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内部監査の実践(その21)

「設計審査標準 KDR105」を対象にした内部監査の実践について話しています。
前回(20号)は、誌上での「ナラティブ内部監査」を実践してみましたが、どうでしたか。「新しい物語作り」を「起承転結」のストーリに載せて実践することを説明しました。

前回述べた「ナラティブ内部監査」の5ステップをここで説明します。

  • 第1ステップ : 今行っている内部監査をレビューする。
  • 第2ステップ : どのような内部監査を行いたいか、行うべきかを組織内でコンセンサスを得る。
  • 第3ステップ : 内部監査員、被監査者の共同作業の基盤を作る。
  • 第4ステップ : 発見された問題(不適合、観察事項、気づき事項)などを解決する。
  • 第5ステップ : 問題解決したことを水平展開、歯止めして改善する。さらに、改善したことを革新へのインプットにする。

それぞれのステップの説明は次号以降にいたしますが、20号から説明している「新しい物語作り」は、第3ステップの中の作業ということになります。
では、次に<指摘事項2>(19号参照)について実施してみましょう。

<指摘事項2>
 DR委員会で抽出された課題について、設計部において「以後の設計及び製造工程に影響を及ばさないように適切な時期までに評価を完了する」と決められているが、適切な時期が何時であるか明確でない。
<根拠となる規定> 
第10条:DR委員会は検討課題抽出の場とする。課題抽出後の次の検討は設計部が行い効率的な運用を図る。

  • ・指摘事項は正しいか
  • ・設計変更は必要か
  • ・技術的に妥当か
  • ② 指摘事項については、以後の設計及び製造工程に影響を及ぼさないように適切な時期までに評価を完了する。

ここでもナラティブ内部監査の核心である「新しい物語作り」(起承転結)に沿って指摘事項を考えていくことにします。

【起】指摘事項を書くに至った経過について書く。

  • ・内部監査員をした職場(設計部)、内部監査で観察したこと、その中で「おかしいと思った」こと(観察事項)。
  • ・観察事項が業務の規定に沿って行われているかどうかについて検討したこと。
  • ・その結果、「設計審査標準 KDR105第10条」に沿っていないことが判明したこと。第10条のどこの記述に反しているのか。→ ②「適切な時期までに評価を完了する」となっているが、適切な時期が決められていないので完了したかどうか確認できない。
  • (議論)
  • 被監査者:DR検討会の(検討することになった)課題は、それぞれ課題構成要素、複雑性、難易度などによって課題評価を終らせるまでの時間はそれぞれ違うので、完了するまでの時期をあらかじめ規定することはできない。課題評価の時間は一律ではないという理由から、第10条では完了する時期を「適切な時期」と規定している。第10条には、時期を決めなければならないということは定められていない。実際に、設計者は適切な時期に評価を完了しているので、現状を問題だとは思わない。
  • 内部監査員:完了時期を目標として決めておき、その日が来たら責任者がチェックするような仕組みがあると良いのではないか。
  • 被監査者:指摘された課題を担当する設計者が責任をもって検討、評価しているので、設計者をもっと信用してほしい。組織が完了時期を押し付けることは、設計者の「自主的なやりがいを失わさせる」ことにつながる危険性が強い。
  • 内部監査員:確かに設計者のやりがい、やろうとする気持ちは大切である。しかし、マネジメントシステムでは、信用するとか、しないとかではなく、仕組みを作っておくことを目標にしていることはお互い共有しておきたいと思う。DR委員会で指摘された課題の評価が完了したかというチェックはしているか。
  • 被監査者:しているはずである。
  • 内部監査員:今までのDR議事録を見させてくれませんか。

(つづく)