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知的面からの産業振興施策 | ISO情報テクノファ

ISO審査員及びISO内部監査員に経産省の白書を参考にした製造業における有用な情報をお届けします。

■知的面の産業振興施策

(1)知財権情報の活用に関する支援
① 特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)((独)工業所有権情報・研修館運営費交付金の内数)
特許情報を活用した効率的な先行技術調査や技術開発等を促進するため、インターネット上の無料サービス「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を通じて、国内外で発行された1億件以上の特許、実用新案、意匠及び商標の公報並びに審査関連情報を提供している。審査関連情報については、「ワン・ポータル・ドシエ(OPD) 照会」を通じて、世界各国の特許出願に関する情報を一括把握することが可能である。
2021 年度には、特許庁の公報システムの刷新に合わせて、J-PlatPat でも特許、実用新案、意匠及び商標の公報情報が日次で掲載されるようになった。

②特許出願技術動向調査
大学、公的研究機関や企業等における研究開発活動の検討や効果的な出願戦略の構築のための資料、及び行政機関の科学技術政策等の策定のための基礎資料の提供を目的として、今後の進展が予想される技術テーマを選定し、特許出願技術動向の調査を行っている。
2021 年度は、4の技術テーマについて調査を実施した。

(2)権利化に対する支援
①円滑な権利化に対する支援
中小企業の円滑な特許権取得を促進するため、全ての中小企業を対象として、特許料(第1年分から第10 年分)、審査請求料、特許協力条約(PCT)に基づく国際出願に係る手数料(調査手数料、送付手数料、予備審査手数料)を2分の1に軽減する措置及び国際出願手数料や取扱手数料の2分の1に相当する額を交付する措置を講じている。
また、中小ベンチャー企業・小規模企業を対象として、一定の要件を満たした場合に特許料(第1年分から第10 年分)、審査請求料、PCT 国際出願に係る手数料(調査手数料、送付手数料、予備審査手数料)を3分の1に軽減する措置及び国際出願手数料や取扱手数料の3分の2に相当する額を交付する措置を講じている。なお、中小企業による2021 年度の軽減措置の利用件数は66,378 件(2022 年3月末時点)であった。

②早期権利化に対する支援
これまでの特許制度を巡る情勢変化や新たな課題を踏まえ、2023 年度までに特許の「権利化までの期間※」と「一次審査通知までの期間」をそれぞれ、平均14 か月以内、平均10 か月以内とするなど、「世界最速・最高品質の特許審査」の実現を目指している。また、研究開発成果の早期活用、グローバルな経済活動動等に対する支援を目的として、一定の要件を満たす特許出願について、出願人からの申請を受けて審査・審理を通常に比べて早く行う早期審査・早期審理を継続して実施した。加えて、地震により被災した企業の企業活動に必要な技術を早期に保護し、活用可能とするため、「災害救助法(昭和22 年法律第118 号)」の適用される地域(東京都を除く。)に住所又は居所を有する被災した企業、個人等が簡便な手続で早期審査・早期審理を受けられる「震災復興支援早期審査・早期審理」を実施している。さらに、新たな技術開発を行い、市場を開拓する段階にあるベンチャー企業による戦略的な特許権の取得をサポートすべく、「ベンチャー企業対応面接活用早期審査」及び「ベンチャー企業対応スーパー早期審査」を2018 年7月より開始した。
※出願人が補正等をすることに起因して特許庁から再度の応答等を出願人に求めるような場合や、特許庁に応答期間の延長や早期の審査を求める場合等の、出願人に認められている手続を利用した場合を除く。③ 世界で通用する安定した権利の設定に向けたインフラ整備企業活動のグローバル化や事業形態の多様化に伴い、企業の知的財産戦略も事業を起点としたものに移りつつある。そこで、事業で活用される知的財産の包括的な取得を支援するために、2013 年4月から「事業戦略対応まとめ審査」を開始した。「事業戦略対応まとめ審査」は、新規の事業や国際展開を見据えた事業に係る製品・サービスを構成する複数の知的財産(特許・意匠・商標)を対象として、事業説明を受けた上で、分野横断的に一括して審査を行うものである。これにより、企業の望むタイミングで、企業の事業展開を支える知財網の形成が可能となる。

近年、AI 関連技術の発展はめざましく、AI 関連発明の特許出願は様々な分野で増加している。AI 関連技術は代表的な融合技術であり、AI に関する技術水準の把握のみならず、様々な技術分野におけるAI の応用状況などを的確に把握する必要がある。そこで、特許庁は、2021 年1月に、AI 関連発明について、より効率的かつ高品質な審査を行う環境を整備するために、各審査部門の担当技術分野を超えて連携するAI 審査支援チームを発足させた。AI 審査支援チームでは、最新のAI 関連技術に関する知見や審査事例の蓄積・共有及び関連する特許審査施策の検討等を行っている。

