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2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方(第11回)

平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第11回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.経営者の責任

5.1 経営者のコミットメント

  • (1) トップマネジメントは、品質マネジメントシステムの構築及び実施、並びにその有効性を継続的に改善することに対するコミットメントの証拠を次の事項によって示す。
  • a) 法令・規制要求事項を満たすことは当然のこととして、顧客要求事項を満たすことの重要性を組織内に周知する。
  • b) 品質方針を設定する
  • c) 品質目標が設定されていることを確実にする。
  • d) マネジメントレビューを実施する。
  • e) 資源が使用できることを確実にする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • a)トップは,法令・規制要求事項,顧客要求事項を満たすことの重要性をどんなことをして組織内に周知するのかを記述する。法令・規制要求事項は,7.2.1項のc),7.3.2項のb)に具体的な要求がされている。顧客要求事項は,5.2項,7.2.1項のa),8.2.1項,8.4項に具体的な要求がされている。
    • b)トップは,品質方針設定にどんなことをするか記述する。5.3項に具体的な要求がされている。
    • c)トップは,品質目標設定にどんなことをするか記述する。5.4.1項に具体的な要求がされている
    • d)トップは,マネジメントレビュー実施にどんなことをするか記述する。5.6項に具体的な要求がされている
    • e)トップは,資源の利用にどんなことをするか記述する。6.1項に具体的な要求がされている

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.2 顧客重視

    (1) 顧客満足の向上を目指して、トップマネジメントは:

    • 顧客要求事項が決定されていることを確実にすること
    • また、満たされていることを確実にすること
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • トップは,顧客要求事項を決定し,満足させることを確実にするために,どんなことをするのか記述する。
    • 7.2.1項のa),8.2.1項,8.4項に具体的な要求がされている。

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.3 品質方針

  • (1) トップマネジメントは品質方針について次の事項を確実にすること。
    • a)組織の目的に対して適切である。
    • b)・要求事項への適合に対するコミットメントを含む。
    •  ・品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善に対するコミットメントを含む。
    • c)品質目標の設定およびレビューのための枠組みを与える。
    • d)組織全体に伝達され,理解される。
    • e)適切性の持続のためにレビューする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • トップは,品質方針について,a)~e)を確実にするためにはどんなことをするのか記述する。
    • a)~c)については,品質方針の中に入れること。
    • a)組織の目的(purpose)については,ISO 9004:2000規格の0.1Generalの2段落目を参照のこと。
    • c)枠組み(framework)とは,骨組み,構造,構成のことをいう。
    • d),e)については,品質方針をこのように扱うことなので,品質方針の中に書かない.何を行うのかを記述する。

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.4 計画

5.4.1 品質目標

  • (1)・トップマネジメントは,組織内のそれぞれの部門及び階層で品質目標が設定されていることを確実にする。
  •   ・その品質目標には,製品要求の事項を満たすために必要なものがあれば含めること。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • トップは,品質目標の設定について,確実にするためにはどんなことをするのか記述する。
    • 品質目標に,製品要求事項を満たすために必要なものを含めることに関しては,特に記述しなくてもよい。

  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (2)・品質目標は,その達成度が判定可能である。
  •   ・品質目標は,品質方針との整合性がとれている。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 品質目標の達成度が判定可能であることと,品質方針との整合性が取れていることは,特に記述せずとも実際にそうなっていればよい。しかし,活動した結果の状態を示しているので,規格要求事項の表現をそのまま使ってもよい。

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.4.2 品質マネジメントシステムの計画

  • (1)トップマネジメントは,次の事項を確実にする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • a)トップは,品質目標を満たすため4.1項の規定を満たすための計画の策定について,確実にするためにはどんなことをするのか記述する。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • a) 品質目標及び4.1に規定する要求事項を満たすために,品質マネジメントシステムの計画が策定される。
  • b) 品質マネジメントシステムの変更が計画され,実施される場合には,品質マネジメントシステムが“完全に整っている状態”(integrity)を維持している。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • b)  QMSの完整性を維持するには,どんなことを行うのか書く。「変更した部分に関連するプロセス(4.1項で相互の際係を決めているのでわかっているはず)への影響の有無を調べ,影響が及ぶプロセスすべてについて,変更部分と整合がとれるように変更することを計画し,実施することによって完整性を維持するといったことを書くとよい。

