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品質マニュアルの作り方(第10回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第10回

条項4.3 Contract review(契約内容の見直し)

【ポイント】

  • ① 契約内容見直しの手順を確立し,社内での対応能力の確認を行い,足りない場合は対策をとってから契約する。
  • ② 記録を保管しておく。

【背景】

  • ① 顧客の仕様書を吟味せずに受注して,あとから自社内の工程能力不足から契約不履行とならないように,受注するまえに社内の関係部門とよくその仕様を検討しておくことが大切である。
  • ② このような契約内容の見直しの記録は保管しておいて,後日の類似製品の受注のさいの参考にする。

【企業内実施例】

  • ① 新規・現流品の受注の仕方を定めた基準書がある。
  • ② その基準にそってすべての関係部門で受注検討が実施されている。
  • ③ 受注に際して事前検討すべきチェックリストがあり,すべての項目が確認されている。
  • ④ 契約内容を見直しした記録が残っている。
  • ⑤ 顧客の要求する仕様,納期などが文書化されている。

【審査時の質問事項】

  • ① 今まで受注した契約の注文書を見せてください。
  • ② 受注の窓口,情報の伝達ルート,決裁部門を説明してください。
  • ③ 仕様書の検討の仕方を教えてください。
  • ④ 問題を含んだ受注の場合の対応の仕方を説明してください。

【不適合】

  • ① 受注の情報が窓口部門のみに止まっており,たとえば技術部門に直ちに伝達されていない。
  • ② 契約見直しの記録が保管されていない(見直しそのものが実施されていない)。

条項4.4 Design control(設計管理)
条項4.4.1 General (一般)

【ポイント】

  • ① 製品の設計を管理し,確認する手順を設定し,実行する。

【背景】

  • ① 設計は,製品製造の全体の流れのなかでは上位に位置し,そこでの行為は下位の部門に多大の影響を及ぼす。
  • ② 川上で流されたものは,何らかのアクションがないかぎりは,そのまま川下に流れていく。
  • ③ 顧客から求められている製品およびサービスを仕様書として表現する手段は,図面,計算式,試作品などであり,これら手段に求められている要求事項をすべて盛り込む。

【企業内実施例】

  • ① 製品受注後の設計の進め方を定めた基準がある。
  • ② 設計の基準通りに実行されている。

【審査時の質問事項】

  • ① 計画,設計,確認の業務ステップを説明してください。
  • ② 設計の進め方を教えてください。

【不適合】

  • ① 業務ステップが明確にされていない,基準がない。

条項4.4 Design control(設計管理)
条項4.4.2 Design and development planning(設計及び開発の計画)

【ポイント】

  • ① 製品の設計推進における責任を明確にする計画書を作る。
  • ② この推進計画書は状況に応じて計画変更する。

【背景】

  • ① 誰が,いつまでに設計の仕事を終了するかは,品質と納期とコストの確保に大きな影響を与える。
  • ② 設計業務は知的集約労働であるだけに,開始当初に投入時間を精度よく見積もり,完成納期を予測することは困難である。したがって,推進の状況に応じて計画を変更していくことを,関係部門と連携をとりつつ進めていくことが重要になる。

【企業内実施例】

  • ① 設計の計画書(大日程計画)作成の方法,計画変更の方法,責任部門,関係部門などを定めた基準がある。
  • ② 基準に従って計画書が作成され,責任分担,日程などが明確になり,徹底されている。
  • ③ 大日程計画の推進状況がチェックされ,状況に応じて大日程計画を修正,徹底がなされている。

【審査時の質問事項】

  • ① 計画推進時の関係部門はどこですか?
  • ② 設計大日程計画を見せてください。
  • ③ どのようなときに大日程計画を変更するのですか?

【不適合】

  • ① 設計推進の基準がない,不十分である。
  • ② 計画変更するときの基準がない,不十分である。

条項4.4 Design control(設計管理)
条項4.4.2 Design and development planning(設計及び開発の計画)
条項4.4.2.1 Activity assignment(活動の割当て)

【ポイント】

  • ① 設計およびその検証には適切な手段を与えられた有資格者を割り当てる。

【背景】

  • ① 設計という仕事はノウハウの固まりであり,個人の資質がそのまま結果に反映されやすい。標準化を進めても限界があり,最後は設計者のセンスによるところが多い。もちろん, 標準化そのものについては知っておく必要がある。
  • ② したがって設計に従事する人は,単に業務負荷から割り当てられるのではなく,経験・資格・能力から割り振られるべきである。

【企業内実施例】

  • ① 設計業務を担当する人の職務・等級・格付けなどの基準がある。
  • ② 基準に則って負荷の割り当てがなされている。

【審査時の質問事項】

  • ① 設計の経験,資格は何で判断していますか?
  • ② その判断基準を説明してください。
  • ③ 設計者の割当表を見せてください。

【不適合】

  • ① 基準に達していない人が設計を行っている。
    〔注〕 会社ごとに何らかの資格制度があるので,その制度が明確になっており,実行されていればよい。

条項4.4 Design control(設計管理)
条項4.4.2 Design and development planning(設計及び開発の計画)
条項 4.4.2.2 Organizational and technical interfaces(組織及び技術上の相互関連)

【ポイント】

  • ① 設計を推進するためのインターフェース(相互関連)を明確にしておく。ここでいうインターフェースとは,製品検討会議,手配会議,評価(審査)会議などのことをいう。
  • ② それらインターフェース活用の仕方を文書化し,記録に残し,やり方を定期的に見直す。

【背景】

  • ① 設計は設計部門だけでできることではない。良い設計とは,仕様書に記述されたものを完成させるのに,社内の現有技術を見定め,かつ時代の先端の技術を,無理のない範囲で取り入れるような設計のことである。
  • ② 加工技術の選択,加工順序,公差の設定,材料,計測など,関係部門との検討課題は数多くある。

【企業内実施例】

  • ① 設計推進上,関係部門と情報のやりとりをする会議などが決まっている。
  • ② 基準通りに会議などが行われている。
  • ③ 工程ごとの品質達成度,課題の明確化などを定めた基準がある。

【審査時の質問事項】

  • ① 設計推進のための会議などについて説明してください。
  • ② その会議の基準を見せてください。
  • ③ その会議はいつ,どのように,誰が参加して行われるのですか?
  • ④ 会議録を見せてください。

【不適合】

  • ① インターフェース(相互関連)が明確になっていない。
  • ② 基準の見直しが行われておらず,現状との乗離が大きい。