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「パフォーマンスの改善」(第13回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第13回

プロセスレベル

蓋を開けて組織内部をじっと見ると、最初に見えるものは様々な部門です。しかしシステム的な見方をすると、これらの事柄は、パフォーマンス改善を先導するのに必要となる、実際に仕事が行われている様を理解させないことを示しています。この理解に基づくと、我々はプロセスを見る必要があります。組織パフォーマンスに最も重要な要素は、注文処置、請求書作成、調達、製品開発、顧客サービス及び販売予測などのような組織横断プロセスの結果によりもたらされるものです。第5章はプロセスレベルをもっと深く探究します。以下にComputec社を例にして3変数(variables)に関する概要を示します。

プロセス目標:プロセスは仕事を行うための手段であり、目標を設定する必要があります。外部顧客と接触するプロセス(例えば、販売、サービス、及び請求書作成)の目標は、組織の全体目標と顧客要求事項から策定されなければなりません。内部プロセス(例えば、計画、予算編成、新規採用)の目標は、内部顧客のニーズによって決められるべきです(第5章と第11章では、プロセス志向の目標設定をもっと深く述べます)。
組織マネジネントで述べた変数(variables)の一部である部門目標は、最重要プロセスへの機能の役割が確認されるまでは、決定されるべきではありません。どんな機能も、一つ又は複数の内部又は外部の顧客の要求に役立つために存在しています。もしある機能が外部顧客に製品とサービスを提供するなら、その部門は、その製品とサービスが顧客のニーズを満たす程度に関して評価されるべきです。もしある部門が内部顧客だけに製品とサービスを提供するならば、それはその内部顧客の要求を満たすことと、外部顧客に最終的に付加する価値に関して評価されるべきです。どちらの場合も、顧客との重要な連鎖が、その機能が役割を果たすプロセス群です。
据付けプロセスは、例えば会社又は住宅に設備を据付ける会社にとって最も重要です。据付けプロセスに貢献する1つの部門に営業部門があります。営業は据付けそのもののプロセスの一部と見做せないかもしれませんが、通常営業担当が設備据付けの仕様を含む注文を書くので、それは据付けプロセスの一部と考えられます。据付けの品質と納期に重要な影響を与えるという意味で、営業部門は営業担当が据付を担当する部門に提供する仕様書の精度、特性、分かりやすさ及び納期に対し評価されるべきです。据付け仕様書に関する目標は、必ずしも営業評価システムの一部であるというわけではありません。しかし、あなたが組織を一連のプロセスとして見、営業部門が支援するプロセスに対する営業部門の貢献の観点からを見ることにより、より多くの目標が浮かび上がります。
Computec社のパフォーマンスの概略に関して、プロセス目標の観点から2つの根本的な質問を思い浮かべます。Computec社にはプロセス(特に戦略に影響を及ぼす組織横断プロセス)目標がありますか?プロセス目標は、顧客要求事項と組織全体の目標に連係していますか?
Computec社の戦略の要点とその脆弱性から、その重要なプロセスは製品/サービス開発プロセスと、顧客支援プロセスと(標準ソフトウェアの)注文遂行プロセスであることが分かります。当然ながら今まで、Computec社にはこれらのプロセスの目標はありませんでした。それどころか、部門目標はこれらのプロセスのパフォーマンスを最適化しようとはしていません。

プロセス設計:プロセス目標を持つと、次にプロセスが効率的に目標を達成するように構成されている(設計されている)ことを、確実にする必要があります。プロセスは、論理的で目標を達成する為の合理的な流れでなければなりません。Computec社の分析の一環として、この変数(variables)に関する、一つの単純な質問があります。会社の重要なプロセスは、プロセス目標を効率的に達成できるステップから構成されていますか?
前に、Computec社にはプロセス目標がないことを、我々は確認しています。しかし、3つの主要プロセスを調べる余地はあります。製品開発と導入のメカニズムは、誰の定義によっても、実のところプロセスの体をなしていません。製品とサービスは、部門の言い争い、予算超過、納期遅延、当事者意識不足等で表される調整不足のプロジェクトの結果として生産されています。注文遂行プロセスを分析すると、驚くことにComputec社の品質と納期は時折顧客の期待を満たしていました。顧客支援プロセスは、一度も存在していませんでした。この会社には、プロセス分野で多くのやらねばならないことがあります(Computec社プロセスの例は、第5章に示します)。

プロセスマネジメント:論理的な構造をもつプロセスも、もし運営管理されないならば、効果を発揮しなくなります。プロセスマネジネントは、組織マネジネントと同じ構成要素を含んでいます。

目標マネジメント:重要なプロセスの各ステップの目標を確立することを要件とします。これらの目標は、部門目標達成に貢献します。
パフォーマンスマネジメント:プロセスアウトプットに関して顧客フィードバックを定期的に入手すること、目標に定められた側面でプロセスパフォーマンスを追跡すること、パフォーマンス情報をフィードバックすること、プロセスの欠陥を特定し是正すること、及び最新の顧客要求事項と内部制約を反映するためにプロセス目標を再設定することを含みます。
資源マネジメント:目標を達成し、プロセスの総合的目標に対し期待される貢献をするために必要な設備、スタッフ及び予算によって各プロセスステップを支援することを要件とします。
インタフェースマネジメント:プロセスステップ、特に機能をまたがるステップの「空白」を運営管理することを含みます。組織レベルでは改善の最大の機会が組織間にあるように、プロセス改善の最大の機会はプロセスステップの間にあることがよくあります。

Computec社は、その最も重要なプロセスの目標、パフォーマンス、資源及びインタフェースを運営管理していますか?Computec社は、事業推進に当たって組織横断的な考え方をしていないので、重要なプロセスに対してプロセスマネジメントの基盤を確立していません(プロセスマネジメントはパフォーマンス改善に重要であり、微妙に異なる多くの考え方がありますので、第10章全体でその問題に触れます)。