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2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方(第21回)

平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第21回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

7.2 顧客関連のプロセス
7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化
管理責任者は,製品要求事項の項目を明確化にするため,下表の様に各部の担当を決める。

製品要求事項の項目 主観部署 関連部署 備考
顧客が規定した製品要求事項 納期(入手性),販売量 営業部 製造部,購買部 会議にて決定
品質(苦味,アルコール濃度等) 技術部 製造部 会議にて決定
コスト(価格) 営業部 総務・経理部,製造部,技術部 会議にて決定
用途のために必要な製品要求事項 販売ルートによる製品の劣化 技術部 営業部
法令・規制要求事項 酒税法,食品衛生法 技術部 品質管理部
組織が必要とする追加要求事項 長期保存限界 技術部 製造部

7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー

  1. 営業部長は,次白頭の表組の手順にて製品要求事項のレビュー及び修正活動を行ない,製品要求事項を確立する。
    • ① 関連する文書:契約文書(見積書,契約書)
    • ② 詳細内容は契約文書に規定する。
  2. 確立した製品要求事項は品質記録として管理する。
  3. 契約に関する進め方の詳細な要領に関しては,契約要領書に規定する。
    「契約内容の確認記録 B11」の帳票様式を記録に付ける。
フロー 内容 関連協議部署
見積り 製品要求事項レビュー
(顧客要求事項)
・顧客の口頭連絡時には内容の確認をする
1次検討
(顧客要求事項(Ⅰ)その他の要求事項)
・顧客要求事項(Ⅰ)の能力検討(品質面)
・その他の要求事項の能力検討(法令・規則事項)
技術部
1次修正 1次修正案(顧客へ連絡)
顧客了解 ・見積もり時の要求事項との差異確認
1次修正レビュー ・関連する文書の修正(見積書),関連部署への文書にて連絡 技術部
2次検討
(顧客要求事項(Ⅱ),その他の要求事項)
・顧客要求事項(Ⅱ)の能力検討(納期,販売量,コスト)
・その他の要求事項の能力検討(用途のための要求事項,組織が必要とする追加要求事項)
関係する全部門
2次修正 2次修正案(顧客への連絡)
顧客了解 ・見積もり時の要求事項との再確認
締結 2次修正レビュー
(製品要求事項確立)
・関連する文書の修正(契約書),関連部署へ文書にて連絡 関係する全部門

7.2.3 顧客とのコミュケーション
管理責任者は,顧客とのコミュニケーションのため,具体的な製品情報,引き合い,契約,注文及び顧客からのフィードバック等に関しての内容及び担当部署を定め,実行する。

項目 内容 担当部署
製品情報 製品要求事項(Ⅰ):製品の企画内容等についてのパンフレット 技術部
製品要求(Ⅱ):コスト,納期等についての業務案内書 営業部
引き合い,契約,注文 担当窓口の設定(変更も含む) 営業部
顧客からのフィードバック
(苦情を含む)
品質関係(味,濁り,その他)の受付窓口
サービス関係(納期遅れ等)受付窓口
技術部
営業部

7.3 設計・開発
7.3.1 設計・開発の計画

  1. 技術部長は,設計・開発の計画を下記に定め,管理する。
    設計・開発の計画書--設計の計画書(設計~レビューまで)
             |
             --工程設計(開発)の計画書(工程設計~妥当性確認まで)
  2. 上記計画書に基づき,下記内容にて設計・開発の各段階ごとの主な業務内容を明確にする。(下記の表参照)
  3. 技術部長は,異なるグループ間のインタフェースをとるためその都度,プロジェクト会議を実施する。
  4. 設計・開発の計画書は,設計・開発の進展に応じて更新する。変更の手順は,「文書管理手順」による。
  5. 設計・開発の計画書の詳細内容は,設計文書に規定する。
  6. 設計・開発のプロセス レビュー,検証および妥当性確認の活動 責任部署
    製品要求事項のレビュー 品質情報(苦味,アルコール濃度等),販売情報 営業部
    設計へのインプット(Ⅰ) 品質情報(苦味,アルコール濃度等),法令・規制関係(酒税法等) 技術部
    設計 研究部門との調整 技術部
    レビュー(Ⅰ) ・品質情報確立 技術部
    プロジェクト会議 ・基本プロセス,原料,酵母,適用設備決定
    設計へのインプット(Ⅱ) ・販売量等も含め全体会議 (プロジェクト会議)
    工程設計(開発) ・生産量等も含め追加インプット 技術部
    レビュー(Ⅱ),検証 ・製造部との調整(現場試験製造) 技術部(製造部)
    妥当性確認
    OK
    ・合否判定基準の決定(苦味,アルコール濃度等) 技術部
    (生産へ) ・市場反応調査,官能検査員による調査 技術部(営業部)

7.3.2 設計・開発へのインプット

  1. 技術部長は,設計・開発のインプットを項目別に下記に明確にする。
  2. 分類項目 インプット(Ⅰ):設計 インプット(Ⅱ):工程設計(開発)
    製品の機能及び性能に関する要求事項(ビール品質か関係) アルコール濃度規定
    糖度規定
    苦味度規定
    色調規程(透明度,色)
    設計のアウトプットデータより
    法令・規則要求事項 国内酒税法に定まる要求事項 同左
    従来の類似設計情報(従来品の情報) 原料(種類)
    酵母(種類)
    プロセスの条件(設備仕様範囲提示)
    その他の要求事項 賞味期限限界 設計のアウトプットデータより
  3. 技術部担当者は,インプット(Ⅰ)に関しては各項目について妥当性を確認する。インプット(Ⅱ)に関しては,技術部内にて妥当性をレビューする。
  4. 技術部担当者は,上記のレビュー時には,不完全及び不明確な項目は部内及び関係部署と調整し解決する。
  5. 詳細内容は,設計文書に規定する。
  6. 設計・開発のインプットの記録は,品質記録として管理する。

