ISO情報

ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール(第14回)

平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第14回

故障モード影響解析(FMEA)

活用方法

チャーターマーク (Charter Mark) は、公共部門の組織にのみ利用が可能なものです。

要素 コメント
ISO 9001との関連 MR RM PR M&A Imp
活用範囲 主に製造
製品、又はサービス
システムにおける変化の度合い
人々に関する変化の度合い
利益レベル
参加レベル 完全に推進母体として
成熟レベル 経験者
時間尺度 6~12ヶ月
投資レベル 安い
実施方法 プロジェクト

背景

FMEA(Failure Mode Effect Analysis)は米国アポロ宇宙計画の初期に、NASAによって発明されました。NASAは、2つの矛盾する標語の間の圧力を軽減するツールを創造しました。すなわち、「故障してはならない」ということと、「完全をねらっても良くならない」ことの2つです。1番目は、アポロは成功裡に使命を終えて乗組員を地球に戻すことを意味しました。2番目は、部品の故障を予測し、可能な場合それらを防ぎ、防止計画を立て、故障を克服する能力を組み入れて業務を推進しても、いくつかの最小限の部品故障は避けられないことを意味しました。

FMEAは、故障を予測し、予防対策を立て、故障のコストを見積もり、そして冗長性のあるシステム、あるいは故障に反応するシステムを計画するツールです。

原則

製品、プロセス操業又はサービスシステムの成果に影響のある故障について、何がモード(様式)としてありえるのかを、決定するプロセス分析は可能です。FMEAは故障の影響を明確にして、潜在故障を調査するものです。もし、FMEAの結果の重要性について順位付けをすると、これは「故障モード影響致命度解析(FMECA;Eailure Modes,Effects and Criticality Analysis)」になります。FMECAの主要な目的は、様々な故障モードに対する重大なプロセス設計、あるいはプロセス操業の特徴を明確にすることです。FMECAは、市場調査、設計、技術、購入、生産/操作、配送、サービス等からのすべての利用可能な経験と専門性を駆使して、潜在的な問題の重要性レベル又は重大性を特定し、重要性レベルを減少させる活動を刺激するものです。

FMECAのすべての要素は次の通りです。

  1. 故障モード。一連の活動で予想された状態は、最もありそうな故障モード、プロセスかシステム、又はそれらの構成部分の位置とメカニズムを研究する背景として活用される。
  2. 故障の影響。起こりうる故障は、全体プロセスの成果における可能な影響と、いろいろな構成部分の相互影響を明確にするために研究される。
  3. 故障の重大性。プロセス又はシステムの様々な部分で起こりうる故障は、パフォーマンス低下、安全上の危険源、機能の完全停止など故障影響の大きさを明確にするために調査される。

FMECAは、プロセス設計、開発あるいは操業のどんな段階でも適用可能ですが、その主要な目標が故障を防ぐことから、原因を特定し除去する設計段階での適用が最も適切です。いっそう複雑なプロセスあるいはシステムにおいては、サブシステムに分けることが適切で、分けられた各々が個別のFMECAの対象であるという状態がよいでしょう。

アプローチ

このツールは以下に使用してください。

  • 何がプロセスや製品で悪化しうるのか理解する。
  • どのように潜在的な問題が顧客の認識に影響するか理解する。
  • 新しいプロセスか製品を変更するか導入する時には、改善のための提案を作成する。ツールを最大限利用して、分析がシステマティックになるようにする。

FMEAを適用する場合、製品又はプロセスについて完全な理解が必須です。

  • 製品を目前に置く。
  • プロセスを訪れる。
  • FMEAを時々再チェックする。
  • 現実に対して想定された仮定を再調査する。
  • 総ての新しい仮定を改訂し記録する。

以下のように分析のステップを述べた、FMECA様式が利用可能です。

  1. プロセス、システムの構成部分又はプロセス機能を特定する。
  2. 各々の部分について、可能なすべて故障モードを一覧にする。
  3. 各故障モードがプロセス、又はシステム全体の機能にどう影響するかを決める。
  4. 各々の故障モードに対して、可能な限りすべての原因を一覧にする。
  5. 1~10スケールまでの故障モードを評価する。以下の値を決定する判断に、経験と信頼性あるデータを使用する。
    P:各々の故障モード発生の確率(1=低い、10=高い)
    S:故障の重大性あるいは重要性(1=低い、10=高い)
    D:消費者によって製品あるいはサービスが使用される前に、故障が検出されることの困難性(1=易しい、10=難しい)

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
    P 発生の可能性は低い ほとんど確かに起こる
    S 重大ではないマイナーな問題 大故障、安全上の危険源
    D 容易に検出される 検出されそうにない

    順位付けした値をP×S×D=Cのように掛ける。Cは、各々の故障モードに対する重要性指数、又はリスク優先番号(RPN)と呼ばれるものである。これは各々のモードに対する相対的な優先順位を示す。各故障モードに対するC値を決定したとき、それに従って故障を順位付けする。このようにして、各項目に対して必要とされる活動は、順位付けされた重大性と利用可能な資源の見地から判断される。

  6. 必要とされる是正処置を様式上に簡潔に記入し、可能であれば責任部門か責任者、そして完成期日も記入する。