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2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方(第30回)

平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第30回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

図-7.1.4 購買プロセス

7.4.3 購買製品の検証

  • (1)購買品の受入検査
    現場責任者は,購買品の検査で施工に関わる検査を「施工要領書」に基づき工程内及びその工程の終了時に実施する。
  • (2)供給者先での検証
    現場責任者,工事監理者又は顧客が購買品の検査を供給先で実施する場合,現場責任者は「購買仕様書」に検証の方法及び出荷許可の条件を明示する。

7.5 製造及びサービス提供
建築部長,土木部長は,建造物の施工段階のプロセスを明確にする。その概要を図-7.5に示す。

図-7.5 工事管理及び施工プロセス

7.5.1 製造及びサービス提供の管理

  • (1)適用範囲:建築工事の工事監理と施工管理及び土木工事の施工管理に適用する。
  • (2)責任者:工事監理の責任者は,工事監理者とする。
       建築工事及び土木工事の施工の管理責任者は,現場責任者とする。
  • (3)実施事項
    • 1) 工事監理(他社設計の建築及び土木工事を除く)
      • ① 工事管理者の任命
        • 管理建築士は,プロジェクトごとに一級建築士の中からの適任者を選び任命する。
      • ② 工事管理者の主な業務
        • a.設計意図を現場責任者に正確に伝える業務
        • b.施工図,製作図,材料,見本等を設計図書(設計図面,特記仕様書,標準仕様書等)に照らして検討及び承諾する業務。
        • c.工事の確認(検査の立会い及び検査・試験の結果の確認)
        • d.顧客への工事管理報告
      • ③ 設計意図及び工事管理計画の現場責任者への伝達
        • 工事管理者は,設計意図と工事管理計画を現場責任者へ正確に伝達するため,「工事管理品質計画書」を作成する。作成の要領は「工事管理品質計画書作成要領」に従う。また工事管理者は,工事管理説明会を開催し,設計の概要と共に「工事管理品質計画書」について説明する。
      • ④ 施工図,作成図等の検討,承諾
        • 工事管理者は,設計図書及び「工事管理品質計画書」により施工図,製作図,材料,見本等を検討し承諾する。
      • ⑤ 工事の確認
        • 工事の各段階での検査の立会及び検査・試験の結果の確認は「工事管理品質計画書」に基づき実施する。また地方の公共団体,確認審査機関,消防署等による中間検査,完了検査及び顧客への引き渡し検査に立ち会う。
      • ⑥ 設計変更への対応
        • 施工段階で,顧客の要求事項の変更,施工上の制約により設計図書の内容に変化が生じた場合,7.3.7「設計・開発の変更管理」に基づき実施する。
      • ⑦ 顧客への報告
        • 工事管理者は,工事完了後ただちに「工事管理報告書」を作成し,顧客へ提出する。
    • 2) 施工管理(他社設計の建築及び土木工事を含む)
      • ① 現場責任者の任命
        • 建築及び土木部長は,施工管理を実施する現場責任者を,入社5年以上の経験を持つ一級建築士,一級建築施工管理技士,一級土木施工管理技士の中から適任者を選び任命する。
      • ② 現場責任者の主な業務
        • a.工事内容の理解に基づく施工方法の検討(仮設工事計画を含む)
        • b.重点品質管理項目,工程等の検討に基づく「施工品質計画書」の作成,作成の要領は「施工品質計画作成要領」に従う
        • c.施工図,製作図,施工要領書等の作成及び確認
        • d.工事の確認(検査の実施,検査・試験の結果確認)
        • e.特殊工程の管理(7.5.2「製造曜日サービス提供に関するプロセスの妥当性確認」に記述)
      • ③ 施工管理の計画
        • 現場責任者による施工管理は「施工品質計画書」により実施する。「施工品質計画書」には施工管理の工程表,重点品質管理計画書,施工図・作成図作成表,各種検査予定表を含む。
      • ④ 設計変更の依頼
        • 現場管理者は施工上の制約から設計変更が必要になった場合,工事管理者へ「設計変更指示書」を提出し依頼する。現場責任者は,「設計変更指示書」を受け,施工図・製作図を変更し,工事管理者の承諾を得て施工する。
    • 3) 竣工・引渡し・保全の活動
      • 建築工事の竣工引渡し後の定期点検は,「維持管理要領」に基づき,竣工後半年、1年2年経過後実施する。定期点検は,工事担当時の現場責任者が実施する。但し,担当した現場責任者が転籍・転勤等で不在の場合は,建築部の保全担当者が点検を実施する。

7.5.2  製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認
現場責任者は,アウトプットが事後の検香・試験等では検証できない(特殊工程)建設プロセスでは妥当性確認を行う。妥当性確認は,以下の工事について実施する。

