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「パフォーマンスの改善」(第14回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第14回

業務/遂行者レベル

組織レベル及びプロセスレベルは、目標、設計及びマネジメントの観点からきれいに接続されていても、組織パフォーマンス、及びプロセスパフォーマンスの成否を決める要員のニーズに応える場合にだけ、電気は流れます。もしプロセスがアウトプットを産み出す手段であるとすれば、要員はプロセスを機能させる手段です。(第6章で深く扱う業務/遂行者レベルを通じて、パフォーマンスの人的次元を取り扱います)

業務目標:組織目標を支えるプロセス目標を設定する必要があるように、プロセスを支える業務に携わる要員の目標を策定する必要があります。Computec社を調べる際に、事業のどんな業務が重要なプロセスに貢献するか、そしてこれらの業務のアウトプットと基準(目標)は事業の重要なプロセスの要求事項(言うならば顧客及び組織の要求事項に繋がっている)に連係しているかどうか尋ねます。
Computec社の重要なプロセスの1つは、標準ソフトウェアの注文遂行プロセスです。販売、製造及び経理部門等のさまざまな業務がこのプロセスに貢献しています。他の多くの会社のように、Computec社は業務/遂行者レベルの目標設定に成功していません。設定されている業務目標は、プロセスの要求に連係していません。Computec社は、前述の部門の各業務についてプロセス志向の目標を策定する必要があります。もし会社がこの手順を踏まないならば、戦略(組織レベル)目標を達成する可能性は低くなります。

業務設計:業務目標達成に最も効果的となるように、業務を設計する必要があります。業務設計に対する質問は単純です。Computec社は業務目標を達成すことができるように、その業務の境界と責任を決めましたか?繰り返しますが、Computec社は、事業を組織、プロセス及び業務目標の観点から検討したことはなく、業務を組み立てる場合もそう言う見方を基礎としたこともありません。

業務マネジメント:業務マネジメントの要素は、組織マネジメントとプロセスマネジメントの変数(variables)を議論した時に使った目標/パフォーマンス/資源/インタフェースという分類には当てはまりません。業務マネジメントとは実質的な要員管理のことと定義すると、マネージャーは、要員が働く環境よりも、要員個人を管理する傾向が強くなります。このため業務マネジメントは、もっと正確にヒューマンパフォーマンスシステムを管理することと定義されます。
この考え方は、要員の管理に人間性がないように聞こえるかもしれませんが、結果は全く反対です。ヒューマンパフォーマンスシステム管理の大部分は、要員は動機づけがされており、才能があるという前提に基づいています。彼らが的確に業務を遂行しないならば、原因はたぶん彼らが業務を遂行しているシステム(組織レベル、プロセスレベル及び/又は業務/遂行者レベルの)にあります。ヒューマンパフォーマンスシステムは、組織のシステムのようにインプット、プロセス、アウトプット及びフィードバックから構成され、そのすべてが管理される必要があります。
Computec社がその重要な業務のヒューマンパフォーマンスシステムを効果的に経営管理しているならば、それらの業務に就いているマネージャーと当事者は、次の質問に「はい」と答えるでしょう。

パフォーマンス仕様書:担当者は、彼らの業務のアウトプット及びアウトプットが満たさなければならない基準を理解していますか(この質問は業務目標に繋がります)?
業務支援:担当者は、十分な資源、明確な指示と優先順位、及び明確な業務責任を持っていますか(この質問の最後の部分は業務設計に繋がります)?
報酬:担当者は業務目標達成に対して報酬を与えられますか?
フィードバック:担当者は彼らが業務目標を達成しているかどうか知っていますか?
スキルと知識:担当者には業務目標を達成するために必要なスキルと知識がありますか?
個々の資質:上記5つの質問の答えが肯定的であるとして、かつ、担当者は業務目標を達成するために肉体的、精神的、感情的な資質を持っていますか?

マネージャーは、Computec社が成功するために、会社の戦略実現に決定的な要素である要員が働き易い職場環境を創造せねばなりません。例えばComputec社の組織目標の1つは、顧客サービスを競争優位になるレベルまで改善することです。その顧客サービスホットラインには、現在業務部要員が交替制で配置されていますが、彼らは電話業務を彼らの本来の業務からかけ離れたもので、あまりよい仕事だとは思っておらず、かつ、彼ら自身は顧客の苦情を効果的に効率的に扱う技能を持っていません。もし顧客サービスを競争優位要因にしたいならば、業務支援、報酬、技能、並びに知識等に関する必要性について取り組まねばなりません。