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ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール(第41回)

平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第41回

(5)品質保証体系図

「品質管理は品質保証を達成する手段である」とよく言われる。すなわち、品質保証が目的であり、品質管理はその手段である。品質保証は、製品又はサービスの品質を達成するための活動であるが、品質管理はQC手法並びに考え方を適用した活動であり、その結果製品品質のみならず、生産管理、販売管理、利益管理等の諸活動にも活用される。
企業が、自社の製品を消費者に満足される品質にするためには、企業の全組織、全部門が品質保証活動に参画しなければならない。明確にそれぞれの役割を定め、全員が高い品質意識をもたないと狙いの品質を確保することは困難である。つまり、品質保証活動は全社的(関係会社や資材・部品購入会社も含めて)考えのもとで体系的、組織的に推進する必要がある。

製品品質を達成するために必要な活動体系は、次のように区分される。

  • ① 製品の企画からユーザーに使用されるまでの各ステップにおける設計、製造、販売、品質管理などの各部門の役割を明確にした活動体系
    • 企業、事業部単位のもの
    • 製品単位のもの
  • ② 各部門が、それぞれの部門の仕事の進め方を明記した標準類

品質保証体系図は、活動体系を全社的見地よりまとめたもので、製品の開発から販売、アフターサービスに至るまでの各ステップにおける業務を各部門間に割りふったもので、通常フローチャートとして示さる。横軸に品質保証に関係する各部門および会議体や関連帳票類の記入欄を設け、縦軸に品質保証活動を進めていくためのPDCAのサイクルを業務の流れとして表現する。
品質保証体系図を制定する際に重要なことは、縦の流れの各ステップを進めていくうえで、一つのステップから次のステップに移行する際の判定基準を明確にしておくことである。部門間の責任の所在をあいまいにしておくと、組織的な活動がすすまない。ステップの移行判定者を決めておくことが大切である。この体系図を作成することの利点は、次のようなものである。

  • ① 各部門の役割を明らかにすることによって、組織的な活動を効率よく、かつ効果的に進めることができる。
  • ② トラブルが発生したとき、トラブルの責任部門及び関係する部署が明らかになることから、迅速な対応が可能となる。
  • ③ 内部監査を実施する時の道しるべになる。
  • ④ 取引先やユーザーに対して自社の品質保証活動の進め方や特徴をわかりやすく明示することができる。
  • ⑤ 部門間の役割、認識に問題が生じた時の整理に役立てることができる。

(6)フールプルーフ(fool proof)

「バカよけ」或いは「ポカよけ」と呼ばれてきたミス防止の手法である。うっかりミスや,ちょっとした勘違いで起きるミスを防止する対応策を総称して呼んでいる。日本語の「バカよけ」が英語になって,フールプルーフとなった。foolは「ばか」で、proof は「耐える」ということで、ミスをしても大丈夫な仕組みを意味している。

トヨタ生産方式では、カンバン、アンドンと共にこのフールプルーフを1960年代から推進してきた。例えば、トヨタでは次のような工夫をしていた。

  • ① 冶具が正しい品物形状のみを取り付ける仕組み
  • ② 品物に不具合があれば、機械が加工を始めない仕組み
  • ③ 作業ミスがあれば、機械が加工を始めない仕組み
  • ④ 作業ミス、動作ミスを自然に修正して、加工を進める仕組み
  • ⑤ 前工程の不具合を後工程で調べて、不良を止める仕組み
  • ⑥ 作業忘れがあれば、つぎの工程が始まらない仕組み

人間は必ずミスをするものである。完全を期してもちょっとした気の緩みからミスが生じる。大量生産の連続ラインでは、このちょっとした気の緩みがライン全体をストップさせることになり、大きな損失に繋がることになる。
フールプルーフとは、ミスが発生しても重大な結果に至らないような工程を作り上げることでもある。フールプルーフの方法にはトヨタの例に見るように様々なものがあるが、大きく次の2つに大別される。

  • A.発生を防止する。
  • B.波及を防止する。

Aの例としては、形状を工夫して逆向き、表裏反対では絶対に組み付かないようにする等のトヨタの例では①である。Bの例としては、電気回路のインターロックや、必ず安全側に働く信号回路等がある。トヨタの例では②~⑥である。