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ISO19011に準拠した内部監査に関する質問50選(その36)

内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

C:監査の実施
 ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。
【質問36
最終会議について教えてください。
【回答36
最終会議は文字通り内部監査の最後に行われる「まとめの会議」です。最終会議の目的は、第1に初回会議で確認したことがそのとおり実施できたを、監査員と被監査者の双方がチェックすることです。
質問27で初回会議の主要目的を説明しましたが、最終会議では次の二点をまず確認します。
 ・監査計画の確認
 ・今回監査の重点
「監査計画」には被監査部署、監査項目(チェックリスト)、時間割りなどが決められていますので、今回の内部監査がそれに沿って行われたか確認します。計画した通りに行われていない場合はその理由を確認します。多くの場合、問題が発見されその調査に時間が掛かったことが背景にあると思います。「今回監査の重点」は内部監査責任者が決めた監査の重点が、監査でどのように取り上げられたかを確認します。

第2に行うことは監査中に発見された指摘事項の確認です。監査計画の確認、今回監査の重点の確認の中で既に指摘された事項が話題に上がっているかもしれません。内部監査はこれまで述べてきたように改善を目的に行いますので、最終会議の後で行われる改善活動において、改善を行う当事者者はどこを改善すべきか認識できていなければなりません。ここで大切なことは、この認識を得るために監査員と被監査者はお互いに完全に同意する必要があるということです。不適合については、特に時間を掛けて監査員と被監査者が相互に意見を述べ合い、不適合の起きた背景、要因などについて率直な意見交換することが重要です。こうすることで、監査員と被監査者の双方が改善のための行動をはっきりさせることが出来ます。

指摘事項は次のように分類されます。
 (1)不適合事項
 (2)観察事項
呼び方は各社で考えることをお奨めします。特に「不適合」という言葉は、被監査部署の仕事そのものを否定する響きがありますので、「改善事項」などと呼ぶことがいいかもしれません。場合によっては、(2)も一緒にして「改善の機会」と呼んだらどうでしょうか。

また、不適合を「重大な不適合」と「軽微な不適合」に分ける場合もあります。この区別は第三者審査制度の基準であるISO / IEC 17021-1に定義されているものです。しかし、内部監査においては「重大な不適合」と「軽微な不適合」に分けることなく、総てを不適合として扱うことを勧めます。理由は、区別する基準が曖昧なために監査員と被監査者の間で非建設的な議論が起きることを避けるためです。

(1)不適合事項とは要求事項に適合していない事項を言います。監査員は、監査の基準である要求事項を説明し、被監査者がそれを理解したことを確認した上で、何が要求事項に合っていないかをエビデンスをもって説明します。
(2)は不適合とは言えないがより改善することが望ましい事項を言います。また、監査員から見て評価できることで、他部署にも知ってもらい横展開を図ってもらいたい事項を言います。

そして最も重要なことは、今後の不適合への処置について監査員と被監査者が同意することです。
  不適合への処置の仕方
  ・不適合への処置の期間
  ・不適合への処置のプロセス
   是正処置の実施
   -是正処置のレビュー   
最終会議の結果は記録に残します。

< JIS Q 19011:2019の該当する部分>  
6.4.10 最終会議の実施
最終会議は,監査所見及び監査結論を提示するために開催することが望ましい。
最終会議は,監査チームリーダーが議長を務め,被監査者の管理層が出席し,さらに,該当する場合,
次の者を含むことが望ましい。
- 監査を受けた機能又はプロセスの責任者
- 監査依頼者
- 監査チームのリーダー以外のメンバー
- 監査依頼者及び/又は被監査者が決定する,その他の関連する利害関係者
該当する場合,監査チームリーダーは,監査結論に付与し得る信頼性を低下させるかもしれない,監査中に遭遇した状況について,被監査者に知らせることが望ましい。マネジメントシステムに定められているか,又は監査依頼者との合意がある場合,参加者は,監査所見に対処するための処置の計画の期限について合意することが望ましい。
最終会議の詳細さの程度は,被監査者の目的(又は目標)を達成するためにマネジメントシステムの有効性を考慮に入れることが望ましい。これには,被監査者の状況並びにリスク及び機会の考慮を含む。
被監査者の監査プロセスに関する精通度もまた,最終会議において考慮に入れることが望ましい。これは,最終会議を適正なレベルの詳細さで参加者へ提供することを確実にするためである。
監査の位置づけによっては,最終会議が正式なものとなり得る場合がある。その場合には,出席者の記録を含めて議事録を残すことが望ましい。正式なものとしない場合には,例えば内部監査では,最終会議は,より非公式で,単に監査所見及び監査結論を伝えるだけのものになり得る。
該当する場合には,最終会議では,次の事項を被監査者に説明することが望ましい。
a) 収集した監査証拠は入手可能な情報のサンプルに基づいたものであり,必ずしも,被監査者のプロセスの全体的有効性を完全に表すものではないことを伝える。
b) 報告の方法
c) 合意したプロセスに基づいて,監査所見にどのように対処するのが望ましいか
d) 監査所見に適切に対処しなかった場合に起こり得る結果
e) 監査所見及び監査結論の提示。被監査者の管理層が理解し,認知する方法で行う。
f) 関係する監査後のあらゆる活動(例えば,是正処置の実施及びレビュー,監査に関する苦情への対処,異議申立てのプロセス)
監査所見又は監査結論に関して,監査チームと被監査者との間に意見の相違があれば,協議し,可能であれば,それを解決することが望ましい。解決できなかったならば,これを記録に残すことが望ましい。
監査目的で規定している場合は,改善の機会についての提言をしてもよい。提言には,拘束力がないことを強調しておくことが望ましい。

(次号へつづく)

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