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特色ある人材育成|ISO情報テクノファ

ISO審査員及びISO内部監査員に経産省の白書を参考にした製造業における有用な情報をお届けします。

■特色ある人材育成

高等学校における産業教育に関する専門学科(農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報及び福祉の各学科)を設置する学校(専門高校)は、2021 年度現在、1,488 校設置されており、53 万1,327 人の生徒が在籍している。2020 年度の卒業生18 万2,234 人のうち、約50%が就職している。そのうち、2021 年度現在、ものづくりと関連が深い工業に関する学科は526 校に設置されており、22 万357 人の生徒が在籍している。2020 年度の卒業生、7 万6,281人のうち約65%が就職しており、2021 年3月末現在の就職率(就職を希望する生徒の就職決定率)は97.9%となっている。職業別では、生産工程に従事する者が約54%を占めており、産業別では、製造業に就職する者が約51%を占めている。
経済のグローバル化や国際競争の激化、産業構造の変化、IoT やAI を始めとする技術革新や情報化の進展などから、職業人として必要とされる専門的な知識や技術及び技能はより一層高度化している。また、熟練技能者の高齢化や若年ものづくり人材の不足などが深刻化する中で、ものづくりの将来を担う人材の育成が喫緊の課題となっている。
このような中で、専門高校は、ものづくりに携わる有為な職業人を育成し、職業人として必要となる豊かな人間性、生涯学び続ける力や社会の中で自らのキャリア形成を計画・実行できる力などを身に付けていく教育機関として大きな役割を果たしている。また、地元企業などでの就業体験活動や技術指導など、地域や産業界との連携・交流を通じた実践的な学習活動を行っており、地域産業を担う専門的職業人を育成している。
工業科を設置する高等学校では、企業技術者や高度熟練技能者を招いて、担当教員とティーム・ティーチングでの指導による高度な技術・技能の習得や、身に付けた知識・技術及び技能を踏まえた難関資格取得への挑戦などの取組を行っている。また、産業現場における長期の就業体験活動や、先端的な技術を取り入れた自動車やロボットなどの高度なものづくり、地域の伝統産業を支える技術者・技能者の育成、温暖化防止など環境保全に関する技術の研究など、特色ある様々な取組を産業界や関係諸機関などとの連携を深めながら実施している。さらに、各地域で開催されるものづくりイベントにおいては、生徒がものづくり体験学習の講師を務めたり、地元企業の技術者などと交流したりすることを通じて、地域のものづくり産業が培ってきた技術力の高さや職業人としての誇りを理解させるなど、ものづくりへの興味・関心を高めている。また、将来、起業や会社経営を目指す生徒はもちろんのこと、それ以外の生徒においても社会の変化に対応したビジネスアイデアを提案して製品化することができるような、アントレプレナーシップの育成を図るため、生徒の日頃の学習成果や高校生の視点で見た気づきを活かした製品の開発に地元企業と連携して取り組み、試作品の製作や製品企画のプレゼンテーションなどを通じて、製品の開発から販売までを体験させる実践的な学習活動も行われている。
農業、水産、家庭などの学科においても、地域産業を活かしたものづくりのスペシャリスト育成に関する教育が展開されている。例えば、農業科においては、規格外農産物などの未利用資源を有効活用した商品開発に向けた研究や、地域の女性起業家と連携したブランド品の共同開発が行われている。水産科においては、未利用資源を貴重な水産資源として有効活用する方法を研究し、地域の特産品を開発するなどの取組や、水産教育と環境教育、起業家教育を融合させた学習活動が行われている。家庭科においては、地場産業の織物技術を活用して、新たな織物やアパレル商品を企画・提案したり、製作したりして地域活性化につながるものづくり教育を進めている。

