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職業能力開発のための環境整備 | ISO情報テクノファ

ISO審査員及びISO内部監査員に経産省の白書を参考にした製造業における有用な情報をお届けします。

■職業能力開発のための環境整備

(キャリアコンサルティング)
キャリアコンサルティングを行う専門職として、2016 年4月に「キャリアコンサルタント」が国家資格化された。5年ごとの更新講習の受講の義務や、守秘義務、信用失墜行為の禁止等の規定も設けられたことにより、知識・技能の質の担保が図られている。キャリアコンサルタントは、キャリア支援の社会インフラとして、活動の機会が広がっており、その登録者数は、2022 年1月末現在、6万1千人に上っている。キャリアコンサルタントに係る試験としては、厚生労働大臣の登録を受けた試験機関が行うキャリアコンサルタント試験のほか、技能検定制度の下、キャリアコンサルティング職種の技能検定(1級、2級)が実施されている。
また、労働者のキャリア形成を支援するため、年齢、就業年数、役職等の節目において定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組みである「セルフ・キャリアドック」を企業に広めることを目的に、キャリア形成サポートセンターによる周知や勧奨、相談・研修等の実施を通じて、企業における「セルフ・キャリアドック」の導入及び取組定着の支援を行った。

(キャリアコンサルタント)
○ 労働者の職業の選択、職業生活設計、職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと。
(職業能力開発促進法第2条第5項)
○ キャリアコンサルタントは、本人の興味・適性の明確化や職業生活の振り返り(どんな能力があって、何が課題なのかの確認)を通じて職業生活設計を支援し、職業選択や能力開発の自信・意欲の向上、自己決定を促す支援。
(キャリアコンサルティングを行う者)
第189回通常国会で成立した勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律(平成27年法律第72号)による職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)の一部改正により、平成28年4月1日より「キャリアコンサルタント」を名称独占の国家資格化。
○ キャリアコンサルタントは、5年ごとの更新制とすることで、最新の労働市場等に関する知識やキャリアコンサルティングに関する技能が確保され、また、守秘義務等を課すことで、個人情報や相談内容の秘密が守られ、労働者等にとって安心して相談を行うことが可能。

(キャリアコンサルタントの活動内容・役割)
○企業
― 被用者の目指すべき職業生活・職業生活設計の明確化
― 上記を通じた就労意欲・能力開発の意欲の向上や「気づき」の機会の提供
(リテンション・エンゲージメント機能)
○ハローワークなど労働力需給調整機関
― 求職者の職業選択の方向性・職業生活設計の明確化
― 上記を通じた就職活動の支援又は職業訓練機関への橋渡し
○教育機関
― 学生の職業選択・職業生活設計・学びの方向性の明確化
― 上記を通じた円滑な就職活動の支援

(労働者の主体的の環境整備)
(1) 教育訓練給付制度(299億35百万円)<厚労省、文科省、経産省>
労働者が主体的に職業能力開発に取り組むことを支援し、ひいては雇用の安定及び就職の促進を図るため、労働者が自ら費用を負担して厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し修了した場合に、労働者が負担した費用の一定割合を支給している。対象となる教育訓練として、一般教育訓練11,378 講座、特定一般教育訓練557 講座、専門実践教育訓練2,627 講座(いずれも2022 年4月1日時点)を指定している。

(2) ジョブ・カード制度の推進<厚労省、文科省、経産省>
ジョブ・カード制度は、2008 年に創設され、2015 年には、職業能力開発促進法において、職務経歴等記録書として位置づけられた。個人のキャリアアップや多様な人材の円滑な就職等を促進するため「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を持つツールとして、キャリアコンサルティング等の個人への相談支援のもと、個人のキャリア形成や多様な人材の円滑な就職促進に役立てられている(2021 年3月末現在のジョブ・カードの作成者数は、累積で約277 万人)。

(ジョブ・カード制度について○ 個人が生涯活用するキャリア・プランニング及び職業能力証明のツールとして普及を促進。
目的
○ 個人の状況に応じた職業能力開発、多様な人材の必要な分野への円滑な就職の支援等のため、生涯を通して活用
― 生涯を通じたキャリア・プランニングのツール
○ 個人が履歴、職業経験の棚卸し、職業生活設計等の情報を蓄積の上、キャリアコンサルティングを受けつつジョブ・カードを作成。
○ 職業生活の様々な場面・局面における活用。
― 職業能力証明のツール
○ 免許・資格、学習・訓練歴、雇用型訓練、公的職業訓練をはじめとする訓練の評価、職務経験、仕事ぶりの評価の情報を蓄積し、応募書類等として活用
(様式の構成)
○ 厚生労働大臣が「職務経歴等記録書」(ジョブ・カード)の様式を定めている(職業能力開発促進法第15条の4第1項))。
○ 個人が、各様式に記入(必要に応じてキャリアコンサルティング等の支援)、場面に応じて活用。

