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2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方(第29回)

平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第29回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

7.2 顧客関連のプロセス

  • 7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化
    建築部長又は土木部長は,製品に関する要求事項を明確にするためプロジェクト会議にて,下記の項目を決定する。
    • ① 顧客が規定した要求事項(竣工引渡し時及び保全段階での要求事項を含む)
    • ② 顧客が明示してはいないが,建物本来の使用目的又は常識的な使用に必要な要求事項
    • ③ 製品に関連する法令・規制要求事項
    • ④ 当社が決めた追加する要求事項
  • 7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー
    建築部長又は土木部長は,製品に関連する要求事項のレビューを,プロジェクト会議にて実施する。

  • (1)製品に関連する要求事項のレビューは,顧客へ建造物を建築し引渡す契約の前に行う。レビューでは,下記の事項を確認する。
    • 1)製品要求事項が定められていること
    • 2)見積時の要求事項と契約時の要求事項が異なる場合は,食い違いが解決されていること
    • 3)顧客要求事項を満たす能力を持っていること(設計力,施工能力)
  • (2)このレビューの結果の記録及びレビューを受けて実施された処置の結果の記録は,品質記録として保管する。
  • (3)顧客が書面で要求事項を示さない場合は,設計又は工事契約の前に,打合わせ記録等で,要求事項を確認する。
  • (4)製品要求事項が変更された場合,関連文書を確実に訂正して関連する人達に変更された要求事項を周知徹底する。
  • 図7-製品実現のプロセス
  • 7.2.3 顧客とのコミュニケーション
    品質管理責任者は,顧客とのコミュニケーションのための有効な進め方を図-7.2.3の通り定め,実施する.契約については「契約文書作成要領」により実施する。
  • 顧客 営業部 建築部
    設計部
    建築・土木工事課 建築・土木保全グループ 総務部
    総務課
    関連マニュアル項目
    製品情報 7.2.1 製品に関する要求事項の明確化
    7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー
    7.3.2 設計・開発へのインプット
    7.3.3 設計・開発からのアウトプット
    7.3.7 設計・開発の変更管理
    8.2.1 顧客満足
    8.3  不適合製品管理プロセス
    8.4 データの分析
    引き合い,契約若しくは注文又はそれらの変更
    苦情を含む顧客からのフィードバック
  • ◎主担当  ●関係部門  図-7.2.3

7.3 設計・開発
当社の建築物の設計に必要なプロセスの概要を図-7.3.1に示す。

7.3.1設計・開発の計画

  • (1)適用範囲
       当社の建築部建築設計課が遂行する設計・開発の管理に適用する。
  • (2)実施事項
    • 1) 建築部長は,建築物の設計を「設計品質計画作成要領」に基づいた「設計品質計画書」で管理する。
      設計・開発の計画では下記の事項を決定する。
      • ① 設計プロセスの段階(企画設計,基本設計,実施設計の各段階)
      • ② 設計の各段階に相応しいデザインレビュー,検証および妥当性の確認の活動
      • ③ 設計活動に関する責任及び権限
    • 2) 設計・開発に関係する異なるグループ間のインターフェイスは,効果的なコミュニケーション及び責任の明確さを確実にするため,次の管理を実施する。
      • ① 設計課が関係部署とプロジェクトの進め方について協議する場合は,プロジェクト会議にて行う。
      • ② 関係部署は,プロジェクトに関する文書化した情報を,プロジェクト会議等に提出し調整・確認を行う。
  • 3) 計画の内容は設計・開発の進行に応じて,適宜更新する。

7.3.2 設計・開発へのインプット

  • (1)設計費任者は,製品要求事項に関連するインプットに閲し,次の事項を明確にし,記録を保管する。
    • ① 機能及び性能に関する要求事項
    • ② 該当する法令・規制要求事項
    • ③ それまでの類似の設計から導かれる適用可能な情報
    • ④ 設計のために不可欠なその他の要求事項
  • (2)設計責任者は,インプットの適切性をレビューし,要求事項がもれがなく,あいまいでなく,かつ,矛盾しないようにする。
    「設計・開発へのインプット記録」の帳票様式を付録に付ける。

7.3.3 設計・開発からのアウトプット

  • (1)設計責任者は,設計・開発からのアウトプットを,設計・開発のインプットと対比した検証ができる様式で提示する。
  • (2)設計費任者は,設計・開発からのアウトプットを,発行する前に承認する。
  • (3)設計責任者は,設計・開発からのアウトプットが下記の項目を満たしていることを確認する。
    • ① 設計・開発へのインプットで与えられた要求事項
    • ② 購買,施工,サービス提供に対して適切な情報を提供
    • ③ 引渡す建造物の合否判定基準を含むか,または参照
    • ④ 引渡された建造物が安全で適正な使用に不可欠な製品の特性の明記「設計・開発からのアウトプット記録」の帳票様式を付録に付ける。

