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ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール(第18回)

平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第18回

リーン・シンキング(Lean Thinking)

活用方法

要素 コメント
ISO 9001との関連 MR RM PR M&A Imp
活用範囲 あらゆるタイプの組織
製造とサービスの両方、しかし最も成功を収めてきたのは製造
組織
システムにおける変化の度合い
人々に関する変化の度合い
利益レベル
参加レベル 一体として
成熟レベル 経験者又は世界レベルの者
時間尺度 12ヶ月以上
投資レベル
実施方法 プログラム

背景

著作“The Machine that Changed the World(1991)”は、顧客関係を組織化して管理する良い方法があることを、豊富なベンチマーキングデータで示しています。対象は日本、特に有名なトヨタ生産方式の実践に焦点を合わせています。

それに続く著作“リーン・シンキング(1996)”は、結果を得るアプローチを説明しようとしました。その実践は今やヨーロッパ及びサービス業へと広がっています。

リーン・シンキングは「システム思考」にその根源を持っています。システム思考は、単純なアプローチ、論理的なアプローチ及び段階的なアプローチは、実際の世界では単純すぎると考えています。実際には、簡単なプロセスさえシステムの中に含まれていますし、システムの一部はシステム全体の運用に影響を与えます。

システム思考の例として、風呂に水を張ることを考えてください。あなたは蛇口を回し、水は蛇口から流れます。風呂の水位は上がり、水が必要な水位に達するに従って流量を減少させるために蛇口は締められ、ポイントにくると水は止まります。これは単純なシステムです。

原則

リーン・シンキングの重要な概念は、不要物の削減であり、次の5つの原則があります。

  1. 価値を明確にする。最初に価値とは何を意味するのかを、正確に定義する必要があります-これは顧客が実際に欲しいと思うものです(しかし、それらははっきりと表現されないでしょう)。また価値は、製品の一部だけではなく、製品全体に関して定義される必要があります。
  2. 価値の流れを特定する-製品又はサービスが流れる経路。
  3. フロー - 部品のバッチと行列の世界から変えることは、克服するべき最も困難な障壁の1つです。
  4. 引く-下流工程において顧客が求めるまで、上流工程では何も生産されません。引くことのキーは、反応システムと在庫削減です。引くことを準備しようとすることは、組織化に影響を与えます。
  5. 完全性とは、物事を最初正しく行うことです。事業を改善するために、定期的に改善ワークショップが開かれます。通常これらは2-3日続きます。改善ワークショップは、急進的に完全性を得ようとする道を閉ざすものではありません。例えば、価値の流れを再構成することで完全性が得られます。

リーン・シンキングの原則は、ジャスト・イン・タイム(JiT)生産の上にその考えの基礎を置いています。部品は通常、欲しい時に欲しい量だけ供給されるというわけではありませんが、顧客スケジュールと同期化すると顧客の製品流れと合うようになり、組み立て職場にある在庫は極限にまで削減されます。一般的な例は自動車座席の製造にあります。自動車座席は組み立て職場に格納できないほど多くのスペースを占めるとともに、自動車一台一台、色と材質が異なりますので、ラインを流れる自動車の仕様の順に、通常近くにある供給者の倉庫から連続的に供給される必要があります。

ジャスト・イン・連続供給は、顧客と供給者間の効果的な情報共有システムと、運用における両者間の高い統合性を必要とします。次のステップは、供給者側の要員が最終組み立てに責任をもつという、普通には存在しない手配のためのものです。

アプローチ

ステップ1:変革の担い手を見つけ、プロジェクトに参加する人々を教育する

  • 自然本能に反するリーン・シンキングの原則を人々に要求するには、変革を開始する理由として、危機感を抱かせるよう演出することが必要です。例えば、製品在庫を持つことは、論理的には供給を円滑にし、顧客サービスを提供する方法です。リーン・シンキングにおいては、在庫ゼロを進めなければなりませんが、人々はそれを新しいこととして受け入れなければなりません。
  • リーンという「やせ細る」原則は、管理されシステム化された方法で導入されなければなりません。リーン原則の導入を助言するならば、あまり大きな戦略に焦点を合わせるのではなく、小さなことに専念することです。

ステップ2:価値の流れをマップにする

  • 最初に重要な目に見える1つの活動を、価値の流れのマップにしてみてください。そうすると、変更すべきニーズが明確になります。変更して結果をチェックしてください。これが成功したならば初めてプログラム範囲を拡大します。

ステップ3:組織を変える

  • 組織を、価値の流れが支えられるように変更してください。部門によってではなく、製品群と価値の流れで組織が働くように変更します。組織的に大きな変化がある時に、リーンを促進する部門を作り、推進プログラムに焦点を当て、それを支援します。これは成長戦略の一部でありえます。
  • 人々は変化に影響を受けるので、推進プログラムの初期に余剰人員を取り扱うのは、成功の鍵です。推進プログラムを先送りしようとする人たちを取り除くことも、同じく重要なことです。
  • 改善が常に求められているので、そのアプローチはプロジェクトではなく、プログラムであると考えられます。助言は「何か解決したら、再びそれを解決しなさい」です。さらに、2歩進んで1歩さがることもいいですが、しかし「全く前進しないことはNOです」。