ISO情報

私とマネジメントシステムそしてISO(その26)

第26回

長い間お休みをしており申し訳ありません。「私とマネジメントシステムそしてISO」は、(その25)「創意工夫改善制度」の話で中断しておりました。少しの間「私の英国赴任のきっかけ」を入れて、そのあと「私とマネジメントシステムそしてISO」に戻りISOの話題を再開する予定でした。
ところが私の英国赴任の話がイギリスのジョンソン首相主導によるEU離脱にまで話が及び、さらに「内部監査の実践」そして「平林良人のアーカイブ」と目まぐるしく発信する内容を変えてしまいました。後続の記事を期待しておられた読者の皆様には申し訳ありませんでした。
今回から「私とマネジメントシステムそしてISO」を再開させていただきます。また、近いうちに「内部監査の実践」も再開するつもりです。どうか今まで以上にご愛読いただきますようお願い申し上げます。

◆ ISO技術専門家(エキスパート)

私はTC176のエキスパートを2000年から10年間、TC283のエキスパートを2013年から5年間勤めさせていただきました。TC176とはISO9000品質マネジメントシステム規格を、TC283とはISO45000労働安全衛生マネジメントシステム規格を作る技術専門委員会のことです。
私がISO9001規格の制定に携わったきっかけは当時TC176国内委員会委員長で、日本のエキスパート代表をしていた飯塚先生(当時東京大学教授、現JAB理事長)から声をかけていただいたことからでした。
既にお話ししたと思いますが、私は1992年にセイコーエプソンを退社してテクノファというISO9001審査員の研修機関を立上げ、その後各種マネジメントシステム
例えばISO14001、OHSAS18001(労働安全衛生)などの審査員養成研修に事業を拡大している頃でした。私がたまたまイギリスに5年間赴任をし、その後も出張ベースで毎月の位イギリスに行っていたことから目を付けていただいたのではないかと思います。

国際規格は、ISO加盟国で組織されるTCやSC(分科会:Sub-Committee)の委員会で検討されISO中央事務局から発行されます。場合によっては、TCまたはSCのなかにさらにWG(ワーキンググループ:Working Group)を設けて検討される場合もあります。国際規格作成の手続きは、メンバーのコンセンサスを前提として、ISO/IEC専門業務指針に規定されたISOの国際規格作成手順に従って作成され発行されます。ただ、最後の段階になると国際規格はコンセンサスベースではなく一国一票の投票で決まることになっています。

◆ Mr. Charles Corrie

これは後日談ですが、飯塚先生が私をISOエキスパートに誘ってくれたのには裏話というか、背景というものがありました。
イギリスのBSI(英国規格協会)には、チャールズ・コーリ(Charles Corrie)という辣腕のセクレタリー(事務局)がいました。辣腕と言いましたが、このことは後から知ることになるのであって、当時は知る由もありません。
1998,9年頃だったと思いますが、BSIが提案した労働安全衛生規格のISO化がILO(国際労働機構)の反対で挫折をしたことがありました。
BSIはチャールズが中心になって、OHSASグループという国の標準化団体(日本においては日本規格協会)を中心とした有志連合体を作る作戦を立てました。OHSASグループは、イギリスがISOに提案しようとしていた草案をベースにコンソーシアム規格(有志が集まって作成した規格)を作成しようとしました。その有志連合体にテクノファは会員として登録することになりました。
2000年頃には年に何回もOHSASの国際会議が開かれました。国際会議では発言をしないと損をします。「損する」とは世俗的な言い方ですが、私がイギリスで約10年経験してきたことから言えることで、自己の意見を言わないと自分の目的を達成できないという社会構造になっているのが欧米です。私はOHSAS国際会議で盛んに自分の意見を言いましたので、どちらかというと控えめ目と思われていた日本人には目立った存在だったかもしれません。
飯塚先生から平林さんをISOエキスパートに誘ったのは、チャールズからの推薦があったからだと後日聞かされました。
(つづく)