者,監査依頼者及び必要であれば外部の利害関係者(例えば,規制当局)とのコミュニケーションについて,正式な取決めが必要となることがある。特に,法令・規制要求事項の不適合について,報告が義務として求められる場合である。
監査チームは,情報交換,監査進捗状況の評価,及び必要な場合には,監査チームメンバー間での作業の再割当てのために,定期的に打ち合せることが望ましい。
監査中,監査チームリーダーは,進捗状況,あらゆる重大な所見及びあらゆる懸念事項を,被監査者及び適宜,監査依頼者に,定期的に連絡することが望ましい。監査中に収集した証拠で緊急かつ重大なリスクを示唆するものがあれば,被監査者及び適宜,監査依頼者に,遅滞なく報告することが望ましい。監査範囲外の課題に関するいかなる懸念も,監査依頼者及び被監査者に連絡をとる場合に備えて,メモをとり,監査チームリーダーに報告することが望ましい。
入手できる監査証拠から監査目的が達成できないことが明確になった場合には,監査チームリーダーは,適切な処置を決定するために,監査依頼者及び被監査者へ監査目的が達成できない理由を報告することが望ましい。このような処置には,監査計画の変更,監査目的若しくは監査範囲の変更,又は監査の打切りを含めてもよい。
監査活動の進捗に伴って監査計画の変更の必要が明らかになった場合には,このような変更の必要性を,監査プログラムをマネジメントする人及び監査依頼者の双方が適宜レビュー及び受諾し,被監査者に報告することが望ましい。

 7.4 監査員の適切な評価方法の選択
評価は,表2 に示す方法の二つ以上を利用して行うことが望ましい。表2 を利用するときは,次の事項に注意することが望ましい。
 a) 表2 に概要を示した方法は,様々な選択肢の中の代表的なものであり,全ての状況に適用してよいとは限らない。
 b) 表2 に概要を示した様々な方法の信頼性は,それぞれ異なってよい。
 c) 評価結果が客観的で,一貫性をもち,公正で,かつ,信頼できることを確実にするために,複数の評価方法を組み合わせて用いることが望ましい。

 

附属書A参考監査を計画及び実施する監査員に対する追加の手引
A.1 監査方法の適用
(前略)
A.1 は,監査方法の例を提示し,これは,監査目的を達成するために,単独に,又は組み合わせて利用し得る。もし監査で複数メンバーの監査チームを使うのであれば,現地監査及び遠隔監査の両方の方法を同時に利用してもよい。
注記 物理的場所の訪問についての追加的な情報をA.15 に示す。

 

(次号へつづく)

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