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国際通商システム(G7/G20/OECD)の動き(その2) | ISO情報テクノファ

ISO審査員及びISO内部監査員に経済産業省の白書を参考に各種有用な情報をお届けします。

■国際通商システム(G7/G20/OECD)の動き(その2)

①G7サミット(2022年)
議長国ドイツの呼びかけにより、2022年2月24日にG7首脳テレビ会議が開催され、岸田総理が出席した。

ロシア連邦軍によるウクライナ侵攻が開始されたことも踏まえ、会合後、G7首脳声明及びロシア連邦軍によるウクライナ侵攻に関するG7首脳声明が発出された。その後も、2022年3月24日にG7首脳会合がブリュッセルで開催され、岸田総理が出席した。また、2022年3月11日にG7首脳声明の発出が行われ、ロシアによる侵略を非難し、ロシアに対する制裁措置、ウクライナ支援等を実施していくことが確認された。

[参考]G7メンバー・招待国・国際機関
・2月24日G7首脳テレビ会議
<G7メンバー>日本、米国、フランス、ドイツ(議長国)、英国、イタリア、カナダ、EU
<国際機関>北大西洋条約機構(NATO)・3月24日G7首脳会合
<G7メンバー>日本、米国、フランス、ドイツ(議長国)、英国、イタリア、カナダ、EU
<招待国>ウクライナ>
<国際機関>北大西洋条約機構(NATO)

②貿易大臣会合
2022年3月23日、ドイツ議長年1回目となるG7貿易大臣会合がテレビ会議形式で開催され、当時の萩生田経済産業大臣、林外務大臣が参加した。

本会合では、ウクライナ情勢や第12回WTO閣僚会議(MC12)等に関して議論がされ、ロシアのウクライナ侵攻に対してG7で連携して対応することや、多角的貿易体制の維持・強化に向けてG7でWTO改革を主導していくことを確認した。

[参考]参加した国際機関世界貿易機関(WTO)

③臨時エネルギー大臣会合
2022年3月10日、ロシア・ウクライナ情勢を踏まえたエネルギー情勢について議論すべく、臨時のG7エネルギー大臣会合が開催された。会合の中では、当時の萩生田大臣より、G7として連帯し、安定供給の確保やエネルギー源の多様化等に取り組み、エネルギー市場の安定やエネルギー安全保障を強化していく重要性等について発言し、これらの観点を盛り込んだ閣僚声明が採択された。

2022年3月28日、ロシア・ウクライナ情勢を踏まえたエネルギー情勢について追加で議論すべく、臨時のG7エネルギー大臣会合が開催された。G7のエネルギー大臣らは、プーチン大統領によるルーブルでの支払いに関する要求を拒否し、ほぼ全てのガス供給契約ではユーロまたはドルでの支払いが明確に規定されていることから、合意済のガス供給契約を尊重することを再確認した。会合の中では、萩生田大臣より、今般のロシア政府による一方的な民間取引の契約変更指示は、民間企業の取引の安定性を著しく阻害するものであり、許容できるものではないことを発言した。

[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>ウクライナ
<国際機関>国際エネルギー機関(IEA)

①G20サミット(2021年)
2021年10月30日及び31日、イタリア・ローマにてG20ローマ・サミットが開催され、世界経済のより良い回復と持続的かつ包摂的な成長の実現に向け、新型コロナウイルス対策を含む保健、気候変動、開発等の重要課題について議論が行われた。

岸田総理からは、これらの重要課題に関し、日本の取組やG20として連携を強化すべき点について発言し、議論に貢献した。世界経済に関するセッションでは、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の理念の下、国際的なルール作りの議論を主導するとともに、国内においても、「デジタル田園都市国家構想」の下、地方からデジタルの実装を進め、都市部とのデジタル格差を是正していく旨述べた。

議論の総括として、G20ローマ首脳宣言が発出され、「開かれた、公正で、公平で、持続可能で、無差別かつ包摂的な法に基づく多角的貿易体制の役割の重要性と、WTOを中心とした、体制強化へのコミットメントを確認」し、「WTOの全機能を改善しつつ必要な改革を担うため、すべてのWTO加盟国と積極的にかつ建設的に取り組んでいくことに引き続きコミット」すること、「公正な競争の重要性を強調し、好ましい貿易及び投資環境を育成するため、公平な競争条件の確保に引き続き取り組む」こと、「信頼性のある自由なデータ流通及び国境を越えたデータ流通の重要性を認識」し、「将来の相互運用性を促進するため、引き続き共通理解を促進し、既存の規制手段と、信頼性のあるデータ流通を可能にする枠組との間の共通性、補完性及び収れんのための要素の特定に向け、引き続き取り組んでいく」こと等が明記された。

