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「パフォーマンスの改善」(第15回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第15回

パフォーマンスの全体的な見方

表3.2は、我々の枠組みの中の9つのパフォーマンス変数(variables)それぞれに関連する質問を示します。パフォーマンスのこのシステム的見方は、我々を次の2つの結論に導きました。

パフォーマンスマネジメントを効果的に行うには、3レベルのパフォーマンスのそれぞれ(組織レベル、プロセスレベルと業務/遂行者レベル)について、目標設定、設計、そして運営管理が必要である。
3レベルは互いに依存しています。例えば、その業務が支援する業務プロセスの要求事項を理解しない人には、業務を適切に規定することはできません。組織目標を導入するどんな試みも、プロセス及びヒューマンパフォーマンスシステムによるサポートが無いとと、失敗します。この見方は「社会技術システム」アプローチ(HitchcockとLord、1992年)の提案者の見方と一致しています。

3レベルの枠組みは、組織を変化させ改善させる多くの試みに不足している事項に関し、次のような洞察を提供します。

ほとんどの教育訓練は、1つのレベルだけ(業務/遂行者レベル)、かつ業務/遂行者レベルの1つの次元だけ(スキルと知識)を取り扱うことによって、組織パフォーマンスとプロセスパフォーマンスの改善を試みています。結果として、教育訓練が長期的には意味のないものになってしまい、教育訓練コストが浪費され、受講者は失望し、混乱しています。
自動化は、一般的にプロセスレベルのパフォーマンスを改善する試みです。しかしながら達成すべき組織目標と自動化するプロセスの目標との間の関連つけがなされないままでの自動化への投資では、投資の効果が最大になることはめったにありません。例えば、そのプロセスの効率が悪ければ、自動化しても相変わらず効率の悪いプロセスができてしまい、その自動化は、そのプロセスにかかわる要員のヒューマンパフォーマンスシステムにおける必要性についての対応においても失敗することになります。
もし、品質、生産性及び顧客志向のような領域でパフォーマンスを改善するプログラムがお題目であるならば、そのプログラムは3レベルのいずれかを欠いています。組織目標を策定して従業員を教育訓練するプログラムでは、通常プロセスレベルにおける事項と、業務レベルにおいて求められる目標、フィードバックと報酬を対象としていません。

3レベルの枠組みを使って

(表3.2に要約した)この枠組みは、プロセス及びそれが生み出したツールと共に、会社、行政機関、事業部門、部門及び小売店への20年以上に及ぶ適用と研究により進化してきました。それは次のように使用されています。

不十分なパフォーマンスを分析し、なくするための道具(例えば、半導体チップの過剰生産と配送サイクルタイム、小売店チェーンの利幅の減少)
適切なパフォーマンスを達成するよう、システムを継続的に改善するための駆動力(例えば、航空会社独自の航空機の構成に関する要求へのさらなる対応、電気通信業の顧客サービス時間の延長)
組織を新しい方向に導くための道路地図(例えば、ソフトウェアビジネスに参入するか、又は新しく規制緩和された分野で販売するか)
新しいものを設計するための青写真(例えば、電子「将来の工場」、公共施設にあるマーケティング部門)

3レベルの枠組みは、次の人たちに有益であることが証明されています。

ビジョンを示し、リーダーシップを発揮し、変化を促す経営者。
自身が運営管理する部門に対して組織レベルのビジョンとリーダーシップを示すことによって、会社規模の変化を起こす全ての階層のマネージャー。
マネージャーが変化を起こせるようなシステムと手順を設計するアナリスト。

変化への対応の役割を担うこれら3者すべては、協調して効率的に仕事をするために、同じ目標とプロセスを持っていなければなりません。3レベルのパフォーマンスの枠組みは、このニーズを満たすように設計されています。この本のこれより先の部分は、これら3つの役割が持っている、パフォーマンス改善における責任を取り扱います。