(3)知的財産の戦略的な活用に対する支援
① 知的財産に関するワンストップ相談窓口「知財総合支援窓口」((独)工業所有権情報・研修館運営費交付金の内数)
(独)工業所有権情報・研修館(INPIT)では、中小企業等が抱える知的財産に関する悩みや相談に対応する「知財総合支援窓口」を47 都道府県に設置し、様々な専門家のほか、中小企業支援センターや商工会・商工会議所、よろず支援拠点等の支援機関とも連携したワンストップサービスを提供している。2021年度の相談件数は123,345 件であった。また、地域経済を支える中小・ベンチャー企業等に対して、知財の戦略的活用を見据えた中長期的な支援計画を策定し、様々な専門人材を活用した重点的な支援を実施した。2021 年度の対象件数は53 社であった。

② 中小企業等外国出願支援事業(5億96 百万円の内数)
中小企業等による戦略的な外国出願を促進するため、(独)日本貿易振興機構(JETRO)や都道府県等中小企業支援センター等を通じて、外国への事業展開等を計画している中小企業に対し、外国への出願に要する費用(外国特許庁への出願料、国内・現地代理人費用、翻訳費用)の一部を助成した。2021 年度の採択件数は644 件であった。

③ 中小企業等海外侵害対策支援事業(5億96 百万円の内数)
中小企業等の海外での適時適切な産業財産権の権利行使を支援するため、(独)日本貿易振興機構を通じて、模倣品に関する調査や模倣品業者に対する警告・行政摘発手続に要する費用を補助し、採択件数は8件であった。さらに、海外で自社のブランドや地域団体商標を現地企業に冒認出願された中小企業等に対し、異議申立や無効審判請求、取消審判請求等の、冒認商標を取り消すために要する費用を補助し、採択件数は23 件であった。

④ 海外知的財産プロデューサーによる支援((独)工業所有権情報・研修館運営費交付金の内数)
海外における事業展開を知的財産リスクマネジメント及び知的財産活用の視点から支援するため、海外での事業展開が期待される有望技術を有する中小企業等に対して、知的財産マネジメントの専門家(海外知的財産プロデューサー)を派遣している。2021 年度は、6人の海外知的財産プロデューサーにより、158 者の支援を行った。

(4) 技術情報の管理に関する取組(18億20百万円の内数)
「産業競争力強化法等の一部を改正する法律(平成30 年法律第26 号)」において、事業者が保有する重要情報の適切な管理に対し、国が認定した機関(認定件数:6件(2022 年4月末時点))から認証を受けることができる「技術情報管理認証制度」を創設した。
2021 年度は、適切な技術情報管理の構築に向けたアドバイス等を行う専門家の派遣や、制度に関心の高い業界団体等との連携、広報活動など、制度の普及・改善に向けた取組を実施した。

(5) 標準必須特許のライセンスを巡る取引環境の整備
標準必須特許(SEP:Standard Essential Patent)は、標準規格を使用する上で必須の特許であるが、近年、SEP のライセンスに関する紛争が世界各国で生じている。第四次産業革命が進展する中、今後、自動車、建設機械、工場といった産業分野を対象としたSEP のライセンスが増加していく見込みであり、当該紛争を円滑に解決する手段を検討することは、我が国にとって極めて重要な課題である。こうした状況を踏まえ、当事者間での誠実な交渉を通じて早期の和解や無用な紛争の回避を促し、我が国産業の発展に繋げる観点から、2022 年3月、国内特許を含むSEP のライセンス交渉に携わる権利者及び実施者が則るべき、日本としての誠実交渉の規範を示す「標準必須特許のライセンスに関する誠実交渉指針」(誠実交渉指針)を発表した。本指針は、国内外の企業等の意見や、日本の有識者・産業界の意見を踏まえて策定したものであり、交渉当事者や司法など、多様な関係者によって活用されることが期待される。

(戦略的な標準化・認証の推進)
(1) 中堅・中小企業等における標準化の戦略的活用の推進
「成長戦略フォローアップ」(2021 年6月閣議決定)、「知的財産推進計画2021」(2021 年7月知財戦略本部会合決定)に基づき、「新市場創造型標準化制度」を活用して中小企業等から規格の提案のあった案件について、2014 年から2022 年4月1日までに規格を44 件策定した。さらに、自治体・産業振興機関、地域金融機関、大学・公的研究機関(パートナー機関)と(一財)日本規格協会(JSA)が連携し、地域において標準化の戦略的活用に関する情報提供・助言等を行う「標準化活用支援パートナーシップ制度」のパートナー機関数を2015 年から2022 年4月1日までに170 機関に拡大した。また、中小企業等向けに、標準化に関する戦略的活用についてのセミナーを、2021年度は2022 年4月1日までに8件実施した。