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.5 責任,権限及びコミュニケーション

5.5.1 責任及び権限

  • (1)・トップマネジメントは,責任及び権限が定められることを確実にする。
  •   ・上記内容が組織全体に周知されていることを確実にする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • トップは,責任及び権限などを決め,組織全体に周知することについて,確実にするためにはどんなことをするのか記述する。
    • 周知されていることを確実にするために,内部監査を活用するのも1つの方法である。

5.5.2 管理責任者

  • (1) トップマネジメントは,管理層の中から管理責任者を任命する.管理責任者は与えられている他の責任とかかわりなく次に示す責任及び権限を持つ。
  • a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセスの確立,実施及び維持を確実にする。
  • b) 品質マネジメントシステムの実施状況及び改善の必要性の有無についてトップマネジメントに報告する。
  • c) 組織全体にわたって,顧客要求事項に対する認識を高めることを確実にする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • トップが任命した管理責任者名を記述する.品質マニュアル以外に任命書のようなものが出されていれば,それでもよい。
    • a),c)については,どんなことを実施すれば確実になるのか記述する。
    • b)については,特に記述せずとも実際にそうなっていればよい.しかし,明確にするために書いてもよい。

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.5.3 内部コミュニケーション

  • (1) トップマネジメントは,下記の内容を確実にする。
    • ・組織内にコミュニケーションのために適切なプロセスが確立される。
    • ・品質マネジメントシステムの有効性に関して情報交換が行われる。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • トップは,内部コミュニケーションのプロセス確立について,確実にするためにはどんなことをするのか記述する。
    • トップは,情報交換について,確実にするためにはどんなことをするのか記述する。

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.6 マネジメントレビュー

5.6.1 一般

  • (1)トップマネジメントは,下記の目的を確実にするために,あらかじめ定められた間隔で品質マネジメントシステムをレビューする。
    • 品質マネジメントシステムが引き続き適切である。
    • 品質マネジメントシステムが妥当である。
    • 品質マネジメントシステムが有効である。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • トップの行うレビューのあらかじめ定められた間隔を記述する。
    • “品質マネジメントシステムをレビューする”そのものを品質マニュアルに記述しなくてもよい。
    • “引き続き適切である”,“妥当である”,“有効である”ために,何をやるのかを書く。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (2)このレビューでは,品質マネジメントシステムの改善の機会の評価,品質方針及び品質目標を含む品質マネジメントシステムの変更の必要性の評価も行う。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • トップは,QMS変更の必要性の評価を,いつ行うのか記述する。
    • レビューの目的である,“改善の機会の評価”,“変更の必要性の評価”をマネジメントレビューの中で行うことを明記するのもよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (3)マネジメントレビューの結果の記録は維持する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 「4.2.4記録の管理」の一覧に示す。この一覧表には,誰が記録をとり,誰が承認するのかが示されていることがよい。記録のフォーマットを品質マニュアルの付録に付けるのもよい。
    • 上記一覧表の中に示さず,誰が記録をとり,誰が承認するのかを個別に書いてもよい。

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.6.2 マネジメントレビューへのインプット

  • (1) マネジメントレビューへのインプットは次の情報を含む。
  • a) 監査の結果。
  • b) 顧客からのフィードバック。
  • c) ・プロセスの実施状況。
      ・製品の適合性。
  • d) 予防処置及び是正処置の状況。
  • e) 前回までのマネジメントレビューの結果に対するフォローアップ。
  • f) 品質マネジメントシステムに影響を及ぼす可能性のある変更。
  • g) 改善のための提案。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰がa)~g)の情報をインプットに含むかを決め,記述する。
    • マネジメントレビュー実施の際に,インプットとしてa)~g)が必ず扱われるように帳票化して品質マニュアルの付録に付けるとよい。
    • “a)~g)の情報を含む”ことは品質マニュアルに記述しなくてもよい(上記帳票に記載されていればわかる)。

ISO 9001:2000規格の要求事項
5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット

  • (1) マネジメントレビューからのアウトプットには,次の事項に関する決定及び処置を含む。
  • a)・品質マネジメントシステムの有効性の改善。
  •  ・品質マネジメントシステムのプロセスの有効性の改善。
  • b) 顧客要求事項への適合に必要な製品の改善。
  • c) 資源の必要性。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰がa)~c)の事項に関する決定をするのか決め,記述する。
    • マネジメントレビューからのアウトプットである「決定及び処置の記録」の帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
    • “a)~c)の事項を含む”ことは品質マニュアルに記述しなくてもよい(上記帳票に記載されていればわかる)。