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品質マニュアルの作り方1994年対応版(第29回)

平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第29回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

条項4.11 検査,測定及び試験装置の管理
検査,測定および試験の装置について基本的な考え方を述べている。ポイントは次の通りである。

4.11.1一般

  1. 会社は,検査の精度を保持するために,検査・測定・試験の装置を管理・校正・維持する。
  2. 品質管理部は,会社における校正の対象になる検査,測定および試験の装置を制定し,一覧表を作成する。
  3. 会社は,顧客から測定装置の技術データ,校正データを要求されたときはいつでも提供し,計測装置の精度が適切であることを証明する。

4.11.2 管理手順

  1. 品質管理部は,計測器の管理について全社的な責任を負い,その詳細を計測器管理標準に規定する。
  2. 会社において実施する計測器管理の管理基準は次の通りである。
    • 1)品質管理部は,測定項目および必要な精度を決定し,必要な精度を有する適切な測定装置を規定する。
    • 2)すべての測定装置を登録し,識別する。校正対象機器は,規定の間隔でこれらを校正・調整する。
      この際,国際標準または国家標準とのあいだに法的に有効な関係を持つ認定済み装置を使用する。標準がない場合,校正に用いた基準を文書化する。
    • 3)測定器の校正に用いたプロセスを明確にしておく。
      この詳細事項には,装置の形式,明確な識別,配置場所,点検頻度,点検方法,判定基準,および結果が不満足に終わった場合の処置方法などを含む。
    • 4)検査・測定に使用する装置は台帳に登録し,管理番号を表示したラベルを貼り付けて識別する。
      校正を行い合格した装置には,合格ラベル(承認済み識別記録)を貼付する。
      合格ラベルには有効期限を表示する。
    • 5)校正の記録は「測定機器管理カード」に記録し保管する。
    • 6)検査・測定・試験の装置が校正基準から外れていることが判明した場合,過去の検査・測定・試験のデータを調査し,問題が発生していないか確認し,検査結果の有効性について評価を行う。
    • 7)適切な環境条件を確保した上で,校正・検査・測定・試験を行う。
    • 8)検査・測定・試験の装置の取扱い・保存・保管は,精度および使用適合性が確実に維持されるような方法で行う。
    • 9)検査・測定・試験の装置は,試験用ハードウェア,ソフトウェアの両方を含めて,保護手段を講じて,校正の設定を無効にできないようにする。

サポート文書類
計測器管理標準 QM 0802

条項 4.12 検査・試験の状態
検査及び試験の状態について具体的に識別の仕方を述べている。

  1. 会社は,部品,材料,製品の検査と試験の状態を次の方法で識別する。
  2. 部門 適合品 不適合品
    受入検査及び保管 部品受入通知番号,日付,
    合格ラベル
    検査スタンプ,サイン
    不合格通知
    分離ラベル
    分離登録,場所
    巡回検査 検査スタンプ
    サイン,日付
    不合格容器,不合格ラック
    不合格場所
    所定検査,試験 検査スタンプ 不合格容器,不合格ラック
    不合格場所
    最終検査と試験 検査スタンプ
    ラベル添付
    不合格容器,不合格ラック
    不合格場所
    出荷検査 場所
    検査スタンプ
    不合格ラベル
    品質報告書
  3. 部品,材料,製品を扱う部門は,現品がどのような状態にあるのかを常に明確にておく必要がある。
    • 1) 検査されていない。
    • 2) 検査に合格している。
    • 3) 検査されて不合格である。

サポート文書類
 製品品質検査標準 QM 0804
 受入検査標準 QM 0809
 工程内検査標準 QM 0204
 出荷検査標準 QM 0811
 品質検査書標準 QM 0807

条項 4.13 不適合品の管理
不適合品の管理では,再審及び処置について具体的に記述している。

4.13.1 一般

  1. 検査実施部門は,会社において実施した検査で検出された不適合品には,それぞれの検査場所で色と記述による識別表示(赤色または不良・不合格の明示)を行い,他のものと混同しないように明確に分離または隔離する。
  2. 検査実施部門は,不適合品を意図されていない使用ができないように予防し,認識後,必要な場合は,関係部門へ通知する。
  3. 品質管理部は,不適合品のなかで重要な内容については“品質改善委員会”において対策案を協議し,原因部門および対策部門に改善への取組みを依頼する。
    なお不適合品の記録は,品質管理部で保管する。
    詳細については不適合品管理標準に基づく。

