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「パフォーマンスの改善」(第37回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第37回

例4.より一層規制緩和された(競争)環境に対応する為の計画の一部として、Universal Telephone社は、四半期毎の顧客満足調査の一部である修理に対する問い合わせの評価を10%改善するという戦略目標を策定しました。ポリシー委員会は、この戦略の目標を明確に伝達し、修理部門の要員数制限を緩め、消耗品と工具のための予算配分を増加させました。人材能力開発部門は、修理者と修理監督者の教育訓練計画を拡大し、強化するように言われています。修理部門内の各セクションでは品質チームが形成されています。習熟した進行役の指導の下に、チームは彼らの領域の問題を解決するために、1週間に一度会合を開いています。

評価。Universal Telephone社は、パフォーマンスを改善させるために組織レベルの目標を確立しています。顧客と競合相手に着目しているという意味でその目標は戦略的です。それに加え、会社は目標をサポートする組織全体のコミュニケーションと十分な資源配分を確実にしました。組織レベルにおける唯一の玉に傷は、トップチームが修理を修理部門以外の多くの部門にかかわる領域であると認識していないことです。教育訓練とチームによる問題解決は、業務/遂行者レベルが適切に取り扱われていることを確実にしています。(恐らくそれに必要以上の注意が払われており、教育訓練への投資を正当化するようなスキルと知識不足の形跡が全くありません。)ポリシー委員会は、修理に最も綿密な男女が、最も効果的な改善を展開する能力を備えていることを理解しています。しかしながら、修理のプロセスは、明らかに修理部門の内と外の機能(部門)間での手渡し(インタフェース)を伴っています。よって、品質チームの構成における機能的なアプローチ(セクション毎の)、は少し問題です。また我々は、チームが行なう改善が評価と表彰制度によって適切にサポートされているかどうか心配です。
Universal Telephone社のアプローチにおける大きな欠点は、我々が最も頻繁に見受けるプロセスレベルにおける連動の欠如です。修理のプロセスが系統的に全体的視野から着目されている徴候が全くありません。評価における潜在的短所と残っているだろう「空白部分」の問題(第2章参照)が、この活動における成功の可能性をかなり下げています。組織レベルの目標は、効果的な修理のプロセスの創造なしでは達成されないでしょう。業務/遂行者レベルのチームの提案事項は、セクション内のチームの権限を越えているが、修理のプロセスの全体としての弱点によって抑制されがちです。

組織全体のパフォーマンス改善

4つのパフォーマンス改善プログラムの企てに対するの我々の批判は、パフォーマンスのすべての3レベルを取り扱っていない活動は断片的な結果しか生まないという我々の信念を強調しています。もしABCエレクトロニクス社の社長が3レベルのアプローチに従っているなら、彼は第3章から第6章で議論した9つのパフォーマンス変数を映し出す9つのステップを採用したでしょう。

組織レベル
目標:会社の戦略に述べられている競争優位及び/又はギャップに連動した全社的な顧客中心のパフォーマンス改善目標を開発する。
設計:機能的な顧客-供給者関係が戦略をサポートする様な組織を設計する。
マネジネント:目標が達成されるように資源を配分し、パフォーマンスを追跡し、改善するためのシステムを確立する。

プロセスレベル
目標:戦略に最も重要なプロセスを特定し、それらのプロセスに要求されるパフォーマンスを記述する目標を確立する。
設計:現在のプロセスにおける断絶を見つけて、それを排除するようにプロセスを設計するため、組織横断的なチーム設立する。
マネジネント:プロセスの重要なつなぎ目に目標を設定し、プロセスパフォーマンスを継続的に監視し、改善する。

業務/遂行者レベル
目標:プロセスの成功に重要な業務を特定し、それらの業務のアウトプットに対する目標を確立する。
設計:効率的、効果的に目標を達成することができるように業務を設計し、組織化する。
マネジネント:能力があり、適切に教育訓練された要員が、目標達成に向けての明確な声明、と定期的なフィードバックとプラスになる考課(評価)及び目標達成への障害のほとんどない業務環境を創出する。

社長は、自覚教育を行い、品質責任者を任命し、ポスターとバッジで組織を覆いたいかもしれません。しかし、3レベルのアプローチで述べられた9つの変数を取り扱うことによって、彼は月々のプログラムのシンボル的存在から、実質的で長期のパフォーマンス改善のための基盤となるでしょう。
現状は欠陥がありますが、ABC社の品質プログラムには社長の関与という1つの大きな強みがあります。我々は経営幹部が活発に関与しないで、成功裡に持続している活動例をあまり見ません。模範的プログラムでは、トップマネージャーは賞賛とお金を与えるより多くのことをしています。図8.1は、活発にパフォーマンス改善の活動に関与するトップマネージャーが負うべき5つの役割について示しています。

図8.1 パフォーマンス改善の活動におけるトップマネジメントの役割(略)