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ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール(第1回)

平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第1回

平林良人のアーカイブ第3弾は、「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)です。こちらは“Beyond Registration.Getting the best from ISO 9001 and business improvement”を英国規格協会(BSI)の許可を得て日本語に翻訳したものです。
著作権は原著者であるSteve Tannerにありますので、複写、転用はしないようにお願いいたします。-平林良人

■内容

John Oaklandによる前文

序文

第1部:ISO 9001と事業改善モデル

  • ISO 9001品質システム
  • よく知られている事業モデル
    • マルコム・ボルドリッジ国家品質賞
    • EFQM(欧州品質マネジメント財団)優良モデル
    • 関連

第2部:ISO 9001と事業改善アプローチ

  • 序文
    • 事業改善アプローチ
    • 事業改善アプローチの活用:要約表
  • バランススコアカード (BSC)
  • ベンチマーキング (Benchmarking)
  • ベストバリュー (Best Value)
  • Better Quality Service Reviews (BQSR)
  • Business Performance Improvement Review (BPIR)
  • ビジネスプロセス・リエンジニアリング (BPR)
  • チャーターマーク (Charter Mark)
  • 故障モード影響解析 (FMEA)
  • インベスター・イン・ピープル(IiP)
  • 改善/継続的改善(Kaizen/Continuous Improvement)
  • 改善チーム(Kaizen Teams)
  • リーン・シンキング (Lean Thinking)
  • パフォーマンス評価(Performance Measurement)
  • プロセス分類枠組み (PCF)
  • プロセスマネジメント(Process Management)
  • 自己評価法(Self-assessment)
  • シックスシグマ(Six Sigma)
  • 統計的工程管理(SPC)
  • 制約条件の理論(TOC)
  • TPM(Total Productive Maintenance)
  • TQM(Total Quality Management)

用語集
付録1 それぞれのアプローチがISO 9001をサポートするところ
付録2 さらに詳しい情報と文書
付録3 ビジネス優良ヨーロッパセンターとBSI

前 文

品質規格は、数十年にわたって国内外の市場競争激化を背景に、製品及びサービスの質を改善するために活用されてきました。最近では、公共部門が自分達の提供するサービス水準を改善するために、より高い目標に向けての1ステップに品質規格を採用しています。このような結果、これまでもそして多分今後も、品質規格への適合性の審査登録を求める会社及び組織は増大し続けていきます。

1990年代初期、品質及び「優良」モデルは世界中で開発されました。それらの中で最も有名なものが、日本のデミング賞であり、アメリカのボルドリッジ賞であり、ヨーロッパのEFQM優良モデルです。これらの枠組みの目的は、ISO 9000:2000品質マネジメント規格のように、組織の能力を改善すること、及びそこから得られる結果を改善することです。本書は、これらの「優良モデル」が互いにどのように支援し合うのかを示し、かつこれら枠組みのお互いの比較を示す、数少ない出版物の1つです。

組織は、品質を追い求めるために、独自の特徴を持った品質ツール及びテクニックを活用しようとしますが、それぞれの違いに直面して戸惑っているのが現状です。本書は、20以上の改善事例を概説し、ISO 9000:2000に基づいたマネジメントシステムの土台から、どのようにして改善結果を得るかの指針を提供します。

本書は、BSIと「ビジネス優良ヨーロッパセンター」との間の協同プロジェクトであり、すべての種類の組織のパフォーマンス改善を支援する、極めて価値ある資源を提供します。

リーズ大学ビジネススクール
教授 John Oakland

序文

多くの組織が、世界クラスのパフォーマンスを目指しています。本書の対象となるものは、世界クラスのパフォーマンスに達するために活用できるツール(事業改善モデルとそのアプローチ)です。

事業改善モデルは、組織の活動を網羅し、組織がそれを実行すると、世界クラスのパフォーマンスに組織を導くことのできるものです。事業改善アプローチは、活動の特定な業務、特定なアウトプット又は特定な領域に適用され、世界クラスのパフォーマンスを構築する礎になるものです。

事業改善モデルは、「世界クラス」のパフォーマンスを評価し、認めるものです。最もポピュラーなものはISO 9001、EFQM優良モデル及びアメリカのボルドリッジモデルです。事業改善アプローチは、TQM、BPIR(Business Performance Improvement Review)、又はシックスシグマのように現時点の改善を進めるプログラムと、バランススコアカード、PCF(Process Classification Framework)のように管理者が事業を理解することを支援するツールの両方を含んでいます。

事業改善モデルと、事業改善アプローチの間には重複があります。それらの間の相違は、次の通りです。

事業改善モデル 事業改善アプローチ
組織すべての活動をカバーした、全体的な設計になっている。 組織活動の特定の業務、又は特定の領域向けに設計されている。
評価をすると共に、活動を決定するために使用される。 製品を基本とし、多くの場合製品の一生(例えば、市場調査、設計から製造、アフターサービスまで)に従う。
EFQMのように、認知された組織によって所有されている。 コンサルタント業、或いはビジネス書籍のように、特定の「教える組織」に関係している。
多くの役割モデル組織。 限定された役割モデル組織。
表彰プロセスの基礎に用いられる。 場合によっては、対象領域の表彰の基礎に用いられる。
「世界クラス」のパフォーマンスに導く。 「世界クラス」のパフォーマンス構築の礎。

この本について

本書は、継続的改善を求めているあらゆる組織のためにありますが、ISO 9001に登録してなお前へ進みたい組織に特に適切なものです。

本書は、組織のパフォーマンスを改善するための手助けとなるでしょう。いくつかの事業改善モデルと、事業改善アプローチを概説し、ISO 9001と比較しています。ISO 9001は、事業改善モデル及び事業改善アプローチにどのような支援をしているか、又事業改善モデル及び事業改善アプローチとどのように両立するかを、論証しています。

第1部はボルドリッジと、EFQM優良モデルを論じます。ISO 9001は、世界クラスのパフォーマンス旅行の出発点です。ISO 9001は、リーダーシップによる管理、顧客重視及び継続的改善の達成により、組織を前進させる土台を提供します。比較表は、ISO 9001によって築かれた基礎の上に、ボルドリッジ及びEFQM優良モデルがいかに構築されるかを示し、かつ一度ISO 9001に登録された組織について、その潜在的な位置を示しています。

第2部は、主な事業改善アプローチを記述して、それらはどのように改善に繋がっていくのかを示します。各アプローチの適用、背景、原則及び方法が網羅されており、ISO 9001との関係が示されています。

用語集は、本書の中で使用される用語及び略語について説明しています。また付録1の表は、ISO 9001、ボルドリッジ及びEFQM優良モデルの要求事項を支援するために、どこでプロセスアプローチが使用されるのか示しています。さらに詳しい情報源は、付録2で見つけることができます。また付録3は、ビジネス優良ヨーロッパセンター、及びBSIマネジメントシステムについて、その詳細を示しています。