[参考]G20メンバー・招待国・国際機関
<G20メンバー>イタリア(議長国)、日本、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、英国、米国、EU

<招待国>オランダ、シンガポール、スペイン、ブルネイ(ASEAN議長国)、ルワンダ(AUDA-NEPAD議長国)、コンゴ民主共和国(AU議長国)

<国際機関>アフリカ連合委員会(AUC)、国連食糧農業機関(FAO)、金融安定化理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、国際連合(UN)、世界銀行(WBG)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)

②貿易・投資大臣会合
2021年10月12日、G20貿易・投資大臣会合がイタリアで開催され、当時の広瀬経済産業審議官、山﨑在ジュネーブ国際機関日本政府代表部大使が参加した。

本会合では、新型コロナウイルス感染症や気候変動問題への懸念などが国際的な課題となる中、第12回WTO閣僚会議(MC12)も見据え、貿易政策面からどのような貢献ができるか議論がなされ、閣僚声明が採択された。閣僚声明においては、主として、以下の旨が盛り込まれた。
・WTOの全ての機能を向上させるための改革が必要。
・WTOの再活性化に向け、改革を前進させる重要な機会とするため、第12回WTO閣僚会議を成功させ、前進に必要となる積極的な関与と政治的な機運を与えることにコミット。
・新型コロナウイルス感染症に対処するための緊急的な貿易措置が必要な場合でも、的を絞り、釣り合いのとれた、透明かつ一時的なものであって、最も脆弱な人々を守る必要性を反映し、不必要な貿易障壁やグローバル・サプライチェーンへの混乱を生じさせず、WTOルールに整合的であることの重要性を改めて強調。
・WTOにおける電子商取引、投資円滑化、サービス国内規制に関する共同声明イニシアティブに参画しているG20メンバーは、全てのWTO加盟国の積極的な参加を奨励し、第12回WTO閣僚会議までの有意義な進展を期待。
・円滑なビジネス環境とルールに基づく多角的通商システムの維持のため、公平な競争環境の確保に努める。
・多くのG20参加国は産業補助金に関する規律を強化する必要性、および政府支援の透明性の重要性を確認。
・通商政策と環境政策はお互いに支えあうべきであると確信。
・気候変動に対応する措置はWTO整合的であるべきことを再確認。
・中小零細企業は、貿易や投資協定によって成長する市場へのアクセス向上で恩恵を得る立場にあり、グローバル市場が中小零細企業の成長の重要な源であることを認識。

[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>ブルネイ、コンゴ民主共和国、ヨルダン、オランダ、ニュージーランド、ルワンダ、シンガポール、スペイン、スイス

<国際機関>世界貿易機関(WTO)、世界銀行(WB)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)、国際貿易センター(ITC)

③デジタル大臣会合
イタリアが議長国を務め、2021年8月5日に、G20デジタル大臣会合がハイブリッド形式で開催された。本会合には、日本から当時の佐藤経済産業大臣政務官及び武田総務大臣が参加し、「強靭で強力で持続可能で包摂的な回復のためのデジタル化の活用」を全体テーマとし、デジタル経済及びデジタルガバメントに関する11分野についての議論が行われた。

会合中、佐藤政務官からは、2019年のG20大阪サミットで日本が提唱したコンセプトであるDFFTの具体的な推進に向けて、データの越境移転に対する各国規制の共通項を見出し、相互運用性に関して議論することの重要性や、WTO電子商取引交渉等を通じて、より多くの国とデジタル経済の発展のための国際的なルール作りを加速させていく旨発信した。また、健全なデジタル市場の発展のために、リスクへの対応とイノベーションの創出を両立する、柔軟かつ機動的な「アジャイル・ガバナンス」の確立が急務である旨主張し、我が国での取組を紹介するとともに、国際的にも実装に向けた議論が加速している旨発信した。こうした議論を踏まえ、新型コロナウイルス感染症からの強靭で強力で持続可能で包摂的な回復に向けて、デジタル化の促進に、引き続き取り組んでいく旨のメッセージをG20デジタル大臣宣言として採択した。

<デジタル大臣宣言の内容>
1.デジタル経済
(持続可能な成長のための生産におけるデジタルトランスフォーメーション)
強固かつ強靭で持続可能性のある包括的な回復を促進するために、生産のデジタル化に向けた取組を進めるとともに、国際協力を強化することをコミットし、2021年6月に関連するマルチステークホルダーフォーラムを開催。

