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2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方(第22回)

平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第22回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

7.4 購買
7.4.1 購買プロセス

  1. 当社における購買品は,原料【(主原料(麦),副原料(米,コーン,スターチ),ホップ)】とする。
  2. 購買プロセスの主管部署は,購買部とする.但し新規購買(供給会社,購買品)に関しては,技術部及び製造部と協議する。
  3. 購買部長は,購買要求事項に従って購買品を供給する能力を判断する根拠として,評価基準及び選定基準について,下記内容に示すように供給者及び購買品ごとに評価基準及び選定基準表を作成し,評価,選定をする。
    購買品 影響度(最終製品) 評価項目 選定基準
    納期 コスト 能力 品質 合計点 項目評価点(品質)
    主原料
    (麦)
    ≧12 ≧4
    ホップ ≧12 ≧4
    副原料 ≧12
    • ① 各購買品ごとに評価項目を規定する。
    • ② 各購買品ごとに選定基準を規定する。但し,最終製品に大きな影響を及ぼす麦,ホップに関しては,品質の評価点も選定基準にもり込む。
    • ③ 評価選定は,1回/年実施する。但し,問題の発生した場合は,供給者と協議しその都度再評価する。
    • ④ 新規購買会社及び新規購買品の評価,選定に関しては技術部,製造部と協議し決定する.初回の評価,選定が完了した以降の再評価及び再選定に関しては,①~③に沿って購買部長が定期的に評価,選定する。
    • ⑤ 評価,選定及び必要な処置の記録は,品質記録として管理する。

7.4.2 購買情報

  1. 購買部担当者は,購買品の発注を注文書にて実施する。
  2. 購買部担当者は,購買品(原料購買品)の購入に関しては,原料種類別に事前に承認された供給者であることを確認する。
  3. 注文書の記載内零は,下記の通りとする。
    原料
    (種別)
    一般事項 検査項目 その他
    内容 頻度 保証期間 品質異常時の処置
    品種,量,納期,産地
    ホップ 品種,量,納期,産地
    副原料 品種,量,納期,産地
    • ① 購買部担当者は,注文書発行前に記載内容に問題がないかを確認する。
    • ② 検査項目の内容及び頻度については,必要な場合その都度記載する。
    • ③ 新規発注物件の検査項目については,技術部と協議する。
    • ④ 品質異常時の処置については,関連部署(品質管理部,技術部,製造部)と協議する。
  4. 詳細内容は,購買文書に規定する。

7.4.3 購買製品の検証

  1. 購買部担当者は,購買品の検証に関しては,一般項目(品種,量,産地,納期)のみ購買伝票にて管理する。
  2. 但し新規購買品,新規供給者の購買品に関しては,初回品に限定し受入れ検査項目の内容,頻度は技術部と協議し決定し購買文書(注文書)に規定する。
  3. 受入検査を供給者で実施する場合は,検査方法及び出荷許可の要領を購買文書に規定する。
  4. 詳細内容は,購買文書に規定する。

7.5 製造及びサービス提供
7.5.1 製造及びサービス提供の管理
 製造部長は製造→出荷→サービスまでの各プロセスについてそれぞれの管理内容を計画し,実行する。

  1. 製品の特性の規定
    • ① インプット:設計図書による.【工程設計(開発)のプロセス】
    • ② 検査項目:味(苦味),成分(糖度,アルコール濃度,その他成分),色調(にごり,色)
    • ③ 検査タイミング:工程内検査(一部項目),サービス(一部項目),最終検査(全項目)

    *詳細は表2による。

  2. 作業指示書の利用
     必要な場合,作業指示書等の整備。
    *詳細は別に定める。
  3. 適用設備
     適用する設備内容。
    *詳細は表2による。
  4. 適用する監視・測定機器
    *詳細は表2による。
  5. 測定・検査の方法
     プロセス検査,製品検査,官能検査の内容。
    *詳細は表2による。
  6. 引渡し及び出荷許可について
プロセス 適用設備 検査項目(設計図書より) 監視・測定方法
項目 内容 項目 管理内容 点検頻度 糖度 アルコール濃度 色調 プロセス検査 官能検査 モニタリング測定機器
麦配合 配合 ハカリ 重量制御 定期
水処理 水浄化 浄化槽 水分成分 日常 成分分析計
製麦 発芽 発芽促進水投入 浸セキ槽 温度制御 日常
(温度記録)
温度計
麦芽 発芽停止 乾燥機 温度制御 日常
(温度記録)
温度計
焙燥 麦芽制御 焙燥室 温度制御 日常
(温度記録)
温度計
粉砕 糖化促進 粉砕機 麦芽粒度 定期
仕込み 糖化 原料投入
【麦芽・副原料・水】
糖化槽 温度制御 日常
(温度記録)
温度計
麦汁ろ過 麦芽カス除去 ろ過器 フィルター管理 温度制御 日常
【フィルターづまり】
煮沸 ホップ投入 麦汁煮沸釜 温度制御 日常
(工程内)
成分分析計温度計
冷却 発酵前の冷却 冷却器 温度制御 定期 成分分析計温度計
発酵 主発酵 酵母投入 発酵タンク 温度制御 日常
(工程内)

