ISO情報

品質マニュアルの作り方1994年対応版(第30回)

平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第30回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

条項4.15 取扱い,保管,包装,保存及び引渡し
それぞれのポイントを簡潔に述べている。

4.15.1 一般

会社の製品(購入品,材料,加工部品,半製品,本体,ユニット,補給品など)の損傷,劣化,誤用を事前に防ぐために,取扱い,保管,包装,保存および引渡しについて以下に規定をし,実施する。

4.15.2 取扱い

製品を取り扱う者は,購入品,材料,加工部品,半製品,本体,ユニット,補給品などの損傷または劣化を防止するために製品取扱標準に従って実施する。
また運搬時には適切な運搬用具や容器などを使用する。
詳細は,製品取扱標準に基づき作業する。

4.15.3 保管

  1. 生産管理部(倉庫担当)は,使用または出荷前の購入品,材料,加工部品,半製品,本体,ユニット,補給品などの保管に際しては,納入ロット番号により識別をし,製品取扱標準に従い,定められた保管場所に保管する。
  2. また,腐食,劣化などによる損傷を防止するため,錆止めや袋詰めなどの保護あるいは腐食,劣化からの回避対策をとる。
  3. 梱包箱に保管条件が表示されている場合は,それに従い保管する。
  4. 保管の状態を確認するため,一定のインターバルで製品,部品の状態をチェックする。
  5. 生産管理部(倉庫担当)は,製品,部品の入出庫管理についての責任を有する。

4.15.4 包装

  1. 生産管理部(倉庫担当)は,製品の輸送および顧客引渡し後の保管での損傷または劣化を防止するために包装を行う。
    包装および梱包は,手段,方法,手順について定められた梱包仕様標準に従って行う。
  2. 技術部は,梱包仕様標準の制定を行う。
  3. 生産管理部(倉庫担当)は,輸出においては特に腐食・劣化の予防に注意を払い,包装作業にあたっては輸出梱包仕様に従う。

4.15.5 保存

  1. 生産管理部(倉庫担当)は,一定期間を超えて長期に保存される購入品,材料,加工部品,半製品,本体,ユニット,補給品などについては,錆止めおよび梱包を十分に行い,指定された保管区域に保存する。
  2. 出庫時には,それらの劣化を確認するための検査を行い,その後,出庫または出荷を実施する。
  3. 長期間の保存の状態を確認するため,一定のインターバルで製品,部品の状態をチェックする。

4.15.6 引渡し

  1. 会社は,契約に定められている場合,製品を当社の責任で顧客先に配達・手配する。
  2. 会社は,外部運送会社を使って配達を実行するが,次の事項を確認する。
    • 1)製品が正しく明確に識別されているか。
    • 2)正しい書類が添付されているか。
    • 3)包装は満足な状態になっているか。
    • 4)納期通りであるか。

サポート文書類
 製品取扱標準 QM 0704
 製品保管標準 QM 0502
 倉庫管理標準 QM 0503
 包装・梱包標準 QM 0705
 出荷業務管理標準 QM 0504
 サービス業務管理標準 QM 0304

条項4.16 品質記録の管理
記録の保管期間は,製造製品の性格から長めになっている。

  1. 会社は,品質記録の識別,収集,見出し付け,ファイリング,保管,維持および廃棄のための手順を確立し,維持する。
  2. これらの記録は,JISZ 9901;1994に準拠する会社の品質システムと,顧客の要求事項に適合することを証明する,客観的証拠となるものである。
  3. 会社は,データが即座に検索でき,製品品質の分析ができ,かつ効果的な品質管理システムの運用を可能にする,組織的な品質記録の制定と活用,保管を行う。
  4. 記録がコンピュータ・ファイルに保管されている場合,アクセス・コードはシステム全体の保全を前提に活用される。
  5. 会社の定義する記録は次の通りである。
    なお紙に書かれたものばかりでなく,電子情報媒体も記録の1つとして扱う。
  6. 主な記録の保管年数は次の通りである。
文書 最低保管期間
契約書 10年
注文書 10
設計図 10
仕様書 10
計測器校正書 10
受入検査書 7
工程内検査書 7
出荷検査書 10
内部品質監査書 5
経営者による見直し記録 5
特別採用書 5
外注監査報告書 5

