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ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール(第12回)

平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第12回

ビジネスプロセス・リエンジニアリング (BPR)

活用方法

要素 コメント
ISO 9001との関連 MR RM PR M&A Imp
活用範囲 あらゆるタイプの組織
製造とサービスの両方
部門又は組織
システムにおける変化の度合い
人々に関する変化の度合い
利益レベル
参加レベル よく一体として
成熟レベル 誰でも
時間尺度 6~12ヶ月
投資レベル 高い
実施方法 プロジェクト

背景

ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)は、HammerとChampyのベストセラー書籍「Reengineering the Corporation」(1993年)の発刊をきっかけに、1990年代前半に普及しました。BPRは、組織は時として緊急な手当てを必要とする課題に直面する、という彼らの観察に基づいて構築されました。BPRは、生存とか、変化に対する利害関係者の圧力、そしてより速く成長することに関連したものです。

このような課題には緊急な取り組みが必要で、よく外部専門家、特に変化に抵抗する内部事情から離れた人の助けを必要とします。BPRは、適切に扱われるかぎり、問題を取り扱う方法論としてどんな組織にも活用できるものです。BPRは、プロセスに焦点を当て、人々について考慮する点で極めて強力なアプローチです。

BPRはコスト削減活動であると考えられています。しかし、もっと知的に活用することで、顧客満足、柔軟操業等に顕著な効果をもたらし、かつ組織の目標展開に際立った貢献をするものです。BPRは、何よりもプロジェクト初期段階の問題を解決します。

原則

HammerとChampyは次のようにBPRを定義しています。
「業務プロセスを本質的に考え直し、基本に戻り革新的に業務プロセスを再設計することで、重要な局面におけるコスト、品質、サービス及びスピードのようなパフォーマンス指標を同時に劇的に改善すること」

この定義には次のような4つのキーワードが含まれています。

  1. 本質的(Fundamental):「なぜ私たちはこれをしたいのか?」、「なぜ私たちはこのようにしたいのか?」のような最も基本的な疑問を抱くこと。
  2. 革新的(Radical):ものの根本に到ること。それは改善ではなく再構築である。
  3. 劇的(Dramatic):パフォーマンスが一段階大きく変化することが要求される時にのみ使われる。
  4. プロセス(Processes):個別の仕事でなく、ひとまとまりの活動に焦点を当てる。

リエンジニアリングに着手した組織は、共通な4つの主題に焦点を当てます。

  1. プロセス指向
  2. 大きな望み
  3. 既成打破
  4. 情報技術の創造的活用

リエンジニアリングは、これらの主題に裏付けられて実行されます。

アプローチ

BPRは、中途半端なマネジメントの変更は、リエンジニアリングプロジェクトを失敗に終わらせると、広く認識されている点で独特なものです。Hammerは後半の仕事で、プロセス指向に十分重点を置いていなかったと認めています。

また、BPRの正しいアプローチに関しては、広範な議論があります。BPRのアプローチは、リエンジニアリングに向けて6ステップを適用しますが、その6ステップには現状見直し、現在の問題に取り組む事業モデル開発、かつ実行計画作成を含んでいます。実行そのものは、変更管理アプローチによって取り扱われます。

BPRのアプローチは、リエンジニアリングに向けての厳しい面と、もっと柔らかい「人の側面」を組み合わせたもので、解決は小さな問題から実行すべきであるとしています。それは、業務の歴史的、政治的、文化的情況を考慮に入れる、厳格な分析的手法を使用します。多くの問題を引き起こす少数の問題に焦点を当てることによって、アプローチは迅速で的を射た結果を生み出します。

チームとして活動することは非常に重要です。ワークショップは、できるだけ多くの人々に参加してもらい、彼らを変化に巻き込むために開催されます。リエンジニアリングの考えとアウトプットは、最良の解決案が展開されているか、プロジェクトが正しい方向に進んでいるかどうかを確実なものにするために、プロジェクトを通じて検証されます。

ステップ1:プロジェクトの定義

  • すべての大きなプロジェクトがそうであるように、出発点はプロジェクトの定義とプロジェクトチームの結成です。プロジェクトチーム最初の仕事の1つは、実施しようとしているリエンジニアリングの意味を理解することです。
  • また、経営幹部によって定義され認可されたチームの業務範囲を、利害関係者に納得させるのもこのときです。

ステップ2:事業のベースラインの見直し

  • 初期の段階で、その問題に横たわる原因に関係して、仮説を立てることは重要なことです。「事業の基準線」を把握して、課題としている領域の現状を確かめるデータを集めてください。重要なことは、小さなことのために時間をかけず、全体コストの80パーセントに注目することです。
  • その領域内の活動をよりよく理解するためにプロセスマップを作ってください。これによって、より詳細なコストモデルができ、問題とニーズの特定ができます。

ステップ3:機会の特定

  • 今までのところ、活動はデータの収集とアイデアの明確化を中心とする、思考的なものです。このステップでは、前の段階で立てた仮説に沿って、プロセスの再設計とテストを始めてください。
  • 新しい業務方法を取り込んだ事業モデルが現出します。もし適当だと思ったら、事業モデルを発展させるために調査研究を、さらには最良の慣行のベンチマーキングを実施してください。

ステップ4:機会の検証

  • その問題から派生した解決法をテストして、それが問題を解決しニーズを満たすかどうか確認してください。この段階で、その解決策が許容できるものかどうかの確認を、主要な利害関係者と共に行わなければなりません。
  • すべてのベンチマーキングに対してその解決策を見直すこと、もし見直しているならば、さらにその解決策が有効で効率的であること、これらを確認する価値テストを行ってください。

ステップ5:利益の達成計画

  • 解決策が完全にテストされたならば、計画したとおり実行し始めてください。かつて開発した事業モデルを修正することになるかもしれませんから、実施コストは明確にする必要があります。
  • すべての変化プログラムのように、変化には抵抗があるでしょう。これは当然です。コストと利益の両方について詳細に理解がされていると、活動が抵抗なく行われます。

ステップ6:見直しと報告

  • 最終活動は、プロジェクトの報告とプロジェクトの見直しです。この見直しによって、プロジェクトの詳細はすべて記録され、学習したことはすべて取り込まれ、共有されることを確実なものにします。