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国際通商システム(G7/G20/OECD)の動き | ISO情報テクノファ

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■国際通商システム(G7/G20/OECD)の動き

ここからは2021年以降の主要国際会議の動きをみていく。

①G7サミット(2021)
2021年6月11日から13日にかけて、英国・コーンウォールでG7コーンウォール・サミットが開催された。当該サミットは、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大以後、初めて対面で開催されたサミットとなった。G7の中心的議題である、世界経済・貿易や外交・安全保障について、G7首脳間で率直な議論が行われたほか、新型コロナ対応を含む国際保健、気候変動・生物多様性及び基本的価値に関する議論については、アウトリーチ国や国際機関からの参加も得て、議論が行われた。

菅総理は、新型コロナ対策・国際保健、世界経済・自由貿易、気候変動、地域情勢といった重要課題について、積極的にG7の議論に貢献し、首脳間の率直な議論をリードした。「開かれた社会」に関するセッションでは、データ保護の課題に対処しながら価値あるデータ主導型技術の潜在力を活用するため、信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)を推進する重要性を指摘するとともに、基本的価値を共有する国々が、インド太平洋地域へのコミットメントを明確にすることが重要であり、特にASEANと連携しつつ、具体的協力を推進すべきと述べた。

G7として協力して新型コロナに打ち勝ち、より良い回復を成し遂げ、国際協調と多国間主義に基づき、民主的で開かれた経済と社会を推進することで一致した。議論の総括として、G7首脳コミュニケ、3つの附属文書及びその他の文書が発出され、「自由で公正な貿易に対するコミットメントの下、連帯する」こと、「持続可能なサプライチェーンへの移行の促進に関するG7貿易大臣の結論を承認し、カーボンリーケージのリスクを認識し、このリスクに対処し、我々の貿易慣行がパリ協定の下での我々のコミットメントと合致するよう協力的に取り組む」こと、「新型コロナウイルス対策に不可欠な物品及びワクチン並びにその原料の製造における、開かれた、多様で、安全かつ強靭なサプライチェーンに対する貿易大臣の支持を歓迎する」こと、「個人を強制労働から守り、グローバルなサプライチェーンが強制労働の利用に関わらないことを確保するため、我々自身が利用できる国内的手段及び多国間機関を通じて協働し続ける」こと、「WTOの現代化において進展が図られることを確保する上で必要な持続的な取組及び機運を与える」こと、「引き続きデータ保護に関する課題に対処しながら価値のあるデータ主導の技術の潜在力をより良く活用するため、信頼性のある自由なデータ流通を擁護する」こと等が明記された。

[参考]G7メンバー・招待国・参加した国際機関
<G7メンバー>日本、米国、フランス、ドイツ、英国(議長国)、イタリア、カナダ、EU
<招待国>豪州、韓国、南アフリカ、インド
<国際機関>国連、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、経済協力開発機構(OECD)

②G7貿易大臣会合
2021年のG7議長国であった英国は、過去開催されてこなかったG7貿易大臣会合を立ち上げ、合計3回の貿易大臣会合をオンラインで開催した。翌2022年の議長国であるドイツは、本会合の意義を引き継いで、2022年もG7貿易大臣会合を開催することを決定した。

(第1回目)2021年3月31日に開催され、当時の梶山経済産業大臣、茂木外務大臣が参加した。本会合では、WTO改革、貿易を通じた気候変動対策・環境問題への貢献、医療関連物資のサプライチェーン強靭化、デジタル貿易の促進などについての議論がなされ、議長声明が発出された。
議長声明においては、主として、以下の旨が盛り込まれた。
・多角的貿易体制の必要性を再確認し、WTO改革の議論に不可欠な政治的モメンタムを提供する。
・貿易を通じた気候変動対策・環境問題に対する貢献の重要性を再確認し、持続可能なサプライチェーンの構築等に向けて議論を進める。
・医療関連物資の貿易促進及びサプライチェーン強靭化に向けた通商政策のあるべき方向性を検討する。
・デジタル保護主義への反対、信頼性のある自由なデータ流通(data free flow with trust)の重要性等に合意し、デジタル貿易に関する高い水準の原則の策定を進めることを約束。
・デジタル貿易はWTOの新たなルール形成における重要分野であり、WTO電子商取引交渉を進める取組を強化し、第12回WTO閣僚会議までに実質的な進捗を達成することを目指す。