注〕 上記の表は例として挙げたもので,詳細は品質記録管理標準を参照のこと。
サポート文書類
 品質記録管理標準 QM 0812

条項4.17 内部監査記録
内部品質監査について,その推進の仕方について述べている。

  1. 会社は,品質システムの継続した改善活動推進のために内部品質監査活動を行う。
  2. 品質管理部は,内部品質監査推進事務局として内部品質監査標準を策定し,その実行と記録の作成,保管に責任を持つ。
  3. 内部品質監査は次の単位ごとに行う。
    • ① 製品ごと。
    • ② 部門ごと。
    • ③ システムごと。
    • ④ 工程ごと。
  4. 内部品質監査標準には次のことが詳細に記述されている。
    • ① 監査実施の目的。
    • ② 監査推進者。
    • ③ どんなことを監査するか。
    • ④ どのように,どこで監査を実施するか。
    • ⑤ 誰が結果を報告するか。
    • ⑥ どのように対策を実施するか。
  5. 内部品質監査は,会社に登録された経験ある内部品質監査員によって実施される。

サポート文書類
 内部品質監査標準 QM 0801
 製品品質検査標準 QM 0804
 製品評価標準 QM 0805

条項4.18 教育・訓練
教育訓練についてそのポイントを簡潔に述べている。

  1. 会社全体の教育訓練の総合責任は社長にあるが,それぞれの部門長は,その部門における教育訓練に責任を負う。
  2. 人事部長は,会社の教育訓練委員会の代表としてその任に当たる。
  3. 現在,会社の推進している教育訓練には,電子機械,半導体コントロール機械を使用しているが,適切な時期ごとに技術革新にそった内容に変更していく。
  4. 会社は,全従業員の教育訓練計画を策定し,すべての部署の従業員に集合教育と,OJT教育(職場内教育訓練)をできるかぎり機会均等,公平に実施する。
  5. 会社は,教育訓練について定められた周期で内部品質監査を行う。
  6. 教育訓練委員会は,教育訓練方針と計画について審査と承認を行う。
  7. すべての教育訓練の記録は,手順に従って維持する。

サポート文書類
 教育訓練標準 QM 0102

条項4.19 付帯サービス
付帯サービスについて,市場型商品と契約型商品に大別して説明している。

  1. 市場型商品
    会社は,商品カタログでうたっている期間,顧客からのサービス部品(補給品)の供給依頼に対応できるようにする。
    詳細については,サービス業務管理標準による。
  2. 契約型商品
    付帯サービスが顧客の要求事項として規定されている場合,手順書を作成・維持した上で,以下の付帯サービスを実施する。
    顧客には,サービスが要求事項を満たしていることを報告し,検証してもらう。
    • 1)社内立会いサービス:顧客が会社を訪れるときは,顧客指定の機械で実稼働試験をし,顧客要求事項を満たしていることを検証する。
    • 2)客先立会いサービス:顧客が顧客先を訪れることを望むときは,顧客指定の機械で実稼働試験をし,本体製品への据付け作業を行い,顧客の要求する性能,仕様を満たすことを検証し,引渡し後検収書をいただく。
    • 3)検収後:アフターサービスまたは巡回サービスを行う。
  3. サービス業務管理標準には次の内容を含む。
    1. サービスパーツ(補給品)の支給。
    2. サービスマンの教育訓練。
    3. サービスブリテンの発行。
    4. クレーム,苦情処理。
      ・顧客からの苦情およびクレーム処置に関しては,4.14.1項“是正処置”に基づいて是正対策を行い,かつ再発防止策(予防処置)を実施する。

サポート文書類
 サービス業務管理標準 QM 0304

条項4.20 統計的手法
統計的手法について簡潔にポイントを述べている。

4.20.1 必要性の明確化

会社は,統計的手法を活用することの必要性を認識し,工程能力の把握,製品品質特憎の把握を含めた品質管理全般に統計的手法を応用する。

4.20.2 手順

品質管理部は,品質管理全般に統計的手法を応用する手順を統計的手法活用標準に定める。
会社は,QCサークル活動を積極的に推進しており,QCサークル活動に統計的手法を活用しているが,この活用も統計的手法活用標準に従う。

