ISO情報

新・世界標準ISOマネジメント(第26回)

平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第26回

  • ⑥ 危険源に対する対策(ILOガイドライン3.10)、防止対策及び管理対策
  • (ILOガイドライン3.10.1)
  • ILOガイドラインは、危険源及びリスクを管理するために、予防処置及び防護処置の実施を推奨している。これらは、3.10.1(a)危険源及びリスクの除去から3.10.1(d)個人用保護具の支給まで、実施の優先順位を列挙している。OHSASは、「リスクマネジメントのための手段としては、危険源除去の原理を実施可能な限り反映することが望ましく、次善の策としてリスクの低減(危害の発生する可能性の低減または傷害や損害の潜在的重大性の低減)を講じ、最後の手段として人身保護具(PPE)の採用を考える。」として、予防処置及び防護処置をそれほど決定的なものとしていない。
  • また、OHSASはこの中で、“実施可能な”としているところに注意が必要である。OHSASは、危険源の特定、リスクアセスメント及びリスク管理について実践的なことに重きを置いている。
  • ⑦ 調達(ILOガイドライン3.10.4)
  • ILOガイドラインは、組織の安全衛生要求事項を、購入仕様書及び賃貸仕様書に取り入れることが望ましいと強調している。OHSASはこうした要求事項を供給業者に周知することを求めてはいるが、その方法は規定していない。ILOガイドラインは調達前に国内法令及び事業状のOSH要求事項を確認することも規定している。OHSASでは、リスクアセスメントの過程で結果的にこれらのことを確認すべきとしている。
  • ⑧契約(ILOガイドライン3.10.5)
  • ILOガイドラインは、組織の安全衛生要求事項が、請負業者にも適用されるようなステップを定めている(また、これらの要求事項を確実に適用するために必要な処置の要約を提供している)。OHSASはそのことを暗黙の内に示しているに過ぎない。
  • ⑨ 作業に関連した傷害、健康傷害、疾病及び事故並びに安全衛生パフォーマンスへの影響に関する調査(ILOガイドライン3.12)
  • ILOガイドラインはOHSAS 18001 4.5.2と異なり、是正又は予防処置をその実施の前に、リスクアセスメントプロセスを通じて見直すことを求めていない。
  • ⑩ 監査(ILOガイドライン3.13)
  • ILOガイドラインは、監査者の選任について協議することを推奨している。OHSASは監査者が公平で、客観的であることを求めているのみである。
  • ⑪ 継続的改善(ILOガイドライン3.16)
  • ILOガイドラインは、これを独立した項とし、継続的な改善を達成するために考慮するべき処置を詳述している。OHSASには、規格全体で述べているとして特別に対応する節がない。
  • 1)OHSMS規格のISO規格化
  • OHSMS規格のISO化は過去2度にわたり検討の俎上に乗ったが否決された。今後もISO規格化が否定され続けられるのかといえば、そうとは言い切れない。OHSMS規格のISO化を望むニーズが高まったと判断したISOメンバーボディが、ISO規格化の提案をする可能性は高いと思う。しかし、ISO規格化にはTC(技術委員会)設置に関する賛否の投票が必要で、前述のように少なくともISOメンバーボディによる2/3以上の賛成票がなくてはならない。もしそうなれば、審査登録用規格として国際的に広く使われているOHSAS 18001が参考規格として考慮されるに違いない。

3.2.4 ILOの労働安全衛生指針

  • 1996年9月、ISOがジュネーブで各国の利害関係者を集めて開催したワークショップでは、「ILOは政労使の三者構成をとっているため、ISOよりも効果的なOSHMS規格を開発しうる団体である。」とされた。これを受けて、ILOはOSHMS規格の開発の検討を開始した。
  • 1998年、ILOは国際労働衛生協会(IOHA)と共同で、既存のOSHMSに関するガイドライン、基準等の資料のレビューを行い、これをもとにOSHMSに関するILOガイドラインの基本的な考えの取り纏めをした。
  • 1999年6月、ILOは総会において、「OSHMSと安全文化に関する専門家会合」を開催する2000~2001年予算を決定した。
  • 2001年6月、ILOの理事会は以上の活動の成果として、専門家会合において確定したOSHMSに係わるガイドライン(以下ILOガイドラインという)を最終的に承認した。
  • このILOガイドラインは、国レベルのガイドラインと事業場レベルのガイドラインから構成されているが、法的な拘束力を持つものではなく、国の法令や基準に置き換わることを意図したものでもない。さらにその適用において認証を求めるものでない。
  • なお、厚生労働省は平成13年7月3日付け事務連絡の中で、以下のような表明をした。
  • 厚生労働省表明
  • 「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」(平成11年労働省告示第53号、以下「厚生労働省指針」という)は、ILOガイドラインに合致したものになっている。
  • 別表 ILOガイドライン(事業場レベル)と厚生労働省指針との関係(略)