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新・世界標準ISOマネジメント(第9回)

平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第9回

1.3 ISOマネジメントシステム規格

  • 規格といえば、ネジの形状、フィルム感度のISO 100、ISO 400、クレジットカードの寸法などをすぐに想像するのが普通である。JIS Z 8301(規格票の様式)によれば、規格は対象に応じて用語、定義を規定した「用語規格」、試験方法を規定した「試験規格」、製品の寸法・性能を規定した「製品規格」と大まかに分類される。しかし、ISO 9000ISO 14000と言われるマネジメントシステム規格は、従来の規格の概念を大きく変えるものである。

1.3.1 規格の大革命

  • ISO中央事務局の故アイカー事務局長は、ISOマネジメントシステム規格を指して、従来の規格の機能を「物」から「組織」そのものに拡大する点で規格の大革命であると言っている。一定の水準の製品・サービスを作る能力があるかどうかを判定する品質保証に関するISO 9000シリーズ、環境に配慮したお墨付きを与えるISO 14000シリーズがその規格である。例えば、ISO 14001がいう組織とは「法人か否か、公的か私的かを問わず、独立の機能及び管理体制をもつ、企業、会社、事業所、官公庁若しくは協会又はその一部若しくは結合体」と定義され、組織であればすべてが規格の対象となる。
  • 日本の常識ではこういうものはノウハウであって、これが規格になるとは夢にも思わなかったというのが正直なところであろう。今から20年前の1979年、まずイギリスが品質管理に関してBS5750(品質システム)という国家規格を制定した。なんやかや言いながらイギリス人は立派でしたたかである。1996年9月、筆者がロンドン郊外の17階建の新ビルへ移転したばかりのBSI(英国規格協会)を訪問したおり、「我々は標準の世界でいつもCEO(センター・オブ・エクセレンス)でありたい」という案内のウイルスコック部長の言葉が印象的であったことを思い出す。規格の世界でも創造は不可欠である。

1.3.2 進行中の5つのISOマネジメント

  • 現在、ISOでは、品質、環境、安全、個人情報保護、企業の社会的責任に関して5つのマネジメント規格が発行または検討されている。各々の規格の詳細については後章で解説するが、ここではその概要を紹介する。
  • ISO 9000シリーズ (品質管理及び品質保証)は、1987年3月、品質保証の国際規格として発行され、その後、医療機器の品質保証の規格として、1996年12月、新たにISO 13485(品質システム:医療用具-ISO 9001を適用するための特別要求事項)およびISO 13488(品質システム:医療用具-ISO 9002を適用するための特別要求事項)が発行された。また、ISO 9000の利便性を考慮して、分野別のセクター規格が制定され始めている。自動車分野のTS 16949(自動車生産及び関連サービス部品組織のISO 9001)、電気通信分野のTL 9000(テレコミュニケーション9000)、航空機分野のAS 9000(航空宇宙-設計、開発、製造、据付け及び付帯サービスにおける品質保証モデル)、食品分野のISO 15169(食品・飲料産業への適用に関する指針)などが発行されている。
  • ISO 14000シリーズ(環境マネジメント)は、1996年9月、環境マネジメントシステム規格として5つの国際規格が発行された。
  • 安全衛生に関する規格は、1996年9月、ジュネーブで開催された国際ワークショップで国際規格化は見送られたが、1999年にBSIからOHSAS 18001(労働安全衛生マネジメントシステム-仕様)が各国の参加を得てフォーラム規格として発行された。また、ILOは、2001年4月、ISO規格化が見送られたことから独自に労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)を制定した。
  • 個人情報保護管理は、まだ新しい課題で、1997年5月、各TCの業務を管理しているISO/TMB(技術管理評議会)の下に諮問委員会が新設され検討が始まったところであり、その方向はまだ決まっていない。
  • 企業の社会的責任(CSR)は、まだ新しい課題で、2001年4月、ISO理事会で国際規格化が提案され、2003年にISO/TMB(技術管理評議会)の下に高等諮問委員会が新設され検討が始まったところで、その方向はまだ決まっていない。
  • 蛇足であるが、TC207、ISO 14000の番号の意味を時々聞かれるので紹介したい。ISOのTC(Technical Committee:専門委員会)は、できた順番に番号が振られる。例えば、TC1(ねじ)、TC2(締結用部品)、…TC10(製図)、…TC22(自動車)、…TC176(品質管理及び品質保証)、…TC207(環境マネジメント)と。もし、環境管理のTCが今年新設されるとTC2**となる。国際規格の番号も同じように付けられる。ISO 1(標準温度)、ISO 2(繊維-編機の方向指示)、ISO 3(標準数)、…ISO 1000(SI単位)、…ISO 9000(品質管理)・・・ISO 14000(環境マネジメント)となる。
  • ISOの規格番号は、横軸(X軸)を西暦年、縦軸(Y軸)をISOの規格番号とし、ISO生産関数なるものをX-Y座標にプロットすると、該当年の規格番号が導き出される。例えば、今年、品質管理の国際規格が登録されるとISO 9000でなくISO 16000くらいになる。