7.3.4 設計・開発のレビュー

  • (1)設計責任者は,設計の企画,基本,実施の各段階の適切な時期に,デザインレビュー(以下DRという)を「DR実施要領」に基づき主催する。
  • (2)DRにおいては,下記の項目のために,体系的に実施する。
    • ① 設計・開発の結果が要求事項を満たせるかどうか評価する。
    • ② DRで発見された問題を明確にし,必要な処置を提案する。
    • ③ レビューの結果の記録及び必要な処置のフォローの結果の記録を品質記録として保管する。
  • (3)DRの主催者は,DRの対象になる設計・開発段階に関係する部門・部署の代表者を含めて実施する。
    「設計・開発のDR記録」の帳票様式を付録に付ける。

7.3.5 設計・開発の検証

  • (1)設計責任者は,設計・開発からのアウトプットが,インプットでの要求事項を満たしていることを確実にするため設計検証を行い,結果を記録し品質記録として管理する。
  • (2)設計検証の結果,インプットでの要求事項を満たしていないものについては,設計責任者は訂正を指示し,訂正後再確認を行う。
  • (3)設計検証は,下記の方法による。
    • ① 部署長による発行前の設計図書の内容
    • ② 過去の類似プロジェクトとの比較検討
    • ③ 別法による計算の実施
    • ④ 他部門,他部署及び社外の有識者との相談
  • 「設計・開発の検証記録」の帳票様式を付録に付ける。

7.3.6 設計・開発の妥当性確認

  • (1)設計責任者は,設計された建築物又はその部位が,本来の使用目的又は常識的な使用若しくは用途に関する特有の要求事項を満たすため, 当性確認を行う。
    妥当性確認は,建築物の引渡し前に完了する。
  • (2)設計責任者は,妥当性確認の結果,要求事項を満たしていないものについては,訂正を指示し改善の結果を確認する。妥当性確認の結果及び必要な処置の記録は品質記録として管理する。
  • (3)妥当性確認の方法
    • ① 建築物の部位の実施代模型(モックアップ)による確認
    • ② コンピュータグラフィックによる完成予想図による確認
    • ③ 内装材,外装材等の試作材料,モデルルーム等の試作品による確認
    • ④ 部分先行施工による確認
    • ⑤ 風洞実験及び実大実験等の実験,コンピュータによるシュミレーション等
    • ⑥ 建築物が完成した時に行う妥当性確認は「妥当性確認要領」による,
  • 「設計・開発の妥当性確認の記録」の帳票様式を付録に付ける。

7.3.7 設計・開発の変更管理
設計責任者は,設計・開発のアウトプットに対し変更の必要性が生じた時,下記の変更管理を行う。

  • (1)設計・開発の変更に対し,「設計変更指示書」により変更の内容を明確にし,変更前に承認する.また変更記録を品質記録として保管する。
  • (2)設計・開発の変更について必要に応じて,DR,設計・開発の検証,設計・開発の妥当性確認を承認前に行う。
  • (3)設計・開発の変更のレビューには,建築物を構成する部品・ユニット及び引渡された建築物に及ぼす影響の評価を含む.またレビューの結果の記録及び必要な処置の記録は,品質記録として保管する。
      「設計・開発の変更内容の記録」の帳票様式を付録に付ける。

7.4 購 買

7.4.1 購買プロセス
建築部長,土木部長は,遂行する建設業務に関連する購買のプロセスを明確にする。
その概要を図-7.4.1「購買プロセス」に示す。

  • (1)適用範囲
    当社が遂行する建設工事に伴う購買業務に適用する。
  • (2)責任者
    購買業務の責任者は建築部及び土木部の工事課長とする。

  • (3) 実施事項
    • 1) 工事課長は,購買製品が購買要求事項を確実に見たいしていることを確実にするために「購買業務要領」に従い業務を推進する。
    • 2) 工事課長は,供給者及び購買製品に対する管理方式及び管理の程度を,購買製品が最終建造物に及ぼす大きさにより「購買業務要領」に定める。
    • 3) 工事課長は,供給者の評価,選定及び再評価を「供給者評価要領」により実施する。
    • 4) 工事課長は,供給者の評価の記録及び必要な処置の記録をもとに「供給者リスト」を改訂し,供給業者を立案する作業所に配布する。
    • 5) 工事課長は,供給者の評価及び必要な処置の記録を品質記録として保管する。

7.4.2 購買情報

  • (1) 現場責任者は,供給者に購買製品に対する各種要求事項を,「購買仕様書」にまとめ,工事課長へ提出する。
  • (2)現場責任者は,購買情報として下記の要求事項を「購買仕様書」に明記する。
    • ① 購買品の種類,名称,手順・プロセス・設備の承認に関する事項,仕様,数量,価格等に関する要求事項
    • ② 要員の資格を含む適格性に関する要求事項
    • ③ 供給者に対し品質マネジメントシステムの認証を要求する場合はその要求事項
  • (3)工事課長は,供給者へ購買要求事項を伝達する前に,要求事項の妥当性を建築及び土木部長と共に確認する。
  • (4)工事課長は,「購買仕様書」及び購買に関する契約文書を「文書管理規定」に基づき保管する。