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ISO内部監査って何?どうやるの? (その3)

●ISO内部監査で答える側を務めることになりました(その2)

入社7年目の鈴木さん。今は営業部所属です。
部長からISOに関する知識、経験が乏しいことをついに見抜かれ、まずは30分の特別講義と言って始まった部長レクチャー、ようやく肝心の今回受けるISOの内部監査についての話に入っていくのでした。

「さて、今回の内部監査の話だ。内部監査は当社の場合、1年に1回実施してきているのは知っているだろうな」
「確かに毎年ありましたね」
「そうか、それがルールになっている、ということも認識がない、というわけか。あまり言いたくはないが、前の部署ではISOに関する教育訓練は相当にさぼっているようだな。といってもうちの部でも体系だった教育をしているわけではないか・・・。まあそれはさておき、毎年秋の時期に内部監査をするのが慣行になっているし、ルール上は年に1回行う、としているからそれは覚えておきなさい」
「はい」
「そして今、ルールといったけど、当社にある業務運営基本マニュアルは読んだことあるな」
「あっ・・・はい」
「何だい、歯切れが悪いなあ。ということは何か。これも新入社員研修の時にレクチャーを受け、存在は認識したけどそれ以降は読んだ記憶ない、ということか・・・」
「あの・・・・図星です」
「うん、だんだんわかってきたぞ。君の同期は何人いるんだ」
「今残っているのは、えっと、6人です」
「もう辞めていった者もいるってことだな、まあそれはいい。そして君の前後の年もだいたいそのくらいの人数の同期がいると思ってよいのかな」
「はい、だいたいそうだと思います」
「まあそうすると、40~50人、いやもっと多いかもしれないが、それだけの人数の若手がISOへの認識が乏しいかもしれない、ということだな。いやこれは大きな問題に向き合わないといけないかもしれないな。
まあそれは部長会議でのマターとして、内部監査の話に戻すぞ。その内部監査は例年、半日(3~4時間)かけてうちの部署の業務の取り組み状況を見ていくんだ。ただし業務全般というわけではなく、あくまで環境関係つまり、ISO 14001に基づき制定され、活用されているわが社の業務運営基本マニュアルに基づいて監査が行われる、というものとなっている。これは理解できるかな」
「んん、少しお話のスピードが早かったです。営業部の仕事全部のチェックを受けるのかと思っていたのですが違うのですか」
「そう、それは少々違う」
「あくまで業務の中で、環境関連の取り組み状況がどのようになっているか、ということの監査を受ける、ということですか」
「そう、それでいい」
「そうなんですね。日頃、環境への意識は少なくとも営業部に来てからはすっかり遠のいてしまったというか、忘れてしまったと言ってもよいくらいなのですが・・・」
「おいおい、よくもまあ、ぬけぬけと言ってくれるね。まあ、確かに君は購買担当の仕事もしていたから、その時は環境への取り組みを意識するときも多かっただろう。それに比べると営業の場合はだいぶ立ち位置が変わるが、例えば一例だが、コピー用紙をお客様のところに納入するケースがあるだろ」
「はい」
「その時にバージンパルプの紙なのか、再生紙なのか、再生紙であっても古紙配合率100%なのか、そして白色度何%なのかといったことはいろいろ確認、折衝事項になっているのは大丈夫だよな」
「はい、それはお任せください。それぞれの製紙会社さんでもいろいろな紙を作られているので、すべての数字を頭に叩き込むことまではできていませんが、それらの違いを含めて環境配慮の用紙についてはお客様とはよく意見交換する機会がありますので」
「まあ、それを聞いて一安心だ。我々の営業部では、その知識はある意味ベースともいえる知識だが、それらのことをきちんと把握したうえで、環境配慮型の営業活動をする、というのが大事なテーマの一つで、そのポリシーなどが業務運営基本マニュアルに書いてあるんだ。今日この後、業務運営基本マニュアルは必ず目を通しておくんだよ」
「はい、わかりました」

「そして内部監査ではその業務運営基本マニュアルを大事な基準文書として、日頃我々の営業活動において、お客様と折衝時に環境配慮の対応ができているか、そしてその決定事項を踏まえて社内を動かしていく際にも、そのお客様の環境配慮の意思が内部にもれなく伝達されているかどうか、そして最終的にお客様に納品される品物が当初の想定通りの環境配慮ができた製品に仕上がっているか、という一連のプロセスがきちんとできているかどうかを監査してもらうことになるんだ」
「なるほど、あまり今まで環境配慮、ということを強く意識してきませんでしたが、その流れであれば、普段私も仕事をしていく中で取り組んでいることとの違和感を感じませんので大丈夫ではないかと思いました・・・」
「そうか、それは頼もしいことだ。確かに本当に普段、ISOのことなど気にせずに、でも狙ったパフォーマンスが挙げられていれば理想と言ってもよいだろう。ただしだんだん人間慣れが出ると、基本ルールからの逸脱というものがどうしても出てしまうものでね。まあ、今回の監査もその基本ルールからの逸脱がないかどうか初心に返って点検してもらう、という気持ちで受けてもらえばよいということなのだよ」
「えっ、初心に返ってですか」
「おお、それじゃかえって鈴木君にはわからなくなるかもしれんなあ。簡単に言えば、内部監査だからと言って、何か特別の準備をする必要はなく、平常心で、普段の業務運営をどのように行っているかをそのまま監査してもらえばよい、ということなんだよ。本当にわが社にISOが浸透しているなら、それで全く問題は出てこないはずなのでね。とは言っても現実はなかなかそう理想的にはいかないので、たまには上司以外の違った人の目で、そして新鮮な気持ちで、普段の仕事ぶりを評価してもらう、というのが内部監査なわけだ」
「だんだん話が込み入ってきたように感じますが、でもおっしゃっていることはわかったような気がします。つまり、内部監査を受けるから、といって何か慌てて準備したり、緊張して臨む必要はなく、普段のままの仕事ぶりをチェックしてもらえばよい、ということですよね」
「まあ、簡単に言えばそういうことだ」
「わかりました、ありがとうございます。これで内部監査も怖い、なんて気持ちにならずに臨めそうです」
「おいおい、そう簡単に決めつけてくれるなよ。まずは業務運営基本マニュアルを1度しっかり全編にわたって読んでからもう1回、そのセリフを言えるかどうか聞かせてほしいんだなあ」
「えっ、業務運営基本マニュアルを読むと何かあるんですか」
「それはまあ、読んでみないと、何とも言えんなあ」
「わかりました。今日帰るまでに読んでおきます」
「うん、頼んだよ、流し読みではなく、しっかり読み込んでくれよ」
「はいいい・・・・・」

(次回に続けます)