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ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール(第16回)

平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第16回

改善/継続的改善

活用方法

要素 コメント
ISO 9001との関連 MR RM PR M&A Imp
活用範囲 あらゆるタイプの組織
製造とサービスの両方
部門と組織
システムにおける変化の度合い
人々に関する変化の度合い
利益レベル 実行の成功度合いに応じて大から中
参加レベル 完全に推進母体として
成熟レベル 経験者
時間尺度 12ヶ月以上
投資レベル 高い
実施方法 プログラム

背景

改善(Kaizen)は日本の継続的改善の考え方で、単純にする、小さくする、安価で真のコスト削減をする逐次的な改善であり、より高品質で効率のよい生産性をもたらします。

日本の改善アプローチへの関心は、1960年代、1970年代に高まり、それまでは見かけだけの安物商品を作ると思っていた、世界の一部(日本)からの新しい競争に、欧米の組織は直面することになりました。ここに、安価だけではなく、より高品質と仕様の商品を生産する新しい競争相手が出現しました。

「革命」は、2人のアメリカ人、Deming博士とJuran博士によって導かれましたが、当時はアイディアへの著作権という概念がなかったため無報酬でした。

原則

改善にある主要な原則は、Demingサイクルに埋め込まれています。

マネジメント、「プロセス対結果」、品質第一、及び「次工程はお客様」等、P-D-C-A継続的改善の要素を支える多くの原則があります。

マネジメント

日本人はマネジメントには2つの主要な機能があると信じています。維持管理と改善です。維持管理は、現有の技術的な、経営上の、そして運営上の基準を持続し、研修と訓練を通して水準を保持することを意味します。管理者は維持管理の下では、全員が標準業務処理手順(SOPs)に従うように、決められた業務を実行します。改善は現在の水準を上げることに向けられた活動を意味します。

欧米の管理者は、革新の魅力に引かれて短気で、改善が組織にもたらす長期的利点を見落とす傾向があることが示唆されています。改善は人間の努力、士気、コミュニケーション、研修、集団的活動、参加、及び自己規制を強調し、常識的で、安価な向上へのアプローチです。

「プロセス対結果」

結果が向上するためにはプロセスを改善しなければならないので、改善はプロセス指向の強い思考です。計画された結果が達成されないことは、プロセスに問題があること示しています。管理者は、そのようなプロセスの問題を明確にして、修正しなければなりません。改善は人間の努力に焦点を当て、欧米の結果ベースの思考と鋭く対立するものです。

品質第一

品質、コスト及び納期の主要目標のうち、品質は常に最優先におかれるべきです。顧客に示した価格と納期がどんなに魅力的でも、もし製品又はサービスの品質が悪かったら、会社は競争に勝てません。品質第一の信条の実行は、管理者の強い決意を必要とします。というのは、管理者は往々にして納期要求事項とか低コストへの妥協の誘惑に直面するからです。そのような状況に入り込むことは、品質だけではなく、事業そのものを犠牲にする危険を冒すことになります。

改善とは問題解決プロセスです。問題が正しく理解され解決されるには、問題は認識され関連データが集められ、分析されなければなりません。データのない問題を解決しようとすることは、科学的でなく、客観的でもありません。現状データを集めることは、活動に焦点を当て、改善の出発点として役立つことです。

問題が特定され、是正処置がとられたならば、再発防止策が講じられるべきです。この活動は「誤り防止」といい、日本語ではポカヨケと呼ばれています。正しい方法と、間違った方法の両方で部品を組み立てる例を考えて下さい。誤り防止とは、正しい方法でしかその部品を組み立てられないように工夫されている、組立方法のことをいいます。

次工程はお客様

すべての仕事は一連のプロセスで、各プロセスには顧客と供給者がいます。プロセスA(供給者)から供給された材料又は1つの情報は、プロセスBで処理され改善され、次にプロセスCに送られます。次のプロセスは、いつも顧客と見なされるべきです。顧客には2つのタイプがあり、一つは内部(社内)顧客であり、もう一つは外部(市場)顧客です。

組織で働いているほとんどの人々は内部顧客を扱います。この意識は、次のプロセスに不良品又は不完全な情報を渡さないという、信念に結びつくべきです。組織の全員がこのことを実行すれば、外部顧客は結果として高品質な製品又はサービスを受け取ることになります。

アプローチ

改善にはそれぞれに個性的な多くのアプローチがあります。これらのアプローチは、次のような共通なものを持っています。

  • 管理者のコミットメントを得る必要性
  • 顧客重視の必要性、プロセスのばらつき縮小の必要性について総てのスタッフの教育
  • プロセス志向のマネジメント
  • QC7つ道具の活用を含む問題解決

QC7つ道具は次の通りです。

  1. パレート図
  2. 特性要因図/魚の骨
  3. ヒストグラム
  4. 管理図
  5. 散布図
  6. グラフ
  7. チェックシート

その後、改善の原則は「TQM」プログラムの展開へと拡張されました(詳細は93ページ「総合品質経営(TQM)」参照)。