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2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方(第28回)

平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第28回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

5.4 計 画

  • 5.4.1 品質目標
    社長は,品質方針を達成するため,また建造物に対する要求事項を満たすために必要な品質目標を,部門の「実施計画」に策定することを指示する。
    設定する品質目標は,判定可能であり,品質方針と矛盾のないものとする。
  • 5.4.2 品質マネジメントシステムの計画
    社長は,規格の要求事項と品質目標を満たすため各部門長に,品質マネジメントシステム計画を作成させる。品質マネジメントシステム計画の概要のフローは,図-5.4.2「品質マネジメントプロセス」による。品質管理責任者はこのフローに基づき,品質マネジメントシステムの実行をこの品質マニュアル全体に規定する。
    また,各部門長は,自部門の品質目標を達成させるための実行計画を作成する。
    各部門長は,品質マネジメントシステム計画を実行している時も,既存のシステムが完全にそして確実に維持されるよう変更時管理を行う。詳細は「方針管理規定」に定める。

図-5.4.2 品質マネジメントプロセス

5.5 責任,権限及びコミュニケーション

  • 5.5.1 責任及び権限
    社長は,品質に関わる責任,権限及び相互関係を図-5.5.1「組織図」及び表-5.5.1「主要業務の責任及び権限」に定め,関係者に周知する。
  • 図-5.5.1 組織図
  • 社長
  • 品質管理委員会・品質管理責任者
  • 総務部
    • 企画課 ― 当社の運営に関する情報収集,分析,立案,推進
    • 総務課 ― 工事契約及び庶務,経理事務
    • 人事課 ― 人材採用計画の立案および実施,人事考課の実施,教育訓練計画の立案及び実施
  • 営業部
    • 建築営業課 ― 建築工事の営業戦略の策定,新規顧客の開拓及び受注活動推進
    • 土木営業課 ― 土木工事の営業戦略の策定,新規顧客の開拓及び受注活動推進
    • 営業部(複数) ― 営業所管内の建築及び土木工事の新規顧客の開拓及び受注活動推進
  • 建築部
    • 建築設計課 ― 建築物の建築・構造・設備の設計及び工事管理の推進
    • 建築工事課 ― 建築物の施工に関する業務の推進(見積,購買を含む),竣工後の建築物の保全に関する業務の推進
            ― 作業所(複数)
  • 土木部
    • 土木技術科 ― 土木工事の施工に関する技術支援業務推進
    • 土木工事課 ― 土木工事の施工に関する業務の推進(見積,購買を含む)
            ― 作業所(複数)
  • 品質環境安全部
    • 品質管理課 ― 品質マネジメントシステムの構築・実施・改善に関する業務推進,施工中及び竣工後の建造物の検査及び技術指導の推進
    • 環境安全管理課 ― 環境マネジメントシステムの構築・実施・継続的改善に関する業務推進,環境マネジメントプログラムのパフォーマンスに関する監視測定,労働安全衛生マネジメントシステムの構築・実施      
  • 表 ― 5.5.1 主要業務の責任及び権限
  • 責任者 任命者
    品質マネジメントシステムに関する管理 品質管理責任者(品質環境安全部長) 社長
    設計業務 設計責任者 建築設計課長
    工事管理業務 工事責任者 建築設計課長(管理建築士)
    施工管理業務 現場責任者 建築及び土木工事部長
    保全業務 保全責任者 建築及び土木工事部長
  • 5.5.2 品質管理責任者
    社長は品質マネジメントシステムの管理責任者として,品質環境安全部長を任命し次の事項の責任と権限を与える。
    • (1)品質マネジメントシステムに必要なプロセスを確立し,実行し,維持する。
    • (2)内部品質監査を実施する。
    • (3)品質マネジメントシステムに関する実施状況及び改善の必要性について,内部品質監査の結果,運営計画・実施計画に対する実施状況,不具合の発生及び予防処置・是正処置実施状況等をもとに社長に報告する。
    • (4)当社の全従業員に対し,顧客要求事項に対する認識を深めさせる。
    • (5)品質マネジメントシステムに関連する事項について,外部関係者と連絡調整を行う。
  • 5.5.3 内部コミュニケーション
    社長は,適切なコミュニケーションプロセスを社内にて確立し,品質マネジメントシステムに関するコミュニケーションが有効に行われるように,次の事項を行う。
    • (1)当社の品質方針,運営計画及び実施計画の監視測定に関する事項等を,部門長会議において周知させる。
    • (2)プロジェクトに関する部門間の調整はプロジェクト会議にて行い,各部門内への伝達を徹底させる。
    • (3)内部監査,是正処置・予防処置,マネジメントレビューの結果等は,報告書・記録等で部門長,部署長に周知させる。
    • (4)その他の品質関連会議体は「品質関連会議体規定」によるものとする。