  • 様式1 キャリア・プランシート
  • 様式2 職務経歴シート
  • 様式3-1 免許・資格シート
  • 様式3-2 学習・訓練歴シート
  • 様式3-3 訓練成果・実務成果シート

(周知・広報)
○ジョブ・カード制度総合サイト

  • ジョブ・カードの各様式やその記入例を提供。
  • ジョブ・カード作成支援、履歴書・職務経歴書が作成できる「ジョブ・カード作成支援ソフトウェア(WEB版含む)」等を提供。

○キャリア形成サポートセンターHP

  • 企業や学校におけるジョブ・カードの活用事例を紹介。
  • セミナー、ジョブ・カードを活用したキャリアコンサルティング、利用者の声等をSNSにより情報発信。

○パンフレット・動画

  • ジョブ・カードの作成方法を説明する活用ガイドを配布。
  • 求職者・在職者、事業主、学生など幅広い層へジョブ・ カードの活用を簡単に紹介する動画を配信。

外国人材の育成
(1)技能評価システム移転促進事業(96百万円)
開発途上国(インドネシア、カンボジア、ベトナム)に対し、我が国がこれまで国及び民間の双方において培ってきた技能評価システムのノウハウの移転を進めた。具体的には、機械加工職種、電気機器組立て職種、機械検査職種、機械・プラント製図職種に係る技能検定に必要な試験基準の作成や試験の採点に関する研修、技能評価トライアルなどの実施新型コロナウイルス感染症による影響に伴い、オンラインで実施により、日本式の技能検定に関するノウハウを移転した。また、2021 年度から技能競技大会実施に係るノウハウを移転するため、プラスチック金型職種及び情報ネットワーク施工職種のセミナーを実施した。さらに、我が国及び現地国政府機関、企業等で構成する官民合同委員会を開催し、事業の実施状況の確認、今後の取組等について議論し、事業の継続的な改善を図った。

(2)JICA事業への協力等政府間の技術協力
外務省及び(独)国際協力機構(JICA)と連携し、開発途上国の人づくりを支援するため、我が国の経済社会の発展を支えてきた人材養成に係るノウハウを活用し、開発途上国における職業能力開発関係施設の整備・運営等に関する助言、職業能力開発分野の専門家の派遣、職業能力開発分野の研修員の受入れに対する協力等を行った。

(3)外国人技能実習制度
外国人技能実習制度は、開発途上地域等への技能等の移転を通じた国際協力の推進を目的に、1993 年に創設されたものである。2017 年11 月1日に、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るため、管理監督体制の強化や制度の拡充などを内容とする外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28 年法律第89 号)が全面施行された。同法に基づいて設立された外国人技能実習機構では、制度の適正な実施及び技能実習生の保護のため、監理団体及び実習実施者に対する指導等や技能実習生に対する母国語相談等の支援を実施している。

(職業能力評価制度の整備)
(1)技能検定制度の運用(33億91百万円)
技能検定制度は、労働者の有する技能の程度を一定の基準に基づき検定し公証する国家検定制度であり、ものづくり労働者を始めとする労働者の技能習得意欲を増進させるとともに、労働者の社会的地位の向上などに重要な役割を果たしている。技能検定試験は、厚生労働大臣が、厚生労働省令で定める職種ごとに等級に区分(一部職種を除く。)して、実技試験と学科試験により実施しており、合格者は「技能士」と称することができる。
2020 年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により前期試験は中止されたものの、全国で約71.6 万人の受検申請があり、約29.9 万人が合格している。
1959 年度の制度開始からの累計では、延べ約764万人が技能士となっている。技能検定の職種は、2021 年8月に眼鏡作製職種を新設(2021 年8月施行)したほか、2022 年3月に電気機器組立て職種のシーケンス制御作業を職種として独立させ新設(2023 年4月施行)し、2022 年4月1日現在、130 職種となっている。また、2017 年9月から、ものづくり分野の技能検定の2級又は3級の実技試験を受検する35 歳未満の者に対して、最大9,000 円を支援するとともに、2018 年4月からは、エントリーレベルの3級の受検資格をさらに緩和したところであり、今後とも、技能検定の受検勧奨などを通じた普及拡大を図っていくことにより技能習得に取り組む若年者が増えることが期待されている。

(技能検定制度の概要)
○ 技能検定制度は、労働者の有する技能の程度を検定し、これを公証する国家検定制度であり、労働者の技能と地位の向上を図ることを目的に、職業能力開発促進法に基づき昭和34年から実施。
○ ものづくり分野を中心に、技能のウエイトが高く、全国的に需要を有する分野を対象に、国が主体となり全国、業種・職種共通の基準の下で制度を構築・運営。

