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品質マニュアルの作り方1994年対応版(第10回)

平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第10回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

条項 4.6 Purchasing(購買)
条項 4.6.1 General(一般)

  • 【ポイント】
    • ① 購買品が会社の規定要求事項に適合していることを確認するための手順を文書化する。
  • 【背景】
    • ① 材料・原料などの購買は完成品の品質確保に重要な要件である。
    • ② 購買活動はコスト,納期,品質という順序で管理のウエートがおかれがちである。
    • ③ 品質システムにおいては,購買品に対する品質要求事項を明確にして,この事項に購買 品が適合していることを確認するシステムが必要である。
    • ④ 購買品には,大別してカタログ(標準品)の購買と,特注品の購買の2種類がある。加えてこの4.6項購買の範疇には業務の一部外部委託も含まれる。
  • 【企業内実施例】
    • ① 購買品の規定要求事項が定められている。
    • ② それが文書化され,関係部門に伝達されている。
    • ③ 購買品が規定要求事項に適合していることを確認する手段が定められている。
    • ④ 基準通りに適合しているかどうかの確認が実施されている。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 購買にはどんなものがあるか説明してください。
    • ② 購買品の規定要求事項を説明してください。
    • ③ 購買品が規定要求事項に適合していることを,どのようにして確認していますか?
  • 【不適合】
    • ① 規定要求事項が定められていないか,不十分である。
    • ② 購買品と規定要求事項とが適合しているかどうかの確認手段が定められていない。

条項 4.6 Purchasing(購買)
条項 4.6.2 Evalution of subcontractors(下請負契約者の評価)

  • 【ポイント】
    • ① 会社は品質を含む下請負契約要求事項を満たしうる能力に基づいて,下請負契約者を選定する。またその選定の基準がある。
    • ② 下請負契約者に対する品質管理活動を定める。
    • ③ 下請負契約者の一覧,能力,これまでの実績についての記録がある。
  • 【背景】
    • ① 下請負契約者(いわゆる外注)が,完成品の品質に与える影響は大きい。
    • ② 下請負契約者選定にあたっては下請負契約者の履歴,実績,工場の実態,設備,人材など,あらゆる角度から評価をしなくてはならない。
    • ③ これらは新規選定時に実施するだけでなく,定期的に実施して,常に下請負契約者の品 質管理レベルを把握しておき,それを取引に影響させることである。
    • ④ 下請負契約者の種類には,外部委託業者(清掃,警備,配達など)と,いわゆる外注業者(部品を支給して加工の一部を委託する構内外注も含む)の2種類がある。
  • 【企業内実施例】
    • ① 品質要求を含む下請負契約要求事項が定まっている。
    • ② 下請負契約者選定の基準がある。
    • ③ 選定後に,下請負契約者を活用するための管理方法(品質保証システム監査,工程監査,技術指導など)が定まっている。
    • ④ 下請負契約者の能力,実績が記録としてある。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 下請負契約者に対する品質要求事項を説明してください。
    • ② 下請負業者の選択の仕方を教えてください。
    • ③ 下請負契約者の一覧表を見せて下さい。
    • ④ 下請負契約者の能力,実績の記録を見せて下さい。
    • ⑤ 活用にあたっての管理方法にはどんなものがありますか?
  • 【不適合】
    • ① 下請負契約者選定の基準がない,または明確でない。
    • ② 品質を含む要求事項が明確でない。
    • 〔注〕基準に達していなくても,その下請負契約者を活用せざるをえない場合は,特別採用などの基準が設定されていること。

条項 4.6 Purchasing(購買)
条項 4.6.3 Purchasing data(購買データ)

  • 【ポイント】
    • ① 購買文書には,発注物品を明確に記述することを基準化しておく。
      • ―   形式,種類,スタイル,等級。
      • ―   仕様書,図面,検査指示書,技術データ。
      • ―   品質システム。
  • 【背景】
    • ① 材料などを購買する場合には,どのようなものが欲しいか,発注物品の仕様を規定要求事項などでできるだけ具体的に相手に伝えることが大切である。
    • ② 伝える手段として通常は技術データを含んだ図面が多いが,その他,工程手順書,設備 説明書,検査指示書なども有用な手段である。ここには適用する品質システムの国際規格 について記述がなされる。たとえばISO 9001を適用すると記述する。
  • 【企業内実施例】
    • ① 購買文書に添付するデータ,規定要求事項,検査規格などの提出文書の種類を定めた基 準がある。
    • ② 形式,種類,スタイル,等級など記入される内容が,基準で明確になっている。
    • ③ 提出された書類の変更時の徹底方法,旧文書の回収方法,責任部門を定めた基準がある。
    • ④ 下請負契約者に提出する書類の窓口,提出時期,関係部門,審査方法などを定めた基準がある。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 購買文書(発注書)を見せてください。
    • ② 購買文書に添付するデータ,文書は何ですか?
    • ③ 注文するまえに購買文書の規定要求事項の審査,承認をしていますか?
    • ④ その審査,承認の責任者は誰ですか?
  • 【不適合】
    • ① 購買文書に,定められた購買データ,標準書が含まれていない。
    • ② 購買文書の審査,承認がなされていない。
    • ③ 変更管理が不明確であり,徹底されていない証拠がある。
    • 〔注〕 旧文書が注記もなく,ファイルされている。