(零細中小企業の包摂性及びスタートアップ促進のための信頼できるAI活用)
2019年にG20大阪サミットで合意したG20AI原則に基づき、信頼できるAIの実装及び人間中心のアプローチにコミットする意思を再確認するとともに、零細中小企業等へのAI導入促進に係る政策事例を歓迎。

(デジタル経済の測定、実践、影響)
2020年にG20リヤドサミットで合意したデジタル測定のためのG20ロードマップが優先事項であることを再確認するとともに、マルチステークの対話を促進すべく、2021年2月に専門家ワークショップを開催。

(グローバルなデジタル経済における消費者意識と消費者保護)
パンデミック下でオンライン取引が急増したことを踏まえ、消費者保護のために、消費者の意識向上、教育、支援に向けた行動をとることをコミットし、2021年5月に関連するマルチステークホルダーフォーラムを開催。

(デジタル環境における青少年保護とエンパワーメント)
パンデミック下でデジタル技術の使用に伴う青少年へのリスクが増加したことから、今回初めて優先事項として取り上げ、G20ハイレベル原則をまとめ、デジタル環境における青少年保護及びエンパワーメントに取り組むことをコミット。

(スマートシティ・コミュニティのためのイノベーション促進)
適切な公共調達がスマートシティにおけるイノベーションの促進を進めるものであり、G20の取組を再確認するとともに、スマートシティ・スマートコミュニティのための革新的な公共調達の事例集を歓迎。

(接続性と社会的包摂)
接続性のギャップを埋めるコミットメントを再確認し、2025年までの接続性確保という目標を促進。2021年4月にステークホルダーフォーラムを開催。デジタルインフラ投資に向けたG20財務大臣・中央銀行総裁会合の努力を歓迎。

(信頼性のある自由なデータ流通と越境データ流通)
DFFT及び越境データ流通の推進の機会及び課題を再認識するとともに、DFFTの実現に向けて、OECDが実施した国境移転データに関する規制的アプローチの共通項マッピングに係る作業を認識。

(デジタルガバメント)
公共サービスとその継続性のためのデジタルツールについて
・2018年にG20ブエノスアイレスサミットで策定されたG20デジタル政府原則の重要性を認識。
・リスクを管理しながら、デジタル技術及び必要な能力育成に取り組むコミットメントを再確認。
・OECDと取りまとめたデジタルツールG20大要を歓迎。
・デジタルアイデンティティプライバシーと個人情報保護のための技術サービスにより公共部門と民間のニーズと期待に応えうることができると認識。
・OECDと共同で作成したG20デジタルID実例集を歓迎。
・アジャイル規制デジタル化や技術革新に対応するため、よりアジャイルで柔軟で強靭なガバナンスや規制アプローチなどの様々なアクションが取られていることを留意。
・G20参加国のアジャイルな規制に関する調査の他、国際機関の関連作業を認識。

[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>ブルネイ(ASEAN議長国)、コンゴ民主共和国(AU議長国)、オランダ、ルワンダ(NEPAD議長国)、シンガポール、スペイン

<国際機関>国連工業開発機関(UNIDO)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、経協力開発機構(OECD)、国連食糧農業機関(FAO)、国際電気通信連合(ITU)、国連欧州経済委員会(UNECE)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連統計部(UNSD)、世界銀行

④気候・エネルギー大臣会合
2021年7月23日、イタリアが主催するG20気候・エネルギー大臣会合がイタリア・ナポリにて開催され、経済産業省から当時の長坂経済産業副大臣が参加した。

G20気候・エネルギー大臣会合では、都市と気候変動に関するセッション、持続可能な回復とクリーンエネルギー・トランジションに関するセッションが開催され、気候変動対策の強化や、エネルギートランジションの重要性などの論点について議論された。長坂経済産業副大臣は、2つのセッションに参加し、2050トゼロ目標と、これに整合的で野心的な2030年目標の追求は、新たな成長を生み出すものでなければいけないこと、あらゆるエネルギー源、あらゆる技術を活用した多様且つ現実的なトランジションが重要であること、これらの論点について議論を深めるべく、東京・ビヨンド・ゼロ・ウィークを開催する予定であること等につき発言した。
会合での議論の内容を踏まえ、閣僚声明が取りまとめられた。

[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>オランダ、シンガポール、スペイン

<国際機関>IEA(国際エネルギー機関)、UNEP(国際連合環境計画)、OECD、IRENA(国際再生可能エネルギー機関)、ENEA(イタリア政府機関)等

(つづく)Y.H

(出典)経済産業省 通商白書2022
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/index.html