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2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方(第10回)

平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第10回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

4. 品質マネジメントシステム
4.1 一般要求事項

  • (1)組織は,この企画の要求事項に従って,品質マネジメントシステムを:
    • 確立する。
    • 文書化する。
    • 実施する。
    • 維持する。
    • 有効性を継続的に改善する。
  • 品質マニュアル記述ポイント
    • ・ “品質マネジメントシステム(QMS)を確立し,文書化し,実施し,かつ,維持する”と全く同じに品質マニュアルに記述しなくてよいが,「ISO 9001:2000規格に合致した品質マネジメントシステム(QMS)を確立して維持すること」は明確に書く(これが基本であるから)。また,QMSを継続的に改善することも記述した方がよいが,シンプルにしたければ省略してもよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (2)組織は,次の事項を実施する。
    • a)必要なプロセス及びそれらの組織への適用を明確にする。
    • b)プロセスの順序及び相互関係を明確にする。
    • c)プロセスの運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実にするために必要な判断基準及び方法を明確にする。
  • 品質マニュアル記述ポイント
    • a)組織が現実に実施しているプロセスを明確にして,記述する。プロセスの大きさは,一般的にいってISO 9001規格が採用している見出しを使うとよい。しかし,これは組織が決めることであり,たとえば,組織にISO 9001規格見出しにないプロセスがある場合は,そのプロセス名をそのまま記述すればよい。
    • QMS全体のプロセスと製品実現のプロセスと構造がデュアルになっていることに注意するとよい。
    • b)明確にしたプロセスに実施順序を付ける。そして,相互関係を明確にする。
    • あるプロセスとあるプロセスは相互関係しているし,あるプロセスとあるプロセスは相互に直接関係していない。相互に関係しているプロセス間に矢印を付けて相互関係を明確にする(interactionとinterrelationはほぼ同様な意味である)。
    • c)必要な判断基準と方法を明確にするのは,「5.4.2品質マネジメントシステムの計画」及び各プロセスの項及び関連する規定.手順書に記述する。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • d)プロセスの運用及び監視の支援をするために必要な資源及び情報を利用できることを確実にする。
  • e)プロセスを監視,測定及び分析する。
  • f)・プロセスについて計画どおりの結果が得られるように必要な処置をとる。
      ・プロセスについて継続的改善を達成するために必要な処置をとる。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • ・d)必要な資源については6.1項で,情報 については6.3項で記述する。
    • ・e)「8.2.3 プロセスの監視及び測定」の項で記述する。
    • ・f)「8.5.1継続的改善」の項で記述する。
    • ・「5.6.2 マネジメントレビューヘのインプット」c),「5.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット」a),「8.2.2 内部監査」,「8.2.3 プロセスの監視及び測定」の項において記述する。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (3)  組織は,これらのプロセスを,この企画の要求事項に従って運営管理する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • ・特に記述しなくてもよいが,トップがマネジメントレビューを活用して運営管理すると記述してもよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (4) 要求事項に対する製品の適合性に影響を与えるプロセスをアウトソースすることを組織が決めた場合には,組織はアウトソースじたプロセスに関して管理を確実にする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • ・アウトソース(外注化)しているプロセスがあれば,それを明確にして,アウトソースしたプロセスの管理について記述する。多くは,「7.4購買」の項で記述するとよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (5)アウトソースしたプロセスの管理について,組織の品質マネジメントシステムの中で明確にする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • ・アウトソースしたプロセスの管理については,その多くは「7.4購買」の項で記述する。

ISO 9001:2000規格の要求事項
4.2 文書化に慰安する要求事項

4.2.1 一般

  • (1) 品質マネジメントシステムの文書には,次の事項を含める。
    • a) 文書化した,品質方針及び品質目標の表明
    • b) 品質マニュアル
    • c) この企画が要求する“文書化された手順”
    • d) 組織内プロセスの効果的な計画,適用及び管理を確実に実施するために,組織が必要と判断じた文書。
    • e) この企画が要求する記録。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • ・誰がa)~e)文書を作成するのかを決め,記述する.文書の体系も決め,記述する(この場合,1994年版規格でよく行われた,三角形の絵で文書体系の概要を説明するのがよい)。
    • ・a),b),c)について記述する。
    • ・d) 組織が必要と判断した文書を一覧にして示す。
    • ・e) この規格が要求する記録に加えて,組織が必要と判断した記録も一覧にして示す。

