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内部監査の実践(その24)

「設計審査標準 KDR105」を対象にした内部監査の実践について話をしています。
前回(23号)は、「新しい物語作りである「起承転結」」の「転」のストーリを掲載しました。
今回は「結」です。

その前に前回述べた「ナラティブ内部監査」の5ステップをここで説明します。

  • 第1ステップ : 今行っている内部監査をレビューする。
  • 第2ステップ : どのような内部監査を行いたいか、行うべきかを組織内でコンセンサスを得る。
  • 第3ステップ : 内部監査員、被監査者の共同作業の基盤を作る。
  • 第4ステップ : 発見された問題(不適合、観察事項、気づき事項)などを解決する。
  • 第5ステップ : 問題解決したことを水平展開、歯止めして改善する。さらに、改善したことを革新へのインプットにする。

今回は第3ステップの説明をします。
テクノファではキャリアコンサルタント養成講座を16年間開催しています。このキャリアコンサルタント養成講座には内部監査員と被監査者との間の共同作業基盤を作るヒントがたくさん含まれています。それらは次の6つです。 

  1. コミュニケーション
  2. 自己理解
  3. 他者理解
  4. よく聴く
  5. よく伝える(アサーション)
  6. 個人と組織の共生

https://www.technofer.co.jp/tsubob/index.php/2021/06/09/vol-312/
https://www.technofer.co.jp/tsubob/index.php/2021/08/11/vol-321/

詳しくは上のリンク先を参照してください。

<・第3ステップ : 内部監査員、被監査者の共同作業の基盤を作る>
会話をする場面では、相互が信頼して話す気になることがまず大切です。そのためには、まずは相互の間に信頼関係を構築することが必要です。内部監査で監査員と被監査者とが信頼関係を構築することが良い、いやすべきであるという認識を監査員と被監査者が持つことが期待されることですが、そのために用意しなければならないことがいろいろあります。
まず、内部監査の目的が被監査者にとって受け入れられることが必要です。自分の仕事を批判するような雰囲気があれば相互の信頼性は構築できないでしょう。目的が組織の改善にあり、そのためには内部監査員と被監査者が協力してネタを探し、課題を解決するという共通の問題意識を持つと相互の信頼は構築しやすくなります。
組織全体に内部監査の位置づけを前述のように明確にするとラポールは構築しやすくなるでしょう。
内部監査員は、相手の言わんとしていることを正確に理解しようとするには、うなずいたり、あいづちを打ったり、エコーイング、パラフレージングなどを応用すると良いと言われています。
うなずいたり、あいづちを打ったりしたことぐらいで、相互信頼性が本当に高まるのかと懐疑的な方も多いと思いますが、実践してみるとその効果が分かると思います。
日常の会話の中で、私的な会話はそうではないかもしれませんが、仕事の上ではあまりうなずいたり、あいづちを打ったりしていないことに気づく方が多いのではないでしょうか。
ましてや、エコーイング、パラフレージングなどを意識している方はそう多くはないと思います。ここで、エコーイング、パラフレージングの説明をしますと、エコーイングとは相手の言葉の一部をそのまま自分の返事の中に入れ込むことを言います。パラフレージングは、相手の言葉の一部を言い換えて自分の返事の中に入れ込むことを言います。
前者の効用は、相手は自分の発した言葉を相手が言ってくれたことで無条件に好印象を持つというところにあります。後者の効用な、相手に私はこう受け止めましたよ、というメッセージを与えることが出来るというところにあります。受け止め方が合っていれば、相手は喜ぶでしょうし、そうでなければ相手は「それは違う、こうこうだ・・・」と言って、次の話題へと2人の会話が進んでいく効用があります。

それでは<指摘事項2>の「結」を実施してみましょう。
【結】においては、転で議論したことを計画にし、実行し、歯止めをします。
転では次のようなことが議論されました。

  1. 「設計審査標準 KDR105 第10条②」には、設計審査で指摘されたことを評価し、適切な時期までに評価を完了する、ことしか規定されていない。
    評価した後、対応する必要がある設計変更、設計改善を行うことも規定し、それらのことを記録にすることを追加する。
    その際の記録には次のことを含めるとよい。
    • ―指摘事項を評価した記録
    • ―設計変更、設計改善に関する記録
  2. 設計審査に出席する人は、設計対象である製品及びサービスに関しての知識とスキルを十分に持っていることが必要である。
    「設計審査標準 KDR105第8条」では、「必要な専門知識・経験を有する」基準について触れているが、その基準が作成されていなかったので、基準を作成する。
  3. 上記1.2.に基づいて設計審査標準 KDR105の改定案を作成する。例えば以下のようなものである。
  4. <設計審査標準 KDR105 改定案>
    (委員)
    第8条 DR委員長は各部門から、必要な専門知識・経験を有する適切な委員を選出・任命するものとする。必要な場合、社外からの委員を選出・任命する。
    「必要な専門知識・経験を有する」基準は〇〇に定める。

    (技術的評価)
    第10条 DR委員会は検討課題抽出の場とする。課題抽出後の次の検討は設計部が行い効率的な運用を図る。

    • 指摘事項は正しいか
    • 設計変更は必要か
    • 技術的に妥当か

    ② 指摘事項については、以後の設計及び製造工程に影響を及ぼさないように適切な時期までに評価を完了する。評価を完了する時期は原則として2週間とし、2週間たっても評価が終わらない場合はなお2週間延期する。その間の出来事は記録に残す。記録に残す項目は以下のとおりとする。

    • ―指摘事項を評価した記録
    • ―設計変更、設計改善に関する記録
  5. <設計審査標準 KDR105 改定案>をいつまでに、誰が作成し、組織として定めるかを決める。
  6. <設計審査標準 KDR105 改定案>の周知徹底の方法について決める。
    • ―設計部内への説明会
    • ―設計審査参加部門への説明
  7. <設計審査標準 KDR105 改定案>の有効性評価の方法を決める。
    • ―いつ行うか
    • ―誰が行うか
    • ―どのように行うか

(以上)