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品質マニュアルの作り方(第9回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第9回

条項4.1 Management responsibility(経営者の責任)
条項4.1.2 0rganization(組織)
条項4.1.2.3 Management representative(管理責任者)

【ポイント】

  • ① 品質システムを構築,履行,維持していく権限と責任を持った管理責任者を明確にする。 ここで管理責任者とは,品質システムを社長(事業部長)に代わって統括する責任者のことをいっている。

【背景】

  • ① 製品品質またはサービスの品質を,何ごとにも優先する最重要事項と標傍していても,部門の体面上,売上確保など,他の要因で品質が犠牲にされる場合が多い。
  • ② 品質についての社長(事業部長)からの委嘱を社内に明確にし,管理責任者が全権限を持って活動できる位置づけにする。

【企業内実施例】

  • ① 品質システムの履行,維持のために全権限と責任を持つ管理責任者が決めてある。
  • ② 管理責任者は品質システムの管理を行っている。
    〔注〕通常は品質保証部長が適切である。

【審査時の質間事項】

  • ① 誰が品質の管理責任者ですか?
  • ② それはどのようにして明確にされていますか?

【不適合】

  • 〔注〕「他の責任とかかわりなく(irrespective of other responsibility)…… 」とは,特に品質保証部長でなくても,実質的に品質システムを管理していくことのできる人ならよい,という意味である。利害関係のないことが望ましい。

条項4.1 Management responsibility(経営者の責任)
条項4.1.3 Management review(経営者による見直し)

【ポイント】

  • ① どのようなメンバーで,どのような間隔で,どんな場面で(定期, トラブル時,内部監査時など),どのように品質システムを見直すかを定め,その記録を残す。

【背景】

  • ① 品質システムは生きものである。一度作ったからといっても万全でなく,常時改善していかなければならない。定期, トラブル時,内部監査時に品質システムの見直しをし,結果を残していくことにより,品質システムの実現をはかっていく。
    ISO規格20項目のなかで最も重要性が高いものの1つにランクされている。
  • ② したがって参加する人は役員,事業部長,部長などのかなり高位のレベルの人たちで,その人々によって品質システムを見直す必要がある。
  • ③ 日本従来の“QC診断”“社長診断” と考え方は同様であるが,対象を品質システムに絞り,より実務的に行う。

【企業内実施例】

  • ① 品質システムを見直す基準がはっきりしている。
    • ―どのような場面か(定期,市場クレーム,工程異常時,内部監査時など)。
    • ―何を対象にするか
    • ―誰が参加するか
    • ―どのような方法でやるか
  • ② 基準通りに実施され,記録が保管されている。

【審査時の質問事項】

  • ① 経営者による品質システムの見直しの記録を見せてください。
  • ② 品質システムを見直す基準を聞かせてください。
  • ③ 品質システム見直しの手順を教えてください。

【不適合】

  • 〔注〕経営者とは通常,役員のことをいうが,ここでは事業部長,部門長,品質保証担当者の入っている会議を意味する。
    記録としては規程,基準などの改訂履歴か会議録でよい。

条項4.2 Quality system(品質システム)

【ポイント】

  • ① ISO9000シリーズ規格の要求事項に適合する文書化した品質システムを構築するために,規程,基準,手順書,図面,指示書などの標準類を作成する。
  • ② この品質システムの規程,基準,図面,手順書および指示書が効果的に活用されている。

【背景】

  • ① 日本ではややもすると文書化されずに,暗黙の了解のもとに仕事が進められることが多いが,ISO9000シリーズ規格では,きちんと文書化することを求めている。
  • ② 文書には「品質マニュアル」を頂点とする各種標準類があるが,誰が読んでも理解できるように平易な文章で記述し,特に5W1 Hを明確にする。
  • ③ 従来の日本式の品質管理で培った品質システムは極力そのまま使い,ISO9000シリーズ規格による品質システムとの融合をはかる。

【企業内実施例】

  • ① 品質マニュアルが作成されている。
  • ② 品質マニュアルを関係者に徹底する方法が定められている。
  • ③ 品質マニュアルに盛り込まれた規程,基準,ルールが徹底され,実行されている。
  • ④ 定期的に標準を見直し,時代に応じた技術,技能,装置,計測に改善している。
  • ⑤ 品質システムの運用結果を計るメジャーが決まっている(市場クレーム,工程内不良など)。

【審査時の質問事項】

  • ① 品質マニュアルを見せてください。
  • ② 品質マニュアルに盛り込まれた規程,基準などの説明をしてください。
  • ③ 品質マニュアルの配布先を見せてください。
  • ④ 品質マニュアルの改訂の履歴を見せてください。
  • ⑤ 改訂の手順を教えてください。

【不適合】

  • ① 品質マニュアルにISO9000規格の条項1~20に対応した内容が盛り込まれていない。
    〔注〕品質マニュアルと現状との不一致(たとえば職制名など)は数カ月以内なら良しとする。ただし品質マニュアル改訂の基準があり,そのように規定されていること。