  • (1) 妥当性確認を行う特殊工程
    • 1) 既製杭工事  4) 鉄骨溶接工事
    • 2) 場所打杭工事 5) 地下躯体外防水工事
    • 3) 鉄筋圧接工事 6) その他の工事内容により妥当性確認が求められる工事
  • (2) 妥当性確認での実施事項
    • 1) 妥当性確認でプロセスの能力を実証する。
    • 2) 妥当性確認で,下記の段取りを確立する。
      • ① 確認のプロセスのレビュー,及び承認のための明確な基準
      • ② 確認のための設備の承認,及び要員の技能・資格等の適格性
      • ③ 定められた確認方法,手順の使用
      • ④ 記録の方法
      • ⑤ 妥当性確認にいたらなかった場合の再度の妥当性確認
  • (3) 妥当性確認の方法
    • 妥当性の詳細な確認方法については,「殊工程確認要領」による。

7.5.3 識別及びトレーサビリティ

  • (1) 製品の識別
    • 1)適用範囲:製品の誤使用防止のための識別の適用は,施工段階の購入品に対し適用する。
    • 2)責任者:購入品の識別の責任者は,現場責任者とする。
    • 3) 識別の方法
      購入品の識別は,下記の方法による。
      • ① 納入伝票と購入品に記された表示
      • ② 各種施工図(鉄筋配置図,PC版割付図,建具配置図等)
      • ③ メーカーリスト
      • ④ 各種記録(コンクリート打設記録,鉄鋼ミルシート等)
  • (2) 製品のトレーサビリティ
    • 1) 適用範囲:製品のトレーサビリティの適用は,当社の建設業務に適用する。
    • 2) 実施事項
      トレーサビリティのための品質記録の作成・維持管理及び保管責任者は4.2.4「記録の管理」による。品質記録の保管期間,保管方法,検索方法の手順は,「品質記録管理規定」による。

7.5.4 顧客の所有物

  • (1) 適用範囲:当社が建設する建造物に使用するため,又関連の業務のために顧客より支給される物品の維持管理に適用する。
  • (2) 責任者
    • 1) 設計業務のために顧客から預かった事業計画書や基本設計図等の管理の責任者は設計責任者とする。
    • 2) 施工段階で建設物に使用する顧客からの支給品等の管理の責任者は,現場責任者とする。
  • (3)実施事項
    • 1) 顧客支給品の管理の責任者は,顧客からの支給品を受け取ったときには,必ず検収し,不適合品があった場合は,速やかに顧客に連絡しその対応を協議する。
    • 2) 支給品の保管期間に紛失,損傷等使用に不適切と判明した場合は,顧客に報告しその内容を記録する。

7.5.5 製品の保存

  • (1)適用範囲:竣工引渡しまでの建造物の損傷劣化防止のための取扱いについて適用する。
  • (2)責任者:建造物の施工中の管理の責任者は,現場責任者とする。
  • (3)実施事項
    • 1) 購入製品は,損傷・劣化を防ぐように適切に取り扱い保管する。
    • 2) 建築物の最終仕上げ及び機器設置が完了した部分に対しては,引き渡しまでの損傷劣化を防ぐため,適切な養生を行う。

7.6 監視機器及び測定機器の管理

  • (1)適用範囲:当社の建設工事で使用する監視及び測定機器の管理に適用する。
  • (2)責任者:監視及び測定機器の管理の責任者は現場責任者とする。
  • (3)実施事項
    • 1) 現場責任者は現場で使用するレベル及びトランシット等の検査機器の管理を「検査危機管理要領」により実施する。
    • 2) 現場責任者は,管理記録を品質記録として管理する。
    • 3) 現場責任者は,監視及び測定機器の構成標準,校正頻度,保管及び保護等の処置に,また,必要な場合,日常点検方法,頻度等に責任をもつ。
    • 4) 監視及び測定機器の校正に関しては,下記内容を考慮する。
      • ① 校正基準に,社内基準を適用した場合,校正及び検証に用いた基準は,品質記録として管理する。また,メーカー依頼をした場合は,適用した計量標準を校正記録に記載する。
      • ② 校正及び検証の結果は,品質記録として管理する。
      • ③ 校正が完了した監視及び測定機器は,ラベルを貼り,管理する。
      • ④ 監視及び測定機器は,安全装置を組み込み,測定した結果が無効になるような操作が出来ないようにする。
    • 5) 現場責任者は,日常点検異常及び校正基準からの外れが発見された場合の処置方法(製品及び装置)及び過去に遡った妥当性評価方法(製品)について責任をもつ。
    • 6) 現場責任者は,校正基準から外れて発見された場合,過去の製造に遡った妥当性評価の記録は,品質記録として管理する。
  • (4) 現場責任者は,施工段階の監視及び測定機器にコンピュータソフトウェアを使用する場合,基準ソフトウェアによって妥当性を作業前に確認する。