条項 4.6 Purchasing(購買)
条項 4.6.4 Verification of purchased product(購買品の検証)
条項 4.6.4.1 Supplier verification at subcontractor’s premises
(下請負契約者先での供給者による検証)

  • 【ポイント】
    • ① 下請負契約者の工場において購買品を検証する。
    • ② この検証の仕方を購買文書の中に.製品の検証方式および出荷方式として規定する。
  • 【背景】
    • ① 供給者は,外注工場を新しく活用し始めてから活用をし続けているあいだは,下請負契 約者である外注工場を品質管理指導していかなければならない。購買製品ごとに出荷検査 方式を定め,それを正しく下請負契約者に伝えなければならない。
    • ② 特に仕様の変更などがある場合には,社内のみならず,海外も含めた下請負契約者に検 証方式の変更を徹底しなくてはならず,その仕組みを構築しておく必要がある。
  • 【企業内実施例】
    • ① 下請負契約者からの購買品のリストが作成されている。
    • ② 購買品の検証の仕方が購買文書のなかに規定されている。
    • ③ 購買品の出荷検査の仕方が購買文書のなかに規定されている。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 購買品の一覧表を見せてください。
    • ② 下請負契約者の工場において実施する製品の検証の仕方を教えてください。
    • ③ 下請負契約者の工場において実施する製品の出荷の仕方を教えてください。
  • 【不適合】
    • ① 下請負契約者の工場における製品の検証の仕方が決まっていない。
    • ② 検証を実施した記録がない。

条項 4.6 Purchasing(購買)
条項 4.6.4 Verification of purchased product(購買品の検証)
条項 4.6.4.2 Customer verification of subcontracted product
(下請負契約された製品の顧客による検証)

  • 【ポイント】
    • ① 契約に定めがある場合,顧客は供給者の工場,またはその外注に立ち入ることができ, 品質の適合性を確認することができる。
    • ② 供給者は立入り検査とは別に品質保証活動をしなくてはならない。
    • 〔注〕 ここで供給者とは,この品質マニュアルを作ろうとしているメーカーのことをいい,顧客(たとえばOEM先)とは供給者の顧客のことをいう。
  • 【背景】
    • ① 顧客が供給者の工場に立入り調査をすることはよくある。年間を通して定期的に品質監 査をしたり,購入者の品質システムの説明のために供給者の工場を訪問したり,品質月間 の活動の一環として査察をしたりする。
    • ② これはあくまでも顧客の立場からの品質活動であって,供給者側がこの立入り調査をも って自社の品質活動が行われたとするべきではない。
  • 【企業内実施例】
    • ① 契約に顧客の立入り調査の権利がうたわれている。
    • ② 取引先または外注工場に対する品質監査の基準がある。
    • ③ その基準には監査員,監査期間,監査項目,評価基準などが載っている。
    • ④ 工場監査実施後のフォローの方法が決まっている。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 取引先または外注工場の品質監査についての契約はありますか?
    • ② あれば,品質監査基準を見せてください。
    • ③ 品質監査における評価基準を説明してください。
    • ④ 品質監査の結果をどのように活用していますか?
  • 【不適合】
    • ① 立入り調査の品質監査結果を正しく使っていない。

条項 4.7 Control of customer-supplied product(顧客支給品の管理)

  • 【ポイント】
    • ① 顧客の支給した物品の確認,保管および維持について手順を定める。
    • ② 不適合品については購入者に報告する。
  • 【背景】
    • ① 一般消費者向けの製品製造(市場型製品)においては,この顧客による支給品というもの はあまり例をみないが,OEM製造または専門業者向けの特注品(契約型製品)などにおいては,顧客から部品を支給することが多くある。
    • ② この場合,顧客からの支給品であるという理由で遠慮しがちであるが,受入検査,良否 の判定などの品質活動をキチンと行う。
  • 【企業内実施例】
    • ① 顧客からの支給品について,その確認,保管および維持について定められた基準がある。
    • ② その手順にそって確認が行われている。
    • ③ 顧客への報告の基準がある。
    • ④ 不適合品の報告が顧客に行われており,その記録が保管されている。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 顧客からの支給品はありますか?
    • ② その確認,保管および維持の手順を説明してください。
    • ③ 顧客への確認結果の報告の基準はありますか?
    • ④ その記録を見せてください。
  • 【不適合】
    • ① 支給品の確認の手順書がない,またははっきりしていない。
    • ② 顧客への報告の記録がない。