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ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール(第23回)

平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第23回

シックスシグマ

活用方法

要素 コメント
ISO 9001との関連 MR RM PR M&A Imp
活用範囲 あらゆるタイプの組織
製造とサービスの両方
組織
システムにおける変化の度合い
人々に関する変化の度合い
利益レベル
参加レベル 完全に推進母体として
成熟レベル 初心者、経験者、及び世界クラスの者
時間尺度 12ヶ月以上
投資レベル 高い、研修費用のため
実施方法 プログラム

背景

シックスシグマは世界中で使用され、多くの組織がその成功においてシックスシグマが果たした重要な役割を証言しています。シックスシグマを活用した有名な組織としては、Motorola、General Electric、Allied Signal(現在のHoneywell)、ABB、Lockheed Martin、Polaroid、Sony、Honda、American Express、Ford、Lear Corporation、及びSolectronがあります。

Motorolaは、シックスシグマの概念と目的を開発しました。Motorolaは、シックスシグマを「良さ指標-完全な仕事をするための工程能力」と定義付けしました。Motorolaはすべてのサービスを含めた製品を、5年以内に一桁(例えば10倍)改善することの目標を持っていました。この目標は改善率に焦点を当て、特に重要課題は単純に「より良い」では十分でなく、十分でありかつ迅速に「より良い」、ということに焦点を当てました。シックスシグマは、人間の努力を含むモトローラの資源を、プロセス変化の減少(製造、管理等すべてのプロセス変化の減少)に明確にその焦点を合わせています。

Motorolaは1987年にシックスシグマプログラムをスタートさせ、短期間の内に大きな成功を収めそうだということが明白になりました。Motorolaは1987年から1997年までの間に、1年当り約20%の利益増、140億米ドルの累積留保、年率21.3%の株価収益増、販売で5倍の成長を遂げました。またMotorolaは、1988年に最初のマルコム・ボルドリッジ合衆国品質賞の受賞者として記録されています。

原則

シックスシグマの基本戦略は、組織の工程能力を改善する訓練に関する方法論です。シックスシグマは、ばらつきの原因を明確にし、ばらつきを小さくする方法を決定する必要がありますが、それは非常に正確なデータ収集と統計的分析に基づきます。

シグマは工程能力に関連する統計的指標で、良品である製品/ユニット/部品を生産する能力です。シグマは統計の専門用語であり、標準偏差と呼ばれる工程ばらつき指標で、シックスシグマは欠陥が100万の機会(DPMO)当り3. 4回起こることを意味します。

「品質コスト」、より正確には「低品質コスト」(CPQ)は、工程の実績であるシグマレベルで測定することが可能です。シックスシグマの実績レベルは、販売の1%未満のCPQであることから世界クラスであると一般に考えられます。これを、以下のより低いシグマ実績レベルと比較してみてください。

シグマレベル CPQ範囲 DPMO割合(%)
3 66,807 25-40
4 6,210 15-25
5 233 5-15

シックスシグマの主要な目的は、不良低減にあります。しかし、不良低減の他にも利点は多くあり、顧客満足の改善、運用費用の削減、効率の向上等が含まれます。

アプローチ

シックスシグマの現状打破戦略は、「定義-測定-分析-改善-コントロール」(DMAIC)方法であり、それらは組織の重要事業プロセスに適用されます。

段階1. 定義

  • 顧客要求事項及びこれらの要求事項に対応するプロセスに関して、改善プログラムの範囲と目標を定義してくだい。改善対象となるプロセスは、インプット、アウトプット、管理及び資源で定義されます。

段階2. 測定

  • 現在のプロセスパフォーマンス(インプット、アウトプット、及び管理)を測定し、短期、長期の工程能力のシグマを計算してください。

段階3. 分析

  • パフォーマンスの現在値と期待値のギャップを明確にし、課題を優先順位付けし、そしてそれらの根本原因を明確にしてください。この段階ではさらに、プロセスアウトプット、製品又はサービスを、認知されているパフォーマンス基準に対して、ベンチマーキングすることも含まれます。組織が、既存プロセスを改善するか、又は再構築するかは、見つけられたパフォーマンスギャップに依存します。

段階4. 改善

  • 問題を解決するために改善策を考え出し、再発を防止してください、そうすれば期待されている財務目標、他のパフォーマンス目標が達成されます。組織は、パフォーマンス改善の目標を達成するために、品質基準、コスト基準及び時間基準に合う新しい方法を見つける必要があります。

段階5. 管理

  • 改善されたプロセスは、「得られたものを保持する」方法で実行に移してください。運用のための基準は、ISO 9001システムのように文書化されるでしょうし、パフォーマンスの基準は統計的工程管理(SPC)のような技術的手法を活用して確立されるでしょう。「ならし運転」期間後に、パフォーマンス向上が保持されているかどうかを確認するために、工程能力を再計算してください。もし更なるフォーマンスの欠陥がみられるなら、このサイクルを繰り返してください。

シックスシグマを適用するということは、効率的な方法(多くの場合統計的手法)をシステマティックに活用して、ばらつきを縮小し工程を改善することを意味します。シックスシグマは結果に焦点を当てますが、そこには市場パフォーマンス向上と、改善された財務最終結果に繋がる顧客関連事項を含みます。適切に形成され展開されたシックスシグマのプログラムは、ヨーロッパ優良賞、マルコム・ボルドリッジ合衆国品質賞のような結果を問う、様々な国際的な品質賞と緊密な整合性をもっていると言えます。

シックスシグマ文化及びインフラストラクチャの構築

シックスシグマが成功するには文化が重要ですが、その主な特徴は、パフォーマンス改善を支援しそれを資源とする、基盤の生成です。シックスシグマのプログラムは大きな投資に関係し、その結果、最終財務指標は良くなければなりません。成功するシックスシグマ文化には、次のような10の主な特徴があります。

  1. 決意あるリーダーシップ
  2. 戦略的提携
  3. 変化をリードする経営幹部
  4. 顧客重視と市場重視
  5. 財務最終利益
  6. プロセスアプローチ
  7. 評価への執念
  8. 連続的な革新
  9. 組織的な学習
  10. 連続的な強化