サポート文書類
 統計的手法活用標準 QM 0815

付録 標準書一覧

制定部門 標準書名 文書番号
人事部 組織標準
教育訓練標準
文書管理標準
QM 0101
QM 0102
QM 0103
工場 作業標準苦標準
設備管理標準
治工具標準
工程内検査標準
QM 0201
QM 0202
QM 0203
QM 0204
営業部 契約見直し標準
苦情処理標準
返品処理標準
サービス業務管理標準
QM 0301
QM 0302
QM 0303
QM 0304
購買部 購買管理標準
外注会社評価標準
取引基本契約書標準
顧客支給品管理標準
QM 0401
QM 0402
QM 0403
QM 0404
生産管理部 工程管理標準
製品保管標準
倉庫管理標準
出荷業務管理標準
QM 0501
QM 0502
QM 0503
QM 0504
設計部 仕様書管理標準
設計計画標準
設計審査標準
設計妥当性確認標準
設計変更標準
変更指示書標準
QM 0601
QM 0602
QM 0603
QM 0604
QM 0605
QM 0606
技術部 技術図面管理標準
特別採用標準
トレーサビリティ管理層標準
製品取扱標準
包装・梱包標準
QM 0701
QM 0702
QM 0703
QM 0704
QM 0705
品質管理部 内部品質監査標準
計測器管理標準
部門監査標準
製品品質検査標準
製品評価標準
計測器校正標準
品質計画書標準
品質マニュアル標準
受入検査標準
限度見本管理標準
出荷検査標準
品質記録管理標準
不適合品管理標準
再発防止標準
統計的手法活用標準
QM 0801
QM 0802
QM 0803
QM 0804
QM 0805
QM 0806
QM 0807
QM 0808
QM 0809
QM 0810
QM 0811
QM 0812
QM 0813
QM 0814
QM 0815

付録3 モデルB社(概要書タイプ)

  • (1)モデルB社の設定条件
    スイス企業で,マイコン制御の民生製品の完成品メーカーである。グループとして欧州の各国に工場をもっているが,スイス工場は人員がおよそ300人で,欧州各地からのサブアッセンブル品をここに集め最終組立工程を担当している。1990年にISO 9002の認証を受けている。
  • (2)モデルB社の品質マニュアルの体裁,特長
    • ① 総ページ数が35ページとコンパクトにまとまっている。
    • ② 会社のロゴあるいは製品認証マークも入っておらず,非常にプレーンで簡潔な形態をとっている。
    • ③ 表紙には「このマニュアルはB社の資産であり,何人もQA課長の許可なくコピーをしてはならない」胸が記されており,加えてConfidential(機密)とControlled(管理下)と刻印された赤いスタンプが押されている。
    • ④ 各ページに会社名(グループ名)と工場名が冒頭中央に印刷されている。
    • ⑤ マニュアルの管理・非管理コピーの区分を明確にしている。
      • 管理コピー;コピー配布後も改訂配布の管理をしていくコピー。
      • 非管理コピー;コピー配布後は,改訂配布の管理をしないコピー。
    • ⑥ 目次は,General(全般),改訂,会社紹介とつづき,品質システム構成事項へ至っている。
    • ⑦ マニュアルの配布先について,この配布範囲を規定し,管理コピーの配布先一覧を明示している。
    • ⑧ マニュアルの改訂については,改訂の場合の差し替え方法,破棄方法,Revision番号の付け方などについて述べている。そして改訂表によって,各項目がいつ改訂されたかの履歴が追えるようになっている。
  • (3)モデルB社の品質マニュアル
    • 1)表紙(略)
      表紙には以下の項目が載っている。ページ数,版数,発行日,文書番号,社名,文書名(品質マニュアル),コピーNo.,管理・非管理区分,コピー発行先,コピー発行日,コピー発行者,承認者,会社の版権所有権。
    • 2) 目次(略)
      • 1.0 全般(表紙,目次,配布)
      • 2.0 改訂について
      • 3.0 会社紹介
      • 4.0 品質システム要求事項(ISO9002に準拠)
    • 3)配布先と改訂について(略)
      マニュアルコピーの配布先一覧と,マニュアルの改訂方法について述べている。
    • 4)以下,ISO 9002の要求項目に従ってモデルB社の品質システムの概要を記述する。