ISO 9001:2000規格の要求事項
4.2.2 品質マニュアル

  • (1)組織は,次の事項を含む品質マニュアルを:
    • ・作成する。
    • ・維持する。
  • a)・品質マネジメントシステムの適用範囲。
     ・除外がある場合には,その詳細と正当する理由。
  • b)・品質マネジメントシステムについて確立された“文書化された手順”
     ・それらを参照できる情報。

  • c) 品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • ・品質マニュアルの作成,確認(あれば),承認を誰が行うのかを書く。
    • ・4.2.1項と一緒に記述してもよい(特に4.2.2の項を設けない)。
    • ・“a),b),c)を含むこと”という要求事項通りにQMSを構築すればよく,要求事項そのものを品質マニュアルに記述しなくてもよい。
    • ・a)あるプロセスをアウトソース化していることのみでは,除外の理由にならない。
    • ・c)“プロセス間の相互関係に関する記述”については,「4.1一般要求事項」b)で,相互関係を明確にすると同時に,記述すればよい

ISO 9001:2000規格の要求事項
4.2.3 文書管理

  • (1)品質マネジメントシステムで必要とされる文書は管理する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • ・組織のQMSに必要とされる文書の一覧を記載する。
    • ・誰がどの文書を管理するのか決め,記述する。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (2)記録は文書の一種ではあるが,4.2.4に規定する要求事項に従って管理する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • ・要求事項通りにQMSを構築すればよく,要求事項そのものを品質マニュアルに記述しなくてもよい。しかし,品質記録の管理は,4.2.4項で述べることを記載してもよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (3)次の活動に必要な管理を規定する“文書化された手順”を確立する。
    • a)発行前に,適切かどうかの観点から文書を承認する。
    • b)文書をレビューする.また,必要に応じて更新し,再承認ずる。
    • c)文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。
    • d)該当する文書の適切な版が,必要なときに,必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。
    • e)文書が読みやすく,容易に識別可能を状態であることを確実にする。
    • f)・どれが外部で制作された文書であるかを明確にする。
        ・その配付が管理されていることを確実にする。
    • g)・廃止文書が誤って使用されないようにする。
        ・何らかの目的で保持する場合には適切な識別をする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
  • ・(文書管理する手順(specified way;規定されたやり方)として)文書化した手順を作成,記述する。
  • ・a)~g)を品質マニュアルの中に記述するか,2次文書として別に規定するか(文書管理規定)は,組織が考えることである。
  • ・a)誰がどの文書を承認するか書く。
  • ・b)文書のレビューは誰が,どのように行うのか書く。
  • ・c)何によって,文書の識別及び現在の改訂版の識別を行うのか書く。
  • ・d)文書の改訂管理,配付管理について誰が何をするのか書く。
  • ・e)要求事項の表現を使う。
  • ・f)外部文書の識別について具体的に書く.また,配付管理のやり方について書く。
  • ・g)廃止文書の管理について誰が,何をするのか書く。

ISO 9001:2000規格の要求事項
4.2.4 記録の管理

  • (1) 記録は,要求管理への適合及び品質マネジメントシステムの効果的運用の証拠を示すために: 
  • ・作成する。
  • ・維持する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
  • ・組織のQMSに必要とされる記録の一覧を記載する。
  • ・誰がどの記録を作成し,維持するのかを決めて記述する。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (2)記録は,読みやすく,容易に識別可能で,検索可能であること。
  • 品質マニュアル記述のポイント
  • ・要求事項通りにQMSを構築すればよく,要求事項そのものを品質マニュアルに記述しなくてもよい。
    しかし,規格はあるべき状態を示しているので,この表現をそのまま使ってもよい。できれば,品質記録をとる要求をしている条項のところに記述するとよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (3) 記録の下記事項に関して必要な管理を規定するために、“文書化された手順”を確立する。
  • ・識別
  • ・保管、保護,検索及び保管期間
  • ・廃棄
  • 品質マニュアル記述のポイント
  • ・(品質記録を管理する手順(Specified Way;規定されたやり方)として)文書化した手順を作成,記述する。