6.資源の運用管理
6.1 資源の提供
各部門長は,次の事項に必要な資源(要員,施設,設備,作業環境,資金,技術・技能等)を立案し,社長が承認する。

  • (1)品質マネジメントシステムを実行し維持すると共に,その有効性を継続的に改善する。
  • (2)顧客要求事項を満たすことにより,顧客満足を向上する。

6.2 人的資源

  • 6.2.1 一般
    担当業務の部門長又は部署長は,当社の製品である建造物の品質に影響のある仕事に従事している下記表の特定業務従事者に対して,教育,訓練,技能及び経験がその職務に対し力量があることを確認し従事させる。
  • 特定業務従事者 必要資格 資格確認者
    設計責任者 1級建築士 建築設計課長
    工事管理者 1級建築士 建築設計課長
    現場責任者 入社後5年以上の経験を持つ1級建築士,1級建築施工管理技士,1級土木施工管理技士 建築設計課長(管理建築士)
    建築部長
    土木部長
    内部品質監査員 内部品質監査員研修の修了者 品質管理責任者
  • 6.2.2 力量,認識及び教育・訓練
  • (1)適用範囲
    • 当社の製品である建造物の品質に影響がある仕事に従事している要員に対し適用する。
  • (2)実施事項
    • 1) 各部門長又は部署長は,建造物の品質に影響がある仕事に従事している要員の必要な力量を前項(6.2.1)により明確にする。
    • 2) 各部門長又は部署長は,その要因に対し必要な力量をつけさせるため,「教育計画」をもとに教育・訓練の実施をする。
    • 3) 各部門長又は部署長は,必要な力量に対する到達レベルを評価し,目標レベルに到達した要員に,社内の必要な資格を与えると共に,必要に応じ社外の資格を取得させる。
    • 4) 各部門等又は部署長は,OJT(職場内教育)により要因に対し,自分の業務と品質との関連性,活動の重要性の認識及び自らの品質目標達成に対する貢献を認識させ,「個人別教育票」に記録させる。
    • 5) 総務部人事課は,要員の教育・訓練,技能及び経験の記録を「個人別教育履歴票」に維持する。

6.3 インフラストラクチャー
製品要求事項への適合を達成するのに必要なインフラストラクチャーを決定し,提供し,維持するために,下記の項目を実施する。

  • (1)総務部長は,本社及び営業所の業務推進のため必要な事務所,設備,機器,通信ネットワーク,ソフトウェア,業務支援サービス等を提供し維持する。
  • (2)建築部長及び土木部長は,作業所(事務所及び現場内)での作業推進に必要な作業所スペース,設備,機器,通信ネットワーク等を提供し維持する。
  • (3)インフラストラクチャー管理の詳細は「設備管理規定」に定める。

6.4 作業環境
製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を明確にし,運営管理するために,下記の項目を実施する。

  • (1)総務部長は,本社及び営業所の業務推進のため必要な事務所の最適環境を,「オフィス環境基準」により運営管理する。
  • (2)建築部長及び土木部長は,作業所(事務所及び現場内)での作業推進に必要な作業環境を「作業所環境基準」により運営管理する。

7.製品実現
品質管理責任者は建造物建設に必要なプロセス及び関連するプロセスを明確にし,その概要を図-7「製品実現のプロセス」に示す。

7.1 製品実現の計画
プロジェクトリーダーは建造物建設の計画において,次の事項を「品質計画書」に記述する。

  • (1) 設計段階・施工段階における製品に対する品質も苦行及び要求事項
  • (2) 設計段階・施工段階のプロセス及び文書化並びに必要な資源
  • (3) 建造物のための検証,妥当性確認,監視,検査及び試験並びに建造物の竣工段階での合否判定基準
  • (4) 建造物建設のプロセス及びその結果として建造物が,要求事項を満たしていることを実証するために必要な各種品質記録(4.2.4「記録の管理」参照)