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中小企業への支援 | ISO情報テクノファ

ISO審査員及びISO内部監査員に経産省の白書を参考にした製造業における有用な情報をお届けします。

■中小企業への支援

(1)下請等中小企業の取引条件の改善
「未来志向型の取引慣行に向けて」(2016 年9月)の公表以降、中小企業庁では、取引適正化に向けた重点5課題(①価格決定方法の適正化、②支払条件の改善、③型取引の適正化、④知財・ノウハウの保護、⑤働き方改革に伴うしわ寄せ防止)を設定し、サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善に向けた取組を行っている。
2021 年度は、新型コロナウイルスの感染拡大による中小企業の状況や最低賃金を含む人件費の上昇、原油価格高騰などの影響を踏まえ、①パートナーシップ構築宣言の推進、②価格交渉促進月間、③「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」(2021 年12 月27 日)に基づく価格転嫁対策、④「取引適正化に向けた5つの取組」の公表など、特に、価格転嫁のしやすい取引環境の整備に向け必要な対策を講じた。

①パートナーシップ構築宣言感染症の影響等により、中小企業・小規模事業者に経営環境悪化のしわ寄せが及ばないよう取引適正化等を促進するために、大企業と中小企業の連携による生産性向上に取り組むことや望ましい取引慣行の遵守を経営責任者の名前で宣言する「パートナーシップ構築宣言」の仕組みを導入した。2022 年3月末までに6,924 社が宣言した。

②価格交渉促進月間
初めての取組として、労務費や原材料費等の上昇などが下請価格に適切に反映されることを促すため、9月を「価格交渉促進月間」として位置づけ、価格交渉、ひいては価格転嫁を促進するための取組を実施した。広報や講習会を集中的に実施するとともに、月間終了後の10 月以降には、下請G メンによる中小企業2千社へのヒアリング調査や、同4万社へのアンケート調査など、フォローアップ調査を実施し、その結果を公表した。また、その結果に基づき、価格転嫁や価格協議の状況について、問題があるおそれがある発注側企業に対して、下請中小企業振興法(以下、「下請振興法」という。)に基づく「助言」を実施した。さらに、9月に次いで価格交渉の頻度の高い3月も「価格交渉促進月間」として位置づけ、各種取組を実施した。年2回、「価格交渉促進月間」を実施することで、価格交渉の定着と浸透を図っていく。

③ パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ
中小企業等が賃上げの原資を確保できるよう、コスト上昇分を適切に転嫁できることを目的とし、2021年12 月27 日に「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」がとりまとめられた。同パッケージに基づき、1~3月を「集中取組期間」として、中小企業庁と公正取引委員会は、事業所管省庁などとも連携し、下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」という。)の執行強化等、適切な価格転嫁に向けた取組を実施した。

④取引適正化に向けた5つの取組
2022 年2月に開催された「第3回 未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」において、萩生田経済産業大臣から「取引適正化に向けた5つの取組」を発表した。③の「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」の実施に加え、取引適正化の実現に向けた一層の取組強化を行う。具体的には、①価格交渉のより一層の促進、②パートナーシップ構築宣言の大企業への拡大、実効性の向上、③下請取引の監督強化、④知財G メンの創設と知財関連の対応強化、⑤約束手形の2026 年までの利用廃止への道筋に取り組む。

(2)下請代金支払遅延等防止法(下請法)
中小企業庁は、約22 万件の親事業者及び当該親事業者と下請取引を行う約5万件の下請事業者に対して定期調査を実施するとともに、下請法違反事実に関する情報提供・申告等を行うための「申告情報受付窓口」により、下請法違反に関する情報収集を行った。親事業者へ立入検査等を行い、うち支払遅延、下請代金の減額、買いたたき等の下請法違反又は違反のおそれが認められた親事業者に対し、改善指導を行うなど、下請法の厳格な運用に努めた。

(3)下請中小企業振興法(下請振興法)
2021 年8月、大企業と中小企業との取引の適正化をはかるため、対象取引類型の拡大や、国による調査規定の創設、発注書面交付の促進、下請中小企業取引機会創出事業者認定制度の新設等の内容を含む、改正下請振興法が施行された。また、本法改正に合わせ、下請中小企業取引機会創出事業者の認定に必要な事項を定めるため、振興基準の改正も行った。さらに、2021 年9月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査結果を踏まえ、価格転嫁や価格協議の状況について、問題があるおそれがある発注側企業に対して、下請振興法に基づく助言(注意喚起)を行った。

(4)下請取引適正化のための普及・啓発
①下請かけこみ寺(36 億70 百万円の内数)
全国48 か所に設置した「下請かけこみ寺」において、中小企業の取引に関する相談対応、裁判外紛争解決手続(ADR)を実施した。
② 講習会、セミナーの開催等(36億70百万円の内数)
オンライン形式の講習会として、①価格交渉促進月間の実施にあわせた、中小企業の担当者を対象とする価格交渉サポートセミナーや、②下請法の違反行為を未然に防止するための親事業者の調達担当者等を対象とした下請法や下請ガイドラインに関するセミナーを開催した。