4.13.2 不適合品の内容確認及び処置

  1. 品質管理部は,不適合品の再審およびその処置に関する責任を有する。
  2. 不適合品は次のいずれかの方法により処置される。
    • 1)修正:要求事項に適合するように再加工または修正,追加工する。
    • 2)特採:性能上,問題ないと判断した場合に,該当部品を使用する。
      • ① 補修をして特別採用する。
      • ② 補修をしないで特別採用する。
    • 3)格付け変更:グレードを下げて用途を変更する。
    • 4)廃棄:不合格品として不採用と判断し廃棄とする。
    • 5)返却:現物を発注元に返却し代品を納入させる。
    • 6)保管:一時保管しておき原因追究や調査を行う。
  3. 補修または再加工された製品は,品質計画書または手順書の要求事項に従って再検査する。
  4. 規定要求事項に適合しない製品を特採してもらおうとするときは,営業は顧客と協議を行い,顧客に報告,依頼し,了解をもらってから特別採用とする。
  5. 品質管理部は,特採とした不適合の内容および補修の内容を記録に残す。

サポート文書類
 不適合品管理標準 QM 0813

条項4.14 是正処置及び予防処置
是正および予防処置について,工程内不良,市場重大クレーム,市場一般クレームに分けてそれぞれを詳述している。

4.14.1 一般

  1. 会社は,是正処置を迅速に有効的に実施する。
  2. 会社は,品質システムと製造工程におけるすべての欠点を,顧客に対してわれわれの品質を保証するため,なるべく早期に取り除かなければならない。
  3. 会社がすべての欠点に対して迅速かつ有効的な対策をとることは,全従業員に品質問題の意識高揚をはかる意味で非常に有意義なことである。
  4. 会社は,是正および予防処置の結果から生ずるすべての変更を実施し,手順書に記録する。

4.14.2 是正処置

  1. 是正処置の手順の次の通りである。
    • 1)工程内不良
      • ① 検査員は,不良品が工程で発見されたことを監督者に連絡し,その不適合の理由が発見されるまでは作業を中止することを勧告する。
      • ② 品質管理部担当者は,該当のロットを隔離し,記録する。
      • ③ 品質管理部担当者は,不良原因を調査し,不良原因調査報告書を作成する。
      • ④ 原因が明確にされなかった場合は,その旨を品質管理課長に報告する。
      • ⑤ 調査しても原因が明確にならない場合,品質管理部は設計・製造・技術部門に連絡し,アドバイスを求める。
      • ⑥ この調査には統計的手法が活用される。
    • 2)市場重大クレーム
      • ① 品質管理部は,市場重大クレーム連絡を営業部から受けた場合,そのクレームの原因がはっきりするまで,その内容によって,次のどれか1つの対応をとる。
        • 後続の製品の出荷を停止する。
        • 後続の製品の製造を中止する。
        • 現状のままでいる。
      • ② 品質管理部担当者は,該当製品のシリアルナンバーを記録する。
      • ③ 品質管理部担当者は,不良原因を調査し,クレーム調査報告書を作成する。
      • ④ 原因が明確にされなかった場合は,その旨を品質管理課長に報告する。
      • ⑤ 調査しても原因が明確にならない場合,品質管理部は設計・製造・技術部門に連絡し,アドバイスを求める。
      • ⑥ この調査には統計的手法が活用される。
    • 3)市場一般クレーム
      • ① 品質管理部門は,毎週,市場一般クレーム分析レポートをまとめ,部長,課長,監督者に回覧する。
      • ② 管理・監督者は,この市場一般クレーム分析レポートの内容を所属の従業員に周知する。
      • ③ 品質管理部門は,次の目的のために定例ミーティングを開催する。
        • a)不適合の一般的特徴と傾向の討議。
        • b)特定の不適合についての分析とブレーンストーミングの実施。
        • c)システム,工程の変更の確認。
          • 部品,材料の欠陥対策。
          • 製造方法の欠陥対策。
          • 機械装置の欠陥対策。
          • 人的誤りの対策。
        • d)不適合の再発防止のためのシステム,工程変更の上位者への確認。
        • e)最小のコストで生産できる効果的品質システムの討議。

4.14.3 予防処置

  1. 会社は,是正処置を講じると同時に今後の再発防止のための予防処置を講じる。
  2. 予防処置の手順には次のことを含む。
    • 1)不適合の潜在的根本原因を調査し,解析し,除去するために,製品品質に影響する工程および作業,特採,監査結果,品質記録,サービス報告,顧客の苦情のような適切な情報源を利用する。
    • 2)予防処置を必要とするあらゆる問題を取り扱うために必要なステップを決定する。
    • 3)予防処置の開始と,それが効果的であることを確実にするための管理の適用。
    • 4)手順の変更を含む講じられた予防処置に関連する情報を,経営者による見直しのために提出する。
  3. 品質システム上必要な場合には,経営者による見直しを受ける。

サポート文書類
 不適合品管理標準 QM 0813
 苦情処理管理標準 QM 0302
 返品処理標準 QM 0303
 再発防止標準 QM 0814