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内部監査の実践(その22)

「設計審査標準 KDR105」を対象にした内部監査の実践について話しています。
前回(21号)は、「新しい物語作り」の「起」のストーリーを掲載しました。今回は「承」です。

その前に

前回述べた「ナラティブ内部監査」5ステップのうちから第1ステップをここで説明します。
【第1ステップ: 今行っている内部監査をレビューする】
文字どおりいま行っている内部監査について見直しを行います。見直しのポイントは次の通りです。

  • (1)過去3年くらいの内部監査の記録を確認する。
  • (2)過去3年間に発見された不適合、観察事項、気づき事項などのフォローアップの状態を調べる。
  • (3)過去3年の内部監査のフォローアップの結果から、内部監査が組織パフォーマンスに与えた影響を把握する。
  • (4)内部監査責任者は内部監査が組織パフォーマンスに与えた影響を評価し、今後のアクションを考える。

(3)について説明します。内部監査の目的は2つあります。
共通テキスト(附属書SL)9.2内部監査に関しての次の要求事項があります。「a)次の事項に適合している。 -XXXマネジメントシステムに関して,組織自体が規定した要求事項
   -この規格の要求事項
b)有効に実施され,維持されている。」

ナラティブ内部監査は、「b) 有効に実施され,維持されている」ことを目的にしています。
上述の(3)で確認したいことは、有効に実施され,維持されている結果、すなわち組織のパフォーマンスに効果的な影響を与えたかどうかということです。これまでの内部監査は、組織パフォーマンスに効果的な影響を与えていた、与えていなかった、それぞれの評価結果をもって (4) に進みます。(4)では、内部監査責任者が内部監査が組織パフォーマンスに与えた影響の評価を確認して、今後のアクションを考えることになります。

「ナラティブ内部監査」5ステップのうちの第2ステップの説明は次号(23号)でいたします。
では、前回の<指摘事項2>(19号参照)の【起】に続く【承】の物語を作ってみましょう。物語を作るにあたっては、内部監査員、被監査者、内部監査リーダー、被監査職場責任者をメンバーとするチームを作ります。

【承】今までどうであったかを書く。今までの議事録から「DR委員会における指摘事項が設計担当者によって適切な時期までに調査が完了していたか」どうかを書く。

  • ・過去3年のDR(設計審査)委員会の議事録を調べる。
  • ―指摘事項(a)
  • ―「適切な時期までに評価を完了する」しているか(b)
  • ―どんなアクションを取ったか(c)
  • ―後工程への影響はどうであったか(d)

(議論)
内部監査員:B事業本部の機械部品1,2,3について、過去3年間のDR検討会の議事録を見させていただきました。指摘件数は全部で26件ありましたが、機械部品1については14件で、そのうち単純な設計ミスと思える指摘事項が11件で、これらは調査の必要はなく設計を修正したと思われます。残りの3件は「設計強度」、「加工精度」、「その他」に関するもので調査が必要と議事録に書かれていました。
機械部品2については、全部で10件、その内単純な設計修正が必要なものが9件、調査が必要なものが1件でした。調査必要事項は「加工手順」に関するものでした。
最後に、機械部品3についてですが、全部で2件でした。2件とも調査が必要とされていました。調査事項は「調達材料」、「マーケットニーズ」に関するものでした。議事録にはいずれも「適切な時期までに調査を完了してDR委員会へ報告する」となっていました。

製品 調査事項件数 調査事項内容
機械部品1 「設計強度」、「加工精度」、「その他」
機械部品2 「加工手順」
機械部品3 「調達材料」、「マーケットニーズ」

被監査者:DR検討会の過去の議事録を探し出すのに苦労しましたが、議事録があって良かったと思います。製品3点(機械部品1,2,3)に関しての指摘事項を調べていただきありがとうございます。

内部監査員:DRにおける指摘事項は把握できたのですが、調査が必要とされた6件について、次の事項を調査してください。

  • ① 調査担当者
  • ② 調査事項内容の詳細
  • ③ 調査完了時期
  • ④ 調査結果

被監査者:当時の設計者に①~④を確認しましたが、昨年、一昨年のものまでしか分かりませんでした。確認できなかったものも、指摘された課題を担当する設計者が責任をもって検討、評価しているはずです。
内部監査リーダー:DR委員会へはその後の報告はされていないのですか。DR委員会で指摘された課題の評価が完了したかというチェックはどのようにしているのですか。

被監査職場責任者:今回問題になっているDR2 での指摘事項は、DR3(設計図書承認)で解決されていることが報告されています。
内部監査リーダー:DR3の議事録を見させてくれませんか。
被監査職場責任者:我々も今回調査して問題視している所ですが、DR2での指摘事項はDR3で報告されていません。指摘された6件についてはノンオフィシャル検討会で解決されています。
(つづく)