(中小企業の経営の革新及び創業促進)
(1)経営革新の促進
経済的環境の変化に即応して中小企業が行う新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、商品の新たな生産又は販売の方式の導入、役務の新たな提供の方式の導入、技術に関する研究開発及びその成果の利用、その他の新たな事業活動を行うことにより、経営の相当程度の向上を図る経営革新を支援するため、以下のような支援措置を行った。
①新事業活動促進資金( 財政投融資)
中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画の承認を受け、経営革新のための事業を行う個別の中小企業者、組合及び任意グループに対し、(株)日本政策金融公庫が融資を実施した。
②中小企業信用保険法の特例
中小企業等経営強化法に基づく経営革新計画の承認を受け、当該事業を行う際の資金供給を円滑化するために、信用保証協会において、「中小企業信用保険法(昭和25 年法律第264 号)」に規定する普通保険、無担保保険及び特別小口保険等の特例による支援を実施した。

(2)創業・ベンチャーの促進
①新創業融資制度(財政投融資)
(株)日本政策金融公庫が、新たに事業を開始する者や新規開業して税務申告を2期終えていない者に対し、無担保・無保証人で融資を実施した。
②創業者向け保証
民間金融機関による創業者への融資を後押しするため、信用保証協会において、これから創業する者又は創業後5年未満の者等を対象とする保証制度を実施した。
③ファンド出資事業
民間の投資会社が運営する投資ファンドについて、(独)中小企業基盤整備機構が出資(原則、ファンド総額の2分の1以内)を行うことで、民間資金の呼び水としてファンドの組成を促進し、創業又は成長初期の段階にあるベンチャー企業(中小企業)や新事業展開等により成長を目指す中小企業への投資機会の拡大を図るものである。起業支援ファンドについては、平成22 年度の制度再編から2022 年3月末時点までに出資先ファンド数49 件、出資約束総額3,447 億円(うち機構出資約束金額819 億円)、投資先企業数1,364社に至った。また、中小企業成長支援ファンドについては、出資先ファンド数97 件、出資約束総額1兆220 億円(うち機構出資約束金額2,732 億円)、投資先企業数1,525 社に至った(両ファンドともに投資先企業数の実績は、2022 年2月末時点)。
④エンジェル税制
創業間もない中小企業への個人投資家(エンジェル)による資金供給を促進するため、一定の要件を満たす中小企業に対して、個人投資家が投資を行った時点と、当該株式を譲渡した時点において所得税の優遇を受けることができる制度。当該制度を通じて、創業間もない企業の資金調達を支援した。
⑤オープンイノベーション促進税制
大企業等がスタートアップ企業とのオープンイノベーションに向け、スタートアップ企業の新規発行株式を一定額以上取得する場合、その株式の取得価額の25%が所得控除される措置。2022 年度税制改正において、要件を見直しつつ、2年間の延長を行った。
⑥ グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業(11億27百万円の内数)
グローバルで成長するスタートアップのロールモデル創出に向けて、官民で連携し、海外展開を含むスタートアップの育成・支援を行う「J-Startup」プログラムを実施した。また、起業家等100 名を対象とした人材育成事業等を行ったほか、政府調達における優遇や、ものづくり系スタートアップの量産化・事業化支援を行った。
(3)新事業促進支援事業
①農商工等連携事業
中小企業による新事業活動の促進を図るため、「農商工等連携促進法(平成20 年法律第38 号)」に基づき、中小企業者が行う新商品、新サービスの開発や、それらの販路開拓の取組に対し、予算、融資等を活用した支援を実施した。
② 新事業活動促進資金(財政投融資)(再掲 第2部第1章第3節2.(1)①参照)
③ 中小企業信用保険法の特例(再掲 第2部第1章第3節2.(1)②参照)
④ 商業・サービス競争力強化連携支援事業(109 億円の内数)
中小企業・小規模事業者が、異分野の中小企業と連携し、産学官連携して行う新しいサービスモデルの開発等を支援する事業であり、2021 年度は13 件採択した。
⑤ 地域産業デジタル化支援事業(11 億68 百万円の内数)
地域未来牽引企業等とIT 企業等が連携して取り組む、新事業実証(試作、顧客ヒアリング、事業性評価と改善)による地域産業のデジタル化のモデルケースの創出、地域へのモデルケースの横展開に要する経費を補助する事業であり、2021 年度は62 件採択した。

(4)中小企業の海外展開支援
国内での需要減少や国際競争の激化による産業構造の変化等に直面する中、中小企業が成長するためには、アジア等の新興国を始めとする成長著しい海外市場で新たな需要を獲得することが喫緊の課題となっている。このため、中小企業の本格的な海外展開に向け、資金面を含め総合的な支援策を講じていくこととしている。
① 現地進出支援強化事業(12 億21 百万円の内数(当初)、2億円の内数(2020 年度第3次補正))
中小企業の海外展開を後押しするため、(独)日本貿易振興機構による情報提供、海外展示会やオンライン商談会等を通じた販路拡大支援、商談後のフォローアップ、現地進出後の事業安定・拡大支援(プラットフォーム事業)など、段階に応じた支援を提供し、支援のオンライン化を図りながら国内外でシームレスに支援した。