文部科学省では、2014 年度から、社会の変化や産業の動向などに対応した、高度な知識・技能を身に付け、社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成することを目的として、先進的な卓越した取組を行う専門高校(専攻科を含む)を指定して実践研究を行う「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」事業を行っている。スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール指定校においては、育成を目指す人材像を明確にして、大学・高等専門学校・研究機関・企業などと連携した講義の実施、最先端の研究指導、実践的な技術指導なども含め、高度な人材を育成するために開発すべき人材育成プログラムについて実践研究が行われており、事業終了後は、それらの成果の活用及び全国への普及を図ることとしている。工業科を設置する高等学校の指定校では、我が国のものづくり産業の発展に寄与し、第一線で活躍できる専門的職業人を育成している。産学官の連携を一層り、工業に関する諸課題を解決するための高いレベルの研究指導や技術指導により、生徒が主体的、協働的に学習し、ものづくりの高度な知識や技術及び技能を身に付けることにつながる人材育成プログラムに取り組んでいる。例えば、地域産業を支え、地方創生を創造する「先進的設計技術者」の育成を目指し、数値制御機器の活用による実践的技術力の向上、ビジネスプラングランプリやパテントコンテスト等の参加、学校での授業・研究と企業での実習・研究を組み合わせた教育システム(デュアルシステム)の実施など、実践的な学習活動が行われている。

また、2019 年度から、高等学校が自治体、高等教育機関、産業界などと協働してコンソーシアムを構築し、地域課題の解決などを通じた探究的な学びを実現する取組を推進する「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」を実施している。職業教育を主とする専門学科では、本事業のプロフェッショナル型において、専門的な知識・技術を身に付け地域を支える専門的職業人を育成するため、地域の産業界などと連携・協働しながら地域課題の解決などに向けた探究的な学びを専門教科・科目を含めた各教科・科目などの中に位置付け、体系的・系統的に学習するカリキュラム開発を実施する。例えば、工業科を設置する高等学校の指定校では、スマートシティを実現するために必要となる先進的な知識・技術を身に付け、ものづくりを通して地域の課題を解決できる技術者の育成を目指して、地域の産業界や高等教育機関などと協働した実践的な学習活動が行われている。
このほか、2020 年度第3次補正予算においては、Society 5.0 時代における地域の産業を支える職業人育成を進めるため、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナ社会、技術革新の進展やDX を見据えた、農業や工業等の職業系専門高校における最先端のデジタル化に対応した産業教育装置の整備について、国が緊急的に補助し、専門高校の教育環境の整備充実に取り組む。あわせて、産業教育設備の整備について、設備の老朽化による更新需要の増加や産業界におけるデジタル化などを踏まえ、専門高校においてより時代に即した人材育成を図ることができるよう、2021 年度から地方交付税措置の充実を図った。