(2) 戦略的な国際標準化の推進(46億円50百万円)
我が国企業が有する優れた技術・製品を国内外に普及させるに当たっては、関連する国際標準を戦略的に策定することが重要となる。このため、先端医療機器、ロボット等の我が国が技術的優位を有する先端分野や、自動走行システム等の経済的波及効果の大きい社会システムに関連する分野、シェアリングエコノミーなどのサービス分野において、国際標準原案の開発、当該原案の国際標準化機関への提案等を実施した。また、その過程で得られた知見をもとに普及を見据えた試験・認証基盤の構築等を実施するとともに、国際標準化に必要な場合は日本産業規格(JIS)の開発も併せて行った。

(3)世界に通用する認証基盤の強化
我が国企業の海外展開の観点から戦略的に重要な分野について、認証又は試験の結果が国際的に認められる認証基盤を国内に整備するため、大型パワーコンディショナ及び大型蓄電池の試験・評価施設の整備を行い、2016 年4月より運用を開始した。2021 年度においては、大型パワーコンディショナで31 件の共同研究/認証実験、大型蓄電池で59 件(2022 年3月末時点)の共同試験を実施した。また、両施設を活用し、我が国の国際競争力強化に資する試験手法及び国際標準開発を行った。

(4)アジア諸国等との協力関係強化
我が国企業のアジア諸国での事業展開及びアジア市場の獲得を促進するため、我が国企業が強みを持つ製品や技術が適正に評価される性能評価方法等の国際標準化について、アジア諸国の標準化機関と協力し、APEC プロジェクトとして抗菌加工技術、気候変動関連活動分野に係るワークショップ・セミナーを開催した。また、国際標準化分野での連携強化のため、スマートシティの評価指標に関する規格や、窓ガラス等の省エネ建材性能に係る規格、リスクアセスメントの研修をASEAN 向けに実施した。さらに、国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)及びASEAN品質標準諮問委員会(ACCSQ)傘下のWG と連携し、アジア地域向けの標準化人材育成ワークショップを開催した。

(5)標準化人材の育成
①標準化資格制度の実施
(一財)日本規格協会において、標準化や規格開発に関する専門知識を備えた人材を「規格開発エキスパート」として評価して登録する「標準化人材登録制度」(2017 年6月創設)を実施。規格開発エキスパート370 名、規格開発エキスパート補40 名を登録(2022 年4月1日時点。

②大学等における標準化教育の推進
標準化に関する講義に活用するための教育コンテンツとして開発した、ファカルティ・ディベロプメント教材の公開を継続するとともに、講師として職員を大学等へ派遣し標準化講義を実施した。

③若手育成のための国際標準化人材育成講座の実施
国際標準化交渉をリードできる人材を育成するため、(一財)日本規格協会と連携して、ISO 及びIECにおける標準化に携わる若手を対象とした「ISO/IEC国際標準化人材育成講座」を実施。2021 年度には、同講座を3回実施し、計55 名が修了した。また、このほかに、受講者同士のネットワークの維持、強化を図ることを目的として、同講座の修了者を対象とした合同研修会を開催した。

(その他)
(1) 第9回ものづくり日本大賞の実施<経産省、文科省、厚労省、国交省>
ものづくり日本大賞は、製造・生産現場の中核を担っている中核人材や伝統的・文化的な「技」を支えてきた熟練人材、今後を担う若年人材など、「ものづくり」に携わっている各世代の人材のうち、特に優秀と認められる人材を顕彰するもの。経済産業省、国土交通省、厚生労働省、文部科学省が連携して2005 年度より開催しており、2019 年度に8回目の開催を迎えた。2021 年度においては、経済産業省では2022 年度の表彰に向けて第9回ものづくり日本大賞の候補案件を募集し、全国9地域に設置する地方分科会において第1次審査を実施した。

(2) ものづくり白書の作成<経産省、文科省、厚労省>
「ものづくり基盤技術振興基本法(平成11 年法律第2号)」第8条の規定に基づき、2021 年度のものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策に関する報告書を国会に提出するため、年次報告書(令和3年度ものづくり基盤技術の振興施策(2022 年版ものづくり白書))を作成した。

(出典)経済産業省 2022年版ものづくり白書
 ・https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html

(つづく)Y.H