[参考]参加した国際機関
世界貿易機関(WTO)

(第2回目)2021年5月27日及び28日に開催され、当時の梶山経済産業大臣、茂木外務大臣が参加した。本会合では、第12回WTO閣僚会議も見据え、WTOを中心とする自由貿易体制が抱える課題や、その対応の方向性についての議論がなされ、閣僚声明が採択された。
閣僚声明においては、主として、以下の旨が盛り込まれた。
・産業補助金、国有企業に関するより強力な国際的な規律の策定に向けた交渉開始を求め、強制技術移転への対処を継続。

・WTO紛争解決制度の改革に関する率直かつ建設的な議論を行い、10月の次回会合に向けて議論を継続することを約束。
・グローバルなサプライチェーンにおける強制労働を防止、特定、撤廃するべく、データ及び証拠を共有するための技術的な議論を実施し、ベストプラクティスに基づく提言を策定するよう、事務方に指示。
・WTOで行われている貿易と環境持続可能性に関する体系的議論が、機運を高める機会であることを認識。
・世界的なワクチンの生産と流通の拡大に向けた解決策を特定するため、議論を優先的に行い、WTOにおける作業を支援。
・デジタル保護主義への反対について団結。信頼性のある自由なデータ流通(data free flow with trust)の重要性に合意。データローカライゼーションがデータ流通に影響を与え、ビジネス、特に中小零細企業に影響を及ぼしうることを認識。10月の貿易大臣会合において「デジタル貿易原則」を採択。

[参考]参加した国際機関等
世界貿易機関(WTO)、経済協力開発機構(OECD)、B7、ジェンダー平等諮問委員会(GEAC)

(第3回目)2021年10月22日に開催され、当時の萩生田経済産業大臣、石井経済産業副大臣、三宅外務大臣政務官がオンライン参加した。
本会合では、強制労働や市場歪曲的措置への対応、気候変動対策やデジタル化の進展を踏まえた政策的対応等に関して議論がなされ、閣僚声明とあわせて、G7で初めてとなる、強制労働及びデジタル貿易に関する2つの附属文書が採択された。
閣僚声明及び附属文書においては、主として、以下の旨が盛り込まれた。
・WTO閣僚会議を成功裏に開催し、貿易と保健に関する多面的な成果に合意できるよう取り組む。有害な漁業補助金の実効的な規律に関する有意義な合意等を支持。
・WTO改革に向けた取組を前進させることにコミット。モニタリング、交渉と紛争解決制度を適切に機能させるためには、長年の課題に対応することが必要。進捗に必要な政治的な機運を与えるため積極的にこの取組に関与。
・市場歪曲的措置について措置の不透明性が継続していることに留意。市場歪曲的措置に対抗し、産業補助金や国営企業に対する強化された国際ルールの発展を支持。
・あらゆる形態の強制労働の利用に関する懸念を共有。グローバルなサプライチェーンの中で強制労働を特定し、防止、撤廃するための提言(附属文書A:強制労働にかかるG7貿易大臣声明)を支持。
・デジタル保護主義・権威主義に反対。G7デジタル貿易原則(附属文書B)を採択。電子商取引の共同イニシアティブを前進させることにコミット。
・気候に対してカーボンリーケージが与えうる悪影響を認識。これに対するいかなる措置も、透明でWTO整合的であることが重要。