(実施内容)
○ 厚生労働大臣が厚生労働省令で定める職種ごとに、厚生労働省令で定める等級(特級、1~3級など)に区分して、レベルに応じた技能・知識の程度を、実技試験及び学科試験により客観的に評価。令和4年4月1日現在、130職種(うち建設・製造業関係は造園、さく井、金属溶解、機械加工など99職種。ファイナンシャル・プランニングなどサービス業関係は31職種)。
○ 技能検定に合格した者は、「技能士」と称することができる(いわゆる名称独占資格)。
○ 都道府県が実施する方式(現在110職種)に加え、平成13年に、厚生労働大臣が一定の要件を満たすものとして指定する民間団体が実施する指定試験機関方式(現在20職種)を導入。

(実施状況)
○ 令和2年度は全国で約71.6万人の受検申請があり、約29.9万人が合格。(累計では延べ約764万人が「技能士」)
○ 令和2年度の受検申請者数が多い職種は、ファイナンシャル・プランニングの約43.5万人(対前年度比8.4%減)機械保全の約2.6万人(同33%減)、とび約1.6万人(同11%減)。

(2)職業能力評価基準
職業能力評価基準は、職業能力を客観的に評価する能力評価のいわば「ものさし」となるよう、業界団体との連携の下、詳細な企業調査による職務分析に基づき、仕事をこなすために必要な職業能力や知識に関し、担当者から組織や部門の責任者に必要とされる能力水準までレベルごとに整理し、体系化したものである。業種横断的な経理・人事等の事務系9職種のほか、電気機械器具製造業、自動車製造業、金属プレス加工業等製造業・建設業を含む業種別(2022 年4月現在56 業種)に策定している。

(職業能力評価基準)
― 概要
○ 職業能力評価基準は、職業能力が適切に評価される社会基盤づくりとして、平成14年から国と業界団体と連携の下で策定に着手。
○ 幅広い業種・職種を対象に、各企業において、この基準をカスタマイズの上、能力開発指針、職能要件書及び採用選考時の基準などに活用することを想定。
― 内容
○ 仕事をこなすために必要な「知識」や「技術・技能」に加えて、どのように行動すべきかといった「職務遂行能力」を、担当者から組織・部門の責任者まで4つのレベルに設定し、整理・体系化。
― 実績
○ 業種横断的な経理・人事等の事務系9職種、電気機械器具製造業、ホテル業など56業種で完成。

(3)社内検定認定制度の推進
社内検定認定制度は、職業能力の開発及び向上並びに労働者の経済的社会的地位の向上に資するため、事業主等が、その事業に関連する職種について雇用する労働者の有する職業能力の程度を検定する制度である。同制度では、技能振興上奨励すべき一定の基準を満たすものを厚生労働大臣が認定することとされており、2022 年4月1日時点、43 事業主等112 職種が認定されている。

(社内検定認定制度)
○ 社内検定認定制度は、事業主又は事業主団体等が、その雇用する労働者等の技能と地位の向上に資することを目的に、労働者が有する職業に必要な知識及び技能について、その程度を自ら検定する事業(すなわち社内検定)のうち、一定の基準に適合し、技能振興上奨励すべきものを厚生労働大臣が認定するもの。
○ 認定を受けた社内検定は、「厚生労働省認定」の表示をすることができる。
○ 厚生労働大臣は、認定した社内検定の名称、対象職種の名称、事業主の名称・所在地を厚生労働省のホームページにて公示する。
○ 認定により、社内の技能評価に客観性と公正性が担保され、労働者に技能向上及び自己啓発の目標を与えることができる。
○ 社内検定の構築により、社内の職業能力が整理・「見える化」され、経営戦略の再構築の促進や「ブランド化」による企業価値向上のほか、職業能力の向上についてモチベーションが高まる。
○ 社内検定の合格について、昇級・昇格の一要素としたり、諸手当を付与するなど、人事制度での活用が見込める。
(認定の基準)
○ 検定が、直接営利を目的とするものでないこと。
○ 検定を実施する者が、検定の適正かつ確実な実施に必要な経理的及び技術的な基礎を有するものであること。
○ 検定の公正な運営のための組織が確立されており、かつ、検定に当たる者の選任の方法が適切かつ公正であること。
○ 検定が、職業に必要な労働者の技能及び知識の評価に係わる客観的かつ公正な基準に基づくものであること。
○ 技能振興上奨励すべきものであること。
○ 検定が、労働者の有する職業能力に対する社会的評価の向上に資すると認められるものであること。
○ 検定が、技能検定を補完するものであること(等級区分の複数設定等)。
○ 検定が、学科試験及び実技試験で行われるものであること。
○ 原則として、検定がいずれの対象職種についても毎年1回以上実施されること。
○ 検定の実施計画を定めていること(社内検定実施規程に検定実施のための職員、会場、設備の確保などを規定)。
○ 検定の基準及び検定の実施の方法について、定期的に点検を行うこと。
○ 検定の合格者に付す称号が適切であること。
○ 検定の実施主体に暴力団員が関与していないこと。

(出典)経済産業省 2022年版ものづくり白書
 ・https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html

(つづく)Y.H