② JAPAN ブランド育成支援等事業(8億円の内数)
中小企業等が、海外展開やそれを見据えた全国展開のために、新商品・サービスの開発・改良、ブランディングや、新規販路開拓等の取組を行う際に、経費の一部を補助する事業であり、2021 年度は148 件の事業を採択した。

③海外展開・事業再編資金(財政投融資)
経済の構造的変化に適応するために海外展開又は海外展開事業の再編を行うことが経営上必要な中小企業の資金繰りを支援するため、(株)日本政策金融公庫による融資を実施した。

④ 海外展開を担う人材育成の支援(41 億46 百万円の内数)
(ア)技術協力活用型・新興国市場開拓事業(研修・専門家派遣事業)
開発途上国の産業界での活躍が期待される人材に対し、日本国内での受入研修、海外現地への専門家派遣、海外高等教育機関での寄附講座開設等の取組により、日本企業の開発途上国への海外進出を促進するものである。2021 年度は新型コロナウイルス感染症の影響による渡航制限下において、遠隔指導ツールも最大限に活用して事業を実施した。
(イ)技術協力活用型・新興国市場開拓事業(国際化促進インターンシップ事業)
日本企業が高度外国人材の活躍推進を通じて競争力を高める機会を提供するべく、開発途上国の人材を対象にオンライン形式でインターンシッププログラムを実施した。

⑤ 新輸出大国コンソーシアム(252 億89 百万円の内数(当初)、11 億35 百万円の内数(2021 年度補正))
(独)日本貿易振興機構、(独)中小企業基盤整備機構、商工会議所、商工会、金融機関等の支援機関を結集するとともに、幅広い分野における307 名の専門家を確保し、海外展開を図る中堅・中小企業に対して、事業計画の策定から販路開拓、現地での商談サポートに至るまで、総合的な支援をきめ細かに実施した。

(技術に関する研修及び相談・助言等)
(1)( 独)中小企業基盤整備機構における経営相談・専門家派遣事業 (( 独)中小企業基盤整備機構交付金の内数)
(独)中小企業基盤整備機構では、中小企業支援の高度な専門性と知見を有する専門家等が、創業予定者や創業間もない企業、経営革新や新事業開拓を目指している中小企業、その他経営課題の解決に取り組む中小企業等に対して、経営相談及び専門家派遣等を通じて成長発展段階に応じたハンズオン支援を実施した。
(2) 中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業(40億90百万円(当初)、9億82百万円の内数(2020年度第3次補正))新型コロナウイルスによる影響も含めた中小企業・小規模事業者等が抱える様々な経営課題に対応するワンストップ相談窓口として、各都道府県に「よろず支援拠点」を設置した。また、地域の支援機関では解決困難な課題に対して、それぞれの課題に対応した専門家を派遣し、その解決を支援した。

(中小企業のものづくり基盤技術強化)
(1) 中小企業・小規模事業者人材対策事業(10億50百万円の内数)
中小企業・小規模事業者が、その経営課題に応じ、地域内外の女性・若者・シニア等の多様な人材から、必要な人材を確保できるよう、企業の魅力発信やマッチングの促進等を実施した。また、次世代自動車の技術等に知見を有する人材等が指導者としての汎用的なスキルを身に付けるための研修を実施し、育成した指導者を自動車製造業等の中小企業・小規模事業者の現場に派遣する「サプライヤー応援隊事業」を実施し、2021 年度は全国7か所に拠点を整備した。
(2) 中小企業大学校における人材育成支援((独)中小企業基盤整備機構交付金の内数)
中小企業の人材育成を支援するため、中小企業大学校において、中小企業等の工場長や生産現場の監理・監督者を対象に、効果的な品質管理、原価管理、工程管理のノウハウを提供する工場管理者養成コースを実施した。
(3)中小企業等経営強化法
中小企業等経営強化法に基づき策定された経営力向上計画を2022 年2月末時点において、136,649 件を認定している。認定を受けた企業等に対しては、中小企業経営強化税制や(株)日本政策金融公庫の融資制度等の支援措置を講じている。
(4)中小企業投資促進税制
機械装置等を取得した場合に、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除(税額控除は資本金3,000 万円超の法人を除く)ができる措置を引き続き講じた(2022 年度で)。
(5)中小企業経営強化税制
中小企業等経営強化法に基づき経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、その経営力向上計画に基づき経営力向上設備等を取得した場合に、即時償却又は10%の税額控除(資本金3,000 万円超の法人は7%の税額控除)ができる措置を引き続き講じた(2022年度まで)。

(出典)経済産業省 2022年版ものづくり白書
 ・https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html

(つづく)Y.H