<附属文書A:強制労働に係るG7貿易大臣声明>
・グローバルなサプライチェーンにおいて、国家により行われる脆弱なグループ及び少数派の強制労働を含むあらゆる形態の強制労働の利用に関する懸念を共有。
・貿易政策が、グローバルなサプライチェーンにおける強制労働を防止し、特定し、撤廃するための包括的なアプローチにおける重要な手段の一つとなりうることを認識。
・全ての国、多国間機関、ビジネスに対し、人権と国際労働基準を堅持することにコミットし、責任ある企業行動についての関連原則を尊重するよう要求。
・強制労働を根絶し、強制労働の犠牲者を保護し、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)によって認められている原則の実施を改善する上での政府の重要な役割を認識。
・ビジネスにとっての明瞭性と予見可能性を更に強化することにコミット。
・人権デュー・ディリジェンスに関するガイダンスを促進することにコミット。
・個人を強制労働から守り、グローバルなサプライチェーンにおいて強制労働が利用されていないこと及び強制労働を行った者に対し責任を問うことを確保するため、各国が利用できる国内的手段及び多国間機関を通じた協働を継続。

<附属文書B:G7デジタル貿易原則>開かれたデジタル市場>
・G7が団結し、デジタル保護主義・権威主義へ対抗するとともに、オープンなデジタル市場を支持。
・インターネットは、オープンで、自由で、かつ、安全なものでなければならない。
・送信されたコンテンツを含む電子的送信は、電子的送信におけるWTO関税不賦課モラトリアムに従い、関税が免除されるべき。関税賦課の恒久的な禁止を支持。信頼性のある自由なデータ流通
・デジタル経済がもたらす機会を活用するため、信頼性のある自由なデータ流通(data free flow with trust)を可能とすべき。
・データローカライゼーション要求が保護主義・差別的目的に用いられる状況を懸念。
・プライバシーや知財保護等に取り組む一方、越境データ流通に対する不当な障壁に対処。
・ガバメントアクセス(政府による個人データへのアクセス)に関する共通原則の策定を目指す。労働者、消費者及び企業の保護・デジタル貿易を支える労働者の保護及びオンライン消費者保護を実施すべき。
・サイバーセキュリティを確保し安全なデジタル貿易環境を維持すべき。
・市場参入要件として、技術移転やソースコード・暗 号の開示が求められるべきでない。
・ガバメントアクセス(政府による個人データへのアクセス)に関する共通原則の策定を目指す。デジタル貿易体制
・より多くの企業が貿易に参加できるよう、貿易関連書類の電子化を推進すべき。
・相互運用性を主たる目的とし、シングルウィンドウが開発されるべき。公正かつ包括的なグローバル・ガバナンス
・WTOにおけるデジタル貿易の共通ルール作り(電子商取引交渉)を進展させるべき。
・包摂的な形での成長を推進するため、各国間及び国内のデジタル・デバイドへの取組が強化されるべき。

[参考]参加した国際機関等
経済協力開発機構(OECD)

③デジタル・技術大臣会合
英国が議長国を務め、2021年4月28日及び29日の2日間にわたり、G7デジタル・技術大臣会合がオンラインで開催された。本会合には、日本から当時の佐藤経済産業大臣政務官及び武田総務大臣が参加し、“Building Back Better”をテーマに、①情報通信インフラのサプライチェーン、②デジタル技術標準の開発、③ Data Free Flow with Trust(信頼性のある自由なデータ流通。以下「DFFT」)、④インターネットの安全性向上、⑤デジタル市場における公正な競争の確保、⑥貿易業務の手続の電子化の6分野についての議論が行われた。

