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ナラティブ内部監査の実践例2 (その15)

ナラティブ内部監査の実践例2として、「困りごと検出方式」の説明をしています。

最初は、被監査者にとっての困りごとの一般的な例を掲げてみましたが、具体的な事例の方が分かり易いので、その後から、一つひとつ実践に際してのポイントについて話しを進めています。

4.一つひとつ実践に際してのポイント
(12) 安全柵設置が遅れている
この困りごとは、今までの困りごととは少し異なります。今までと異なるという意味は、この困りごとは「安全に関してのこと」だということです。仕事をしているとつい安全については忘れがちになります。仕事をする上で安全はその基本であり、事故を起こすと、たとえその結果が微小災害であっても、仕事の推進上の障害になります。その意味で労働安全衛生は業務に必須なことです。

  • ポイント1:安全の位置づけを明確にする
  • 日常の職場の状況を観察すると与えられた仕事の達成が第一にあり、それに付属するものとして、安全に仕事をする、さらに環境保全に配慮して仕事をするという位置づけになっていることが多い。品質の良い製品・サービスを提供する際に、安全と環境を意識する仕組みを明確にすべきである。
  • ポイント2:結果と同時に経過も大切である
  • 組織は安全を組穂するために仕事をしているのではないし、環境保全のために仕事をしているわけではない。あくまでの顧客に価値を与えるために仕事をしているのである。
    我国の戦後の発展を見ても、まずは品質の良いものをお客様に届けると言う仕事の結果が評価の対象であった。お客様のニーズと期待に応えるという結果を達成することに第一義的な価値を置いていた。しかし、近年結果を達成する過程も非常に重要であるという概念が当たり前になった。ISOマネジメントシステムでは、システムアプローチ、あるいはプロセスアプローチという概念を包含している。
  • ポイント3:CSR、ESG、SDGsなどの社会責任
  • 今では、どんな組織でも仕事の途中で事故を起こしたり、はたまた環境保全へ配慮をしなかったりすれば、社会から指弾される。昨今のCSR、ESG、SDGsというような非財務指標が重要になってきていることから、品質、安全、環境(あるいは情報セキュリティ)などの価値を同列に置いた仕事の進め方をすることが重要である。
  • ポイント4:利害関係者の浸透
  • ISOマネジメントシステムの概念には、「利害関係者」という従来の日本文化にはなじみが薄かった要素が入っている。利害関係者の第一は顧客と考えられているが、二番目には従業員が位置するとする組織が多い。しかし、一番目とか二番目とかいう事ではなく、顧客と従業員の利害は同列と言っても過言ではない。
    今回の「安全柵設置が遅れている」という困りごとは、顧客からクレームをもらったと同様な問題意識で早速に処置をすべきである。

(つづく)