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リスクアセスメントに関する一考察(ISO マネジメントシステムの視点から)

背景:ISOのマネジメントシステム規格の意図する中で、リスクマネジメントという考え方が重要であることは言うまでもないが、昨今の ISO 審査、コンサルタント業務の中で、感じていることをまとめてみた。
特に、9001(品質),14001(環境),45001(労働安全衛生)の各マネジメントシステムのリスクマネジメントに関する共通性についても考察してみた。

<概要>

  • 1)9001(品質),14001(環境),45001(労働安全衛生)の各マネジメントシステムの共通性
    • ①各マネジメントシステムの 6.1 項(リスク及び機会の取り組み)が、リスクマネジメントの核なる部分であり、それぞれ、リスクマネジメントの運用計画が要求されている。
    • ②45001 のリスクアセスメント、14001 の環境影響評価がその代表である。9001 においては具体的なプロセスは明示されていないが、組織の事業改善につながるリスク及び機会を特定することになる。
  • 2)各マネジメントシステムのリスクアセスメント手法の考察
    • ① 45001(労働安全衛生):その危険源(ハザード)が受容できるか否かを評価し(ALARP : as low as reasonably practicable)、受容できなければ、リスク低減処置を講じて、安全を担保することにある。
      ※リスクアセスメントの手法として、厚労省HP等で諸処の事例が紹介されているが、 上記の基本的な考え方が読み取れないものもある。 ・・・・・・私が担当した 45001 審査において、リスクアセスメント結果、危険度レベルが高くても現場作業を続行していた事例(受容できるか否かの線引きが不明確)があり、観察事項とした旨を紹介した。
    • ※上記の考え方は下記の環境、品質のマネジメントにも通ずるものがある。
    • ② 14001(環境):環境影響評価によって著しい環境側面の決定
       ⇒“著しい” とするか否かは、受容できない(⇒放置できない、取組み活動とする)側面と考えられる。
    • ③ 9001(品質)の場合
    • 事業(業務)上の「リスク及び機会(取組む課題の決定)」
       ⇒“取組む” か否かは、受容できない(⇒業務上の重要な)課題である。
    • ※事例として、FMEA:故障モード影響解析(Failure Mode and Effects Analysis)を考察した。
       ⇒基本ステップとして、労働安全衛生リスクアセスメントの考え方そのものである。
      • a)既知及び予想される故障モードの潜在的影響を特定する。
      • b)重大性、確率、検出性の評価(現行の管理状態での RPN(Risk Priority Number)の算出)
      • c)上記 RPN により順位付け、残留リスク(受容可能なリスクレベル)の決定
      • d)リスク低減処置、責任者(担当)の決定
      • e)上記処置による重大性、確率、検出性の評価(処置後の RPN の算出)

<まとめ>

  • ①どのマネジメントシステムであれ、リスクアセスメントの考え方は「該当業務の(安全・環境・品質)が担保されていることを確認すること(受容できるか否かを評価する)であり、これによってPDCAを回していくことだと考える。
  • ②今回はリスクアセスメントの視点から各マネジメントシステムの共通性を考察したが、他の要素についても今後検討を深めたい。(例: 目標管理のあるべき姿。不適合是正処置の取り組み)
以上

(大塚 道也)