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新・世界標準ISOマネジメント(第17回)

平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第17回

2.3.3 文書化の推進

  • 2.3.1節の特徴で述べたように、「手順」がISO 9000シリーズ規格の大きな特徴であるが、手順を確立するのに最も有用なものは文書である。ISO 9001:2000規格は、「品質システム-保証品質モデル」から「品質マネジメントシステム-要求事項」へとその名称を変え、組織の品質に関する経営全般を扱うことになった。それに伴って2.3.1節の“⑧文書化の要求を軽減している”ような特徴を持つことになった。
  • しかし、文書化への要求を軽減したのは本質的なことからではなく、規格の利用者を広く捉えたからだと思われる。即ち、ISO 9001規格が多くの組織に活用されるようになった結果、規格が一律に文書化を要求することは現実的でなくなってきた。中小企業と大企業とでは当然文書化する対象は異なってくる。
  • ISO 9001:2000規格序文0.1一般には、次のような一節がある。“・・・品質マネジメントシステムの構造の均一化又は文書の画一化が、この規格の意図ではない。”
  • 何を対象に文書化するのかは組織に固有の問題であるが、ISO 9001:2000規格には次のように書かれている。
  • 4.2.1 一般
    • 参考2 品質マネジメントシステムの文書化の程度は、次の理由から組織にとって異なることがある。
    • a) 組織の規模及び活動の種類
    • b) プロセス及びそれらの相互作用の複雑さ
    • c) 要員の力量
    • なお、ISO 9000:2000規格「2.7文書化」には「2.7.1文書化の価値」、「2.7.2品質マネジメントシステムで用いられる文書の種類」として次のようなガイドがあり、参考になる。
  • 2.7.1文書化の価値
    • 文書化によって、意図を伝達し、行動に一貫性をもたせることが可能になる。その利用は次の事項に役立つ。
    • a) 顧客要求事項への適合の達成及び品質改善
    • b) 適切な教育・訓練の実施
    • c) 再現性及びトレーサビリティ
    • d) 客観的な証拠の提供
    • e) 品質マネジメントシステムの有効性及び適切性が継続していることの評価文書の作成は、それ自体が目的ではなく、価値を付加する活動であることが望ましい。
  • 2.7.2品質マネジメントシステムで用いられる文書の種類(一部整理、修正)
    • (1) 品質マニュアル
    • 組織の品質マネジメントシステムに関する一貫した情報を、組織の内外に提供する文書。
    • (2) 品質計画書
    • 品質マネジメントシステムが特定の製品、プロジェクト又は契約に、どのように適用されるかを記述した文書。
    • (3) 手順書
    • 活動及びプロセスを首尾一貫して実行する方法に関する情報を提供する文書。手順書、作業指示書等
    • (4) 記録
    • 実行された活動又は達成された結果の客観的証拠を提供する文書。