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新・世界標準ISOマネジメント(第33回)

平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第33回

  • 3)HACCPの国際的な動き
  • 国際機関においてもHACCPシステムに対する関心は高くなり、ICMSF(国際食品微生物規格委員会)では検討委員会を設置して、1980 年にはWHO(世界保健機関)と合同で「食品衛生におけるHACCP システム」と題する報告書がまとめられた。この報告書では、HACCPシステムが将来の食品の微生物管理の方向を示すものであると勧告されている。
  • 1988 年には、ICMSFからWHOに対して国際規格にHACCP を導入するよう勧告がなされ、このシステム実施のための基本と応用が一冊の本にまとめられた。
  • 1993年には、国連のFAO(食糧農業機関)とWHOの合同食品規格委員会(Codex委員会)により、米国のNACMCF の報告書と基本的に同一内容の「HACCPシステムの適用に関するガイドライン」が採択された。これにより、国際的に統一されたHACCP システムの基本的概念が確立され、それを食品の衛生管理に導入するという考え方が定着した。この「ガイドライン」は、1997年に改訂され、「検証」の実施等について強化されている。
  • なお、この「ガイドライン」は「食品衛生の一般原則」の付属文書として公表されているが、「食品衛生の一般原則」では、食品の生産から製造加工、流通、消費までのHACCP システムを実施する前提となる衛生管理事項が規定されている。食品の一次生産である農林水畜産の分野では、環境への配慮、衛生面での配慮、適正規範の遵守、製造加工の分野では、施設設備の構造、保守管理、工程の管理、従業員個人の衛生、適切なラベル、従事者への教育・訓練等が規定されている。
  • EUや米国に輸出される水産食品を製造・加工する施設については、相手国の規則に基づいた施設基準の適用、衛生管理の実施が必要とされており、その衛生管理手法としてHACCPシステムの導入が必須となっている。
  • 我が国では、欧州委員会、または米国と二国間協議が行われ、実施要領に基づいて、「対EU輸出水産食品取扱い施設」、「対米国輸出水産食品取扱い施設」の認定が行われている。これらの認定施設に対しては、国の担当官及び各自治体の指名食品衛生監視員による定期的な監視が行われる。現在までに、「対EU輸出水産食品取扱い施設」については12 施設(保管施設を含む)、「対米国輸出水産食品取扱い施設」については73施設が認定されている。
  • また、米国に輸出される牛肉の処理施設についても、米国政府の定める施設基準への適合、HACCPシステムによる衛生管理の実施が必要となっており、これまでに3施設が国の認定を受けている。認定施設に対しては、国の担当官による監視と米国担当官による査察が定期的に行われる。(平成14年3月現在)
  • 4)HACCPシステムの構成
  • HACCPは危害分析により危害を特定し、その危害を防止するための重要管理点を決め、その管理点を集中的に管理して食品の安全を確保するシステムであるが、HACCPシステムはこれだけで構成されているものではない。
  • HACCPの構築には、その前提となるGMP(Good Manufacturing Practice:適正製造基準)、GHP(Good Hygiene Practice:適正衛生基準)又はSSOP(Sanitation Standard Operation Procedure:衛生標準作業手順)が遵守されていることが前提条件になっている。
  • HACCPの各手順に重点を置くといっても、その基礎となるGMP、GHP/SSOPを疎かにしてはならない。日本でも、厚生労働省より提示されている弁当及び惣菜の衛生規範等はGMP、GHP/SSOPをベースとしている。
  • 厚生省提示の衛生規範の例
    • 1979年:弁当及び惣菜の衛生規範 1981年:漬物の衛生規範 1983年:洋菓子の衛生規範
    • 1987年:セントラルキッチン・カミサリーシステムの衛生規範
    • 1991年:生麺類の衛生規範
    • 1997年:大量調理施設衛生管理マニュアル