(工程内)

(工程内)

(温度記録)

(味)
貯酒 後発酵 貯酒タンク 温度制御 日常
(工程内)

(工程内)

(工程内)

(温度記録)

(味)
ろ過 仕上ろ過 残酵母除去 ろ過器 フィルター管理 日常
【フィルター詰まり】
ビン詰 ビン洗浄 ジェット洗浄 ビン汚れ管理 日常 超音波計
ビン詰め ビン詰め機 空気除去制御 日常
検査 最終検査
(最終)

(最終)

(最終)

(最終)

(味)
色調計
成分分析計
表示 ラベル添付 ラベラー ラベラー添付管理 日常
保存 ビール在庫保存 倉庫ヤード 温度,湿度
(温度記録)
サービス
(味)
  • 「工程管理の記録」の帳票様式を付録に付ける。
  • 受入及び工程内検査では,各段階にて定められたプロセス検査,製品検査に適合している事を確認後,次工程に引き渡す。
  • 最終検査では,最終製品検査(味,成分,色調)及びビン詰の検査(ビン割れ,ヨゴレ,充填率)にて合格した製品には合格ラベルがはられ出荷許可となる。詳細は,8.2.3「プロセスの監視及び測定」,8.2.4「製品の監視及び測定」に規定する。
  1. サービスについて
    • 出荷後,定期的に味検査(官能険査)にてサービス検査を実施する。
  2. 詳細内容は,工程管理文書に規定する。
  3. 管理の詳細な要領は,生産・サービスの要領書に規定する。

7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認

  1. 製造部長は,プロセスの妥当性確認を下記のように規定し,実行する。
    プロセス 妥当性
    確認項目
    手段 妥当性確認内容 検査頻度
    貯酒 苦味,味 官能検査員 バッチからランダムにサンプルを採り,特殊保存条件による加速試験 バッチ単位
    • ① 官能検査は,5段階評価にて判定し,4以上を合格とする。
      (5段階評価は前出の方法による)
    • ② 官能検査異常時に対応
      • (ⅰ) 該当製品にて,製造プロセスにて異常がないかを確認する。
      • (ⅱ) 異常の無い場合は,他要員にて妥当性確認を行う。
  2. 品質管理部長は,上記プロセスの対象設備及び要員を承認する.特に要員(官能検査員)の承認に関しては,6.2.2「力量,認識及び教育・訓練」による。
  3. 妥当性確認の結果の記録は品質記録として管理する。
    「特殊工程の管理記録B41」の帳票様式を付録に付ける。

7.5.3 識別及びトレーサビリティ

  1. 製造部長は,ビールの識別を右頁上記に示すように原料,発酵条件にて管理する。また最小識別単位は,貯酒工程とする。
  2. 識別
    • ① ビールの識別は,下記内容にて行う。
    • 機能 識別工程 番号
      原料(Ⅰ)(麦芽焙燥温度)
      アルコール濃度,糖度 発行条件(Ⅰ)
      発行条件(Ⅱ)(後発酵:貯蔵)
      酵母配合
      苦味 原料(Ⅱ)(ホップ種別)
      原料(Ⅲ)(麦芽配合)
      賞味期限 製造年月日(ビン詰日時)
    • (具体例)        ←         →  ←        →
                    ビール工程管理No.    製造年月日
             ビール名 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥   ○年○○月○○日
    • ②  管理手順
      • ビール作業指示書には,ビール名およびビール工程管理No(①~⑥)の番号が支持される。
      • 各工程完了後,実績インプットを行う。
      • 不適合品は該当項目にZを付記し,次工程に進めないようにする。
      • 最終工程(貯酒工程)では,すべての指示項目が完了したことを確認する。
      • 最終検査に合格後,製造年月日(ビン詰め日)が付記されラベルに識別No.が表示される。
  3. 識別及びトレーサビリティの記録は,品質記録として管理する。

7.5.4 顧客の所有物
 当社の場合,QMSの除外項目のため記載しない。

製品の保存

  1. 製造部長は次頁の上記内容にて原料及び製品について保存内容を規定し,実行する。
  2. 製品の保存の記録は,品質記録として管理する.「製品の保存の記録B43」の帳票様式を付録に付ける。
  3. 種別 管理内容
    保存場所 方法 保存環境 保存期間
    原料
    (麦,ホップ,副原料)
    倉庫 購入月及び原料別に管理 温度(0~30℃)
    湿度(~80%)
    ≦3ヵ月
    製品 倉庫 専用ケースにてビール種別に管理 温度(0~20℃)
    湿度(50~70%)
    ≦3ヵ月
    搬送 専用ケースにて管理
    • ① ラベルへの刻印で製品の識別をする。
    • ② 専用ケースを落下させたり,ぶつけたりしないこと。
    • ③ 専用ケースにて保存する。
    • ④ 3ヶ月以内の保管をする。
    • ⑤ 保存環境を維持することで,ビールの味,品質を保護する。