会合中、佐藤政務官からは、2019年のG20大阪サミットで日本が提唱したコンセプトであるDFFTの実現加速に向け、本会合で取りまとめられたDFFT協力ロードマップに基づき、各国と連携強化を図りながら、引き続き推進していくことの重要性を発信した。また、データの流通を支える情報通信インフラについて、O-RANなどのオープン・アーキテクチャに基づく5G携帯基地局の整備推進のための税制支援などの日本の取組を紹介し、多様で持続可能な情報通信サプライチェーン市場の確立に向けて取り組んでいく旨発信した。さらに、健全なデジタル市場の発展のために、リスクへの対応とイノベーションの創出を両立する、柔軟かつ機動的な「アジャイル・ガバナンス」を、G7が中心となって確立していくことの必要性を主張した。こうした議論を踏まえ、新型コロナウイルス感染症からの包摂的な復興において、デジタル技術を活用しながら生産性の高い強靭な社会を構築することを目指し、民主主義的な価値を共有するG7各国がともに協力するというメッセージを大臣宣言として採択した。

<デジタル大臣宣言の内容>
5Gや将来の通信技術を含む通信インフラ等が果たす役割、及びその安全性と強靱性を確保する重要性を認識。イノベーションの促進や、オープンで相互運用可能な通信アーキテクチャについて検討を開始。デジタル技術標準の開発における政府管理型アプローチに反対し、産業界主導の包摂的なマルチステークホルダーアプローチを支持。国境を越えてデータを自由に流通させることは、経済成長とイノベーションのために重要。

2019年のG20大阪首脳宣言等でも言及されたDFFTを実現するため、ⅰ)データローカライゼーションの影響評価、ⅱ)越境データ移転に関する各国政策の比較分析、ⅲ)信頼性のあるガバメントアクセスのための指針策定、ⅳ)データの相互共有の促進について具体的な成果を目指し、ロードマップを策定。

人々がオンライン上で安全な選択ができるよう、インターネットリテラシーの向上が必要であり、インターネットの安全性を向上させるための基本原則と具体的行動を承認。競争性が確保されたデジタル市場ではイノベーションを促進し消費者の選択肢を増やすことができる一方、巨大企業による市場支配力の濫用が懸念される。政府関係者間の会議を開催し、将来の協力分野等を議論。貿易業務の電子化により、手続の効率性向上やコスト削減につながる。互換性が担保された形での国内制度改正や、他の国際フォーラにおける取組を支援するための専門家会合を開催。

[参考]参加した招待国・国際機関
<招待国>豪州、韓国、南アフリカ、インド
<国際機関>経済協力開発機構(OECD)

④気候・環境大臣会合
2021年5月20日から21日にかけて、英国が主催するG7気候・環境大臣会合がテレビ会議形式で開催され、経済産業省から当時の梶山経済産業大臣及び江島経済産業副大臣が参加した。G7気候・環境大臣会合では、気候・エネルギーに関するセッション、環境に関するセッション、両分野に関する合同セッションが開催され、会合では、気候変動への対応、生物多様性の確保などの課題について議論された。

気候・エネルギーに関するセッションでは、パリ協定の実施や、エネルギー、産業、モビリティ分野の脱炭素化について、各国間で活発な議論が行われた。また、G7の議長国である英国がCOP26の議長国でもあることも踏まえ、COP26に向け各国が連携して行動していくことが確認された。梶山経済産業大臣は、気候・エネルギー大臣セッションに参加し、2050年ネットゼロ及び2030年目標の追求が新たな成長を生み出すものであるべきこと、途上国も含めた世界全体でのネットゼロ社会への移行に向けては、安定的なエネルギー供給との両立にも留意した上で、各国の事情に応じて、「あらゆるエネルギー源、あらゆる技術」をバランスよく活用することが重要であることを発言した。加えて、日本の持続可能なモビリティに関する取組みについて発言した。江島経済産業副大臣は、合同セッションに参加し、世界全体のカーボンニュートラルを実現するための国際連携の重要性について発言した。こうした議論に加え、環境セッションにおける生物多様性等に関する議論を踏まえ、閣僚声明が取りまとめられた。

[参考]参加した招待国
<招待国>オーストラリア、韓国、南アフリカ、インド

(つづく)Y.H

(出典)経済産業省 通商白書2022
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/index.html