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ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール(第4回)

平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第4回

EFQM優良モデル

背景

欧州品質マネジメント財団(EFQM)は、世界におけるヨーロッパ組織の競争力を高める目的で、ヨーロッパ主要会社14人の最高経営者によって設立されました。目的は次の通りです。

  • 顧客満足、従業員満足、社会影響、事業成果の究極的優良性を求めて、ヨーロッパすべてにおいて、組織が改善活動に参加するように刺激し促進する。
  • ヨーロッパ組織の管理者に、世界的競争力達成の決め手となる、TQMプロセスの推進を支援する。

総合品質(Total Quality)のためのヨーロッパモデルは、1991年にEFQMによって始められ、1992年には最初の欧州品質賞(European Quality Award & European Quality Prizes)が授与されました。それ以来、モデルは発展して今日ではEFQM優良モデルとして知られています。

組織はなぜEFQM優良モデルを採用するのか、そしてそれはどんな利益をもたらすのか、に関する研究が行われてきました。Reed(1995年)は、公共部門組織はEFQM優良モデルを積極的に採用し、組織のパフォーマンスを測定し「最良の慣行」に繋げるべきであるとの結論を下しています。別の研究(ECforBE、1997年)は、自己評価法を始める主な理由には、次のようなものがあると提案しました。

  • 継続的改善の駆動力を提供する。
  • 組織の改善領域を明確にする。
  • 組織を通じて総合品質の認識を向上させる。
  • ライン管理/監督者のTQMへの参加を深めさせる。

1998年に、イギリス品質財団によって出版された調査レポート中のX Factorは、ビジネス優良組織がもたらす利益への理解向上に多大な貢献をしました。その研究は、受賞組織の申請文書の総評、4つの詳細な事例研究を含んでいると共に、ヨーロッパ、イギリス受賞組織は、自己目標に対するパフォーマンスがたとえ不十分であったとしても、財務的には3~5年間良好な傾向を強く示すことを実証しました。

原則

真に優良な組織とは、顧客、従業員、株主及び地域社会等、すべての利害関係者に顕著な結果をもたらし、それを保持する能力によって評価されます。真に優良な組織になるためには、次のような8つの基本概念に基づく、マネジメントアプローチを必要とします。

  1. 結果指向
  2. 顧客重視
  3. 目的に対するリーダーシップと継続性
  4. プロセスと事実によるマネジメント
  5. 人材開発と人々の参画
  6. 継続学習、革新と改善
  7. パートナーシップ開発
  8. 企業社会責任(CSR)

構造

EFQM優良モデルは、5つの達成手段の評価から成っています。

  1. リーダーシップ
  2. 方針と戦略
  3. 人々
  4. パートナーシップと資源
  5. プロセス

そして4つの結果に対する評価があります。

  1. 顧客に関する結果
  2. 人々に関する結果
  3. 社会に関する結果
  4. 主要なパフォーマンスに関する結果

適用

EFQM優良モデルへの適用は、ボルドリッジモデルのそれに類似しています。各々の基準は多くの部分に分類され、それらの部分は多くの裏づけとなる指導点を持っています。

しかし、EFQM優良モデルと、ボルドリッジモデルの2つのアプローチは、点数付けの仕方が大きく異なります。EFQM優良モデルは、RADARと呼ばれる「PDCA」アプローチを活用しています。

  • 結果
  • アプローチ
  • 展開
  • 評価と調査

EFQM優良モデルには、ボルドリッジモデルのように点数付けの要素に達成手段と結果の2つがありますが、ボルドリッジモデルと異なり、各々の基準内においては、基準部分はすべて同じ重みで点数付けされます。

  • 総合評点は9基準の各々に対して計算される。
  • 次に、合計1,000点のスコアになるよう各々の基準が重みづけされる。
  • 重みの50パーセントは達成手段の基準に、残りの50パーセントは結果に与えられる(ボルドリッジモデルについては、この比率は達成手段の基準を重くみて55:45パーセントである)

品質旅行のスタートに立つ組織は、1,000点の内250点以下かもしれませんが、欧州品質賞を獲得するような「世界クラス」の組織は、800点以上を得るでしょう。

EFQM優良モデルの主要な強さ

  • 有力事業の重視と事業成果の強調
  • バランススコアカード的パフォーマンスの追跡と結果
  • 「社会影響」概念を導入した最初の枠組み
  • 達成手段-結果の構造で因果関係の理解を促進
  • 全体的な事業優良モデル

関連

ISO 9001は、EFQM優良モデルと、ボルドリッジモデルに強い関連を持っているので、組織は、ISO 9001に登録された品質マニュアルを、両モデルの普遍化資料に活用できます。

例:EFQM優良モデルとISO 9001の関連
もし事業者がEFQM優良モデルへの自己評価をするならば、ISO 9001への自己宣言をすることができるでしょう。例えば、EFQM基準1にある「リーダーシップ」は、ISO 9001の5節「経営者の責任」と関連させることができます。もっと下のレベルでは、EFQM基準要素1aにある、「指導者達は使命、展望、価値、倫理を発展させ、優良という文化の担い手である」は、ISO 9001の5.1「経営者のコミットメント」と、5.3「品質方針」に関連します。

ISO 9001 とEFQM 優良モデルはどのように類似しているか
ISO 9001 要求事項
EFQM 優良モデル基準 経営者の責任 資源の運用管理 製品実現 測定、分析及び改善
リーダーシップ
方針と戦略
人々
パートナーシップと資源
プロセス
顧客に関する結果
人々に関する結果
社会に関する結果
主要なパフォーマンスに関する結果

例:ボルドリッジモデルとISO 9001の関連
もし事業者がマルコム・ボルドリッジ賞への申請書を作成しようとし、ボルドリッジカテゴリー3「顧客重視と市場重視」を表明するときには、ISO 9001品質マニュアルにおける5.2「顧客重視」の項を参照することができます。
これらの例は、ISO 9001が周知の品質モデルを支援すると共に、両モデルと両立するということを示しています。表は異なる2つの枠組みの間にある関連を定義し、両立性を示しています。

ISO 9001 とマルコムモデルはどのように類似しているか
ISO 9001 要求事項
マルコムモデル基準 経営者の責任 資源の運用管理 製品実現 測定、分析及び改善
リーダーシップ
戦略計画
顧客重視と市場重視
情報と分析
人材重視
プロセスマネジメント
事業結果