事例1
(地域との協働による育成プログラムの開発)
三重県立四日市工業高等学校では、2019 年度から2021 年度まで「地域との協働による高等学校改革推進事業(プロフェッショナル型)」の研究指定を受けた。本科3年間と専攻科2年間の5年間により、地域の産業界等と連携し、スマートシティ四日市を実現するために必要となる資質・能力(先進的な知識・技術を習得する力[Motivation]、仲間とともに地域に貢献する「精神(こころ)」[Interaction]、課題を発見し、合理的かつ創造的に解決する力[Evolution])ある技術者の育成をめざした『MIE ものづくりSpirit』育成プログラムの開発に取り組んできた。
【先進的な知識・技術を習得する力を育む主な取組】
地域の企業経営者や技術者による指導をとおして、スマートシティ構築に関する自動運転や通信、制御、エネルギー、まちづくり等に関する先進的で高度な知識及び技術を習得する力を育んだ。
【仲間とともに地域に貢献する「精神(こころ)」を育む主な取組】
地元企業の海外事業所等における海外研修( フィリピン・ベトナム)、企業の技術者等による技術指導、生徒が企業を訪問することにより企業のノウハウを学ぶ学習活動などをとおして、多角的な視野でものごとを捉える力や、様々な職業や年代等とつながり、地域に貢献する「精神(こころ)」を育んだ。
【課題を発見し、合理的かつ創造的に解決する力を育む主な取組】
地域の課題を地域との協働によって解決する「課題研究」や「修了研究」をとおして、スマートシティ構築に関する課題を発見し、技術者に求められる倫理観等を踏まえ、合理的かつ創造的に解決する力や、思考力、判断力、表現力を育んだ。
【コンソーシアムの構築と連携】
2018 年4月に「ものづくり創造専攻科」を開設した際、県内企業や団体で構成する「協働パートナーズ」を構築した。企業技術者の授業への派遣や企業研修の受入れなど、本科及び専攻科の教育活動を支援していただくとともに、協働パートナーズ会議を開催し、人材育成等について意見交換を行っている。2022 年1月末現在、登録企業・団体数は、99 社7団体となっている。
生徒たちは、地域と連携した学びをすることで、自分たちの生活空間をよりよくするために学んだ知識や技術を活用することの重要性に気が付き、今後社会に出てからも地方創生に繋がる三重の地域産業を担う技術者として貢献したいと考えるようになった。
企業や行政機関と連携した取組では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による制限が出た場合の代替となる学習プログラムの設定に課題はあるが、ICT を駆使しながら地域と協働する取組を進め、『MIE ものづくりSpirit』を育んでいきたい。

(専修学校の人材育成の現状及び特色ある取組)
高等学校卒業者を対象とする専修学校の専門課程(専門学校)では、2021 年度時点で、工業分野の学科を設置する学校は471 校(公立2校、私立469校)となっており、10 万539 人(公立151 人、私立10 万388 人)の生徒が在籍している。2020 年度の卒業生3 万4,108 人のうち78%が就職しており、そのうち関連する職業分野への就職が91%を占めている。人口減少、少子・高齢化社会を迎える我が国にとって、経済成長を支える専門人材の確保は重要な課題である。専修学校は、職業や実際生活に必要な能力の育成や、教養の向上を図ることを目的としており、柔軟で弾力的な制度の特色を活かして、社会の変化に即応した実践的な職業教育を行う中核的機関として、我が国の産業を支える専門的な職業人材を養成する機関として大きな役割を果たしてきた。ものづくり分野においても、地域の産業界などと連携した実践的な取組を行っており、ものづくり人材の養成はもとより、地域産業の振興にも大きな役割を担っていくことが期待されている。
文部科学省では、専修学校を始めとした教育機関が産業界などと協働して、中長期的な人材育成に向けた協議体制の構築などを進めるとともに、来るべきSociety 5.0 などの時代に求められる能力、各地域の課題解決などに資する能力を身に付けた人材の養成に向けたモデルカリキュラムの開発などの取組を推進している。
また、企業などとの密接な連携により、最新の実務の知識などを身に付けられるよう教育課程を編成し、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む課程を「職業実践専門課程」として文部科学大臣が認定しており、2022 年3月時点で学校数1,083 校、学科数3,154 学科に上っている。

(専修学校における取組)
学校法人岡学園トータルデザインアカデミーでは、文部科学省から「専修学校による先端技術利活用実証研究」の委託を受け、VR(バーチャル・リアリティ)を活用し、従来では難しかった視点、様々な角度からの観察や、反復的な学習が可能なコンテンツを制作することにより、質の高い職業人材を養成するためのカリキュラムの開発に取り組んでいる。
デザインした衣服の型を製作するうえでは、体のラインや凹凸を想像しながら、立体的な部分を平面のパターンに落とし込む必要があるが、そのイメージをつかむことが困難である。そこで、VR を活用して縫製・断裁の方法をあらゆる角度から立体的に確認することにより、教科書だけでは平面的にしか理解できなかった工程を、立体的なイメージをもって理解することができ、より高い技術を習得することが期待できる。

(出典)経済産業省 2022年版ものづくり白書
 ・https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html

(つづく)Y.H