7.3.3 設計・開発からのアウトプット

  1. 技術部長は設計・開発のアウトプットを項目別に次頁の表に定め,実行する。
  2. インプット項目は○印にて示している.技術部担当者はアウトプット項目とインプット項目との整合性を確認する。
  3. 技術部長はアウトプット文書を発行前に承認する。
  4. 詳細内容は設計文書に規定する。
  5. 分類項目 アウトプット (Ⅰ):設計 インプット項目 アウトプット(Ⅱ):工程設計(開発) インプット項目
    購買・生産・サービスのための情報提供 購買 最適原料,原料配合 同左
    最適酵母,酵母配合 同左
    生産 各種プロセスの操作条件(温度,時間) 同左+操業条件の管理範囲
    検査 各種検査機器(主に分析計)
    官能検査員の認定基準
    設備 仕上ろ過フィルターの改善内容
    保有 保有条件(上限温度,時間等)
    合否判定基準 アルコール濃度 同左+(管理範囲,検査タイミング)
    糖度 同左+(管理範囲,検査タイミング)
    苦味度 同左+(管理範囲,検査タイミング)
    色調(透明度,色) 同左+(管理範囲,検査タイミング)
    安全上の考慮 使用特性
    (賞味期限等)
    同左
    異常操業時の対策

7.3.4 設計・開発のレビュー

  1. 技術部長は,設計開発のレビューを項目別に書きに定め,実行する。
  2. レビューの段階 レビューの項目 検討項目 問題発生時の処置活動 関係部署
    設計後 設計のアウトプット内容 ・製品要求事項との適合性(主に基本品質)
    ・基本製造条件
    ・設計やり直し(設計修正) 営業部
    工程設計
    (開発後)
    工程設計のアウトプット内容 ・製品要求事項との適合性(管理範囲も含む)
    ・製造能力(設備管理範囲も含む)
    ・検査関係
    ・保存関係
    ・異常操業時の対策
    ・工程設計やり直し
    (工程設計の修正)
    ・設備改善
    (設備管理範囲の見直し)
    購買部
    製造部
    営業部
    品質管理部
    (プロジェクト会議にて)
  3. 技術部長は,問題発生時の処置活動を決定する。
  4. レビュー及び必要な処置の結果は,品質記録として管理する。

7.3.5 設計・開発の検証

  1. 技術部長は,設計・開発からのアウトプットがインプットで与えられている要求事項を満たすことを確実にするために,設計・開発の検証を項目別に下記に定め,実行する。
  2. 検証段階 検証手段 検証項目
    設計後 類似品との比較評価 原料比率,酵母配合
    工程設計後 類似品との比較評価 製造条件,保存条件
    合否判定基準,安全上考慮
  3. 技術部長は,設計検証の結果,インプットでの要求事項を満たしていないものについては,必要な処置を実施する。
  4. 検証及び必要な処置の結果は品質記録として管理する。

7.3.6 設計・開発の妥当性確認

  1. 技術部長は,妥当性確認(主にビールの味,苦味度の官能検査)に関しては工程設計後に実施し,製品の引き渡し前に完了する。
  2. 技術部長は妥当性確認の段階,項目及び評価基準,頻度を下記に定め,実行する。
  3. 妥当性確認段階 妥当性確認内容:官能検査
    項目 評価基準
    (5段階評価)
    頻度
    苦味 味全体
    工程内(主に発酵工程) 段階評価にて4以上 貯蔵バッチ単位
    最終検査 段階評価にて4以上 貯蔵バッチ単位
    ビール試飲会 段階評価にて4以上 50人以上
    特殊保存条件(50℃×1ヵ月) 段階評価にて4以上 貯蔵バッチ単位

    評価点…5;最高の味 4;すぐれた味 3;普通の味 ○印:観音検査員のみ ◎印:(官能検査員+ビール試飲会) 2;まあまあの味 1;まずい味

  4. 技術部長は,妥当性確認にて問題の生じた場合は,必要な処置を実行する。
  5. 妥当性確認及び必要な処置の結果の記録は,管理する。

7.3.7 設計・開発の変更管理

  1. 技術物調は,設計・開発の変更に関しては,下記に明確にする.設計・開発の変更は,技術部長の承認後実施される
  2. 設計・開発の場合 検討項目 協議部署 検討内容 レビュー,検証妥当性確認の要否
    工程設計
    (妥当性確認)
    試験製造条件の確認(原料,製造プロセス) 製造部,購買部,品質管理部 プロセス,原料検査方法等 ○(要)
    製造
    (最終検査)
    製造条件の確認
    (原材料,製造プロセス)
    製造部,購買部,品質管理部 プロセス,原料検査方法等 ○(要)
    サービス(顧客クレーム) 製造条件の確認(原料,製造,保存,プロセス) 製造部,営業部,品質管理部 保存方法
    (条件により要)
  3. 変更内容の結果(レビュー,検証,妥当性確認も含む)及び必要な